スキルアップ Vol.297

ノウハウ本の著者が教える、知識を成績に結びつけるための3つの秘訣

「思うように売上が伸びない」
「お客さまとの関係が上手く築けない」

営業マンならば誰もが直面する壁。そんな壁に突き当たった時に頼りにしたくなるのがビジネス本やセミナーである。そこには先人の知恵があり、成功者のセオリーや難局打開のノウハウが集約されている。しかし、そうしたテクニックを学んだからといって、悩みは必ずしも解決するわけではない。

「必勝ノウハウを聞いたのに成果が上がらないじゃないか。なぜなんだ?」そんなモヤモヤを抱え続けている営業マンのために、3人のWinnerが集結した。

自らビジネスにおいて勝利を収めてきたばかりでなく、数々の著書やセミナー登壇などを通じ、独自のノウハウを発信しているプロフェッショナルたち。そんな3人に、発信側だからこそ見えてくる「ノウハウを自分のものにする方法」を聞いた。

鮒谷周史氏、和田裕美さん、加藤昌治氏

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和田裕美事務所 代表取締役 和田 裕美(わだ・ひろみ) 京都府出身。営業コンサルタント。英会話学校の事務職を経て、外資系教育会社に入社し営業職に。日本でトップ、世界142カ国中2位の成績を収めた女性営業のカリスマ。短期間に昇進を重ね、女性初、最年少で2万人に1人しかたどりつけないといわれる支社長となる。その後独立し、営業・コミュニケーションなどの講演、研修を国内外で展開。著書に『世界No.2セールスウーマンの「売れる営業」に変わる本』(ダイヤモンド社)など

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加藤 昌治(かとう・まさはる) 大手広告会社店PR部門の部長として、新商品・新規事業起ち上げにおけるマーケティング、M&A・事業統合等におけるコーポレートPR戦略策定〜実行を担当。その一方で、『考具』(CCCメディアハウス刊)、『発想法の使い方』(日経文庫)、『企画のプロが教える「アイデア講義」の実況中継』(サンマーク出版刊)など多数の著書と、自らのオフィシャルサイト『考具web!』を通じて「考える」ことを具現化するための情報を発信

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セカンドステージ 代表取締役 鮒谷 周史(ふなたに・しゅうじ) 大阪府出身。リクルート、米国ワールドコム社を経て、2002年に起業。複数の企業を経営する一方で、約20社の投資先・顧問先等企業等へ経営支援、マーケティング支援も行っている。また、自ら企画・運営を行っているオンラインメディア『平成進化論』は、20万人以上の読者を保有するメールマガジンとともに、個人発行としては日本最大級のオンラインメディアとなり、多くのビジネスパーソンから支持を受けている

《ノウハウを活かす3つのポイント》
1.体で覚えて、腹落ちさせろ
2.自分の中に「売れるモデル」を作れ
3.自分に期待し、信じ抜け

POINT 1: 体で覚えて、腹落ちさせろ

――ノウハウを学ぶことで結果が出る人と、出ない人の差って何なのでしょうか?

和田 「実践しているか、していないか」でしょうね。というのも、セールスを成功させる上で重要なコミュニケーションスキルって、実はセンスだけでは決まらないんです。コミュニケーションが得意な人というのは、実はそれまでの人生で多くの人と接して、実践を繰り返している人。動いて経験しているからこそ、引き出しの数が多いんです。

コミュニケーションの引き出しが多いと、ノウハウ本の「行間」を、人から教わらなくても読むことができます。だからこそ、得た知識をすぐに理解して、さらに実践に移していける。

鮒谷 私も同意見ですね。実は、私は会社員時代、全く売れない営業マンでした。でも、本を読んだりして、自分なりに必死で勉強していたんですよ。

それでもうまくいかない日々が続いた時、気付いたんです。「勉強ばかりしているけど、お客さまのところに行っていない」と。要は実践してなかったんですよ。

和田 そこに気付いたのはすごく大きいと思います。

私、人には3つのパターンがあると思うんですよ。【1】何も努力していない人、【2】勉強している人、そして【3】実際に力が伸びた人、の3パターン。今回のテーマで悩んでいる人の多くは、【2】のパターンが多いんじゃないかと。「学ぶ」ことと「実践する」こととの間にはとても大きな差があるのに気付いていない。

加藤 実践して、まずは体に覚えさせるのが大事なんですよね。

鮒谷 まさにそう。これ、ある方からの受け売りなんですが、“Dカップ理論”というのがありまして。

和田 やだ、何それ?(笑)

鮒谷 いや、そうじゃなくて(笑)。「PDCAじゃダメ。DCAP(ディーカップ)くらいがちょうどいい」という話。まず実行(D)をして、そのチェック(C)から改善(A)していく過程で、しっかりしたプラン(P)というものに昇華していく。そういうサイクルのほうが、結果が付いてくるというわけです。

セカンドステージ 代表取締役 鮒谷 周史

和田 確かに、それは大事ですね! 特に、「Doしているのに成果が上がらない」というのであれば、その後のCAPに落とし込むべき。「自分流の歪んだ理解の元で実践していないか」、「自分の窓を通してしか物事を捉えていないのではないか」と、省みてほしいです。実践するときは、素直にやってみるというのが、大切ですから。

加藤 中には、PSPSの繰り返し、という人も多いですよね。プランを立てて、スタディして、またプラン立てて、お勉強してというように。どこにもDoがない人。

鮒谷 かつての自分がまさにそうでした。「学ぶ」だけでもエネルギーは使いますから、「俺、すごい頑張っているのに」と思ってしまうんです。

和田 「学んでいる自分」に満足して、それ以上実践しようとしないんですよね。知識だけ学んでも上手くならないって、スポーツに近い感じだと思いません?

加藤 その通りだと思います。ビジネスもスポーツと同様、実践の重要性、反復練習の大切さというのはあります。どんなに良いテクニックを頭で分かった気になっていても、スポーツは上手くなりませんからね。

鮒谷 お勉強ばかりしていないでプレーしろよ、という話ですね。

POINT 2: 自分の中に「売れるモデル」を作れ

加藤 昌治氏

加藤 これは私自身の経験なんですが、いわゆる「ロープレ」は、あなどってはいけないと思います。15年ほど前に参加したセミナーで、「実際にロールプレイをしてみましょう」となったんです。その場では「なんでこんなことをしなくてはいけないんだ」と思っていたのですが、繰り返しやっていくうちに、自分のものになっていく感覚があって。

――加藤さんが現在ワークショップのスタイルを重視しているのも、そういった体験があってのことなのでしょうか?

加藤 はい。「考える、はスポーツだ」が私の持論ですから。「考えて、アウトプットを生み出す」ことを体に染みこませるプロセスとして、ワークショップは有効だと信じています。

鮒谷 1カ月や2カ月やってみただけで「このノウハウは使えない」なんて言う人もいるかもしれないけれど、体で覚えるにはそんな短い時間軸じゃ実現しない。

加藤 ロープレで、ある種の「型」を体に覚え込ませることもあります。ノウハウというものを頭だけで捉えて分かったような気になったり、ばかにして実行しなかったら、何も身に付かないと思いますよ。

和田 「型」という捉え方はいいですね。私もいろいろなノウハウやセオリーを理解できた時は「分かった」というよりも「新しいソフトを自分にインストールできた」という感覚になります。

手に入れたノウハウがすぐに自分の体に馴染んで、脳の回路でつながるような人は、すぐにソフトウエアを使いこなして、成績につなげることができる。先ほどのコミュニケーションの話で言えば、経験豊富で引き出しの多い人がそういうタイプ。でも、苦手だと言う人だって、そのノウハウを信じて、反復練習していけば、時間はかかるかもしれないけれど、いつか体に染み付くんです。

――和田さんは世界展開している企業で活躍していましたが、同社にもそういった「型」があったのでしょうか?

和田裕美事務所 代表取締役 和田 裕美氏

和田 そうですね。私が在籍していた企業では、300年の歴史に裏打ちされたノウハウが細かに体系化されていて、それを世界142カ国の社員が共有して実践していたんです。それでも、売れる人もいるし、1件も売れずに辞める人もいました。

加藤 「このノウハウ通りにやれば誰でも売れる」なんてものはもちろんあり得ませんが、「同じ手法とプロセスなのに売れる人と売れない人がいる」ことの理由は気になりますね。

和田 ノウハウは知識でしかないんです。なので、スポーツで言うところの、「今、ここでバットを振る」みたいなセンスも問われるというか。

だから私がトークスクリプトを作成する時には、事細かに書き込んでいくことを意識しています。次のセリフを言う前に「間」を取るべき場面には「……」と書き込んで、「ここで少し間を取りましょう」みたいなところまで書くんです。

鮒谷 そこまでやる?(笑)

和田 そうなんです。コミュニケーションが元々得意な人ならば教えなくても分かるかもしれませんが、苦手な人であればそこまでパターン化する必要があります。

――ただ知識を身に付けるだけではなく、自分なりの「売れる型」をとことん体に覚えさせることが大事なんですね。

鮒谷 上司や先輩、セミナー講師など、自分の価値観にフィットするロールモデルと出会うことも近道のひとつだと思いますよ。身近なロールモデルを見つけることができたら、素直にその人の言うことを信じて実践していける。私の場合も、目指すべき人と出会ったことで大きく変わりました。

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