Vol.461

トップ営業マンから一転、負債16億円の企業代表に就任! 奇跡のV字回復を実現した熊谷聖司氏の読書論

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キャリアの壁を壊す3冊
トップ営業マンの本棚
ソクラテスは言った――「書物を読むということは、他人が辛苦してなしとげたことを、容易に自分に取り入れて自己改善をする最良の方法である」と。豊富な読書体験は、時として行く手に立ちはだかる数々の難局を乗り超えるためのヒントをくれる。そこで、この連載では営業マンとして輝かしい実績を作ってきたビジネスパーソンに、これまでのキャリア上で直面した壁と、それを乗り越える上でヒントになった本を紹介してもらう。きっとこの中の1冊が、今、目の前の壁にもがき苦しむあなたの突破力となるはずだ
デジタルデータソリューション株式会社 代表取締役社長 熊谷聖司(くまがい・まさし)氏

デジタルデータソリューション株式会社 代表取締役社長 熊谷聖司(くまがい・まさし)氏

1976年生まれ。専門学校卒業後、設計事務所勤務を経てIT通信系企業に転職。トップセールスとして活躍した後、2000年にデジタルデータソリューションの設立に参画し、03年に役員に就任。04年にデータ復旧事業の立ち上げを主導して、短期間のうちに国内トップシェアのビジネスへと発展させる。14年9月、同社の代表取締役社長に就任

企業の業務システムのサーバーをはじめ、PCやスマートフォンのデータ復旧サービスで国内トップシェアを獲得しているのが、デジタルデータソリューション株式会社だ。

10年後のビジョンとして「売上高1,000億円」「世界トップシェア」を掲げるなど、一見すると順風満帆かのように見える同社。しかしわずか3年前の2014年には、負債約16億円を抱えて民事再生法の適用を申請するほど、窮地に立たされた“崖っぷち企業”だったのだ。

最大の苦境に直面した時に代表取締役社長を任せれ、わずか1年でV字回復を実現したのが、熊谷聖司氏だ。「奇跡を実現する自信があった」と語る彼を支えたのは、トップ営業マンとして活躍した過去の経験と、営業時代から毎日の習慣にしているという、延べ1,300冊超のビジネス書からのインプットだ。

トップ営業マンから、どん底企業の経営者へ。そして今や、敏腕経営者としてキャリアを積む彼を支えた3冊を紹介しよう。

【1】『営業は感情移入 「トップセールス」1000人の結論』(プレジデント社) 横田雅俊 著

本書は、センスや感覚に近く属人的になりがちな「営業」を理論的に説明し、実例を元にどうすればその理論を実践できるのか、どういう風に考えて行動すればいいのか、という指針が説明されている。まさに「営業の聖書」のような本だ。

「今まで言語化されてこなかった、営業の極意が書かれていて、納得感がすごかった。今でも最強の教科書として、営業部門の部下全員に読ませています。営業マンの意識が大きく変わる1冊ですね」

そう振り返る熊谷氏だが、営業職に就くまでは「常にフラフラしていて、本当にダメな若者でした」と笑う。しかし彼のキャリアを紐解くと、全ての根底にあるのは「大きなことを成し遂げたい」という漠然とした想いだ。

「高校時代はとにかく野球に明け暮れていて、勝手にプロ野球の選手になると決めていました。しかしさすがにプロ野球選手はムリだと諦めた先に考えたのは、ダムや橋を作る仕事。なんだか大きな仕事っぽい感じがするでしょう。だから専門学校に進んで、最初の勤務先に設計事務所を選んだ。かといって、明確な目的や目標があったわけではありません。大きな仕事がしたいという漠然とした想いしか持っていなかったので、設計事務所もすぐ辞めてしまったんです」

設計事務所を辞めてからは、またも漠然とした理由で「大きいことがしたいなら、海外に行って見識を広げてみよう」と思い立つ。そこで思わぬ転機が訪れた。

「短期間で効率よく稼いで資金を貯めて、海外へ行きたいと考えていました。お金を得る手段として選んだのが、歩合制の営業職。話すことや人懐こさには何となく自信があったので、面白いほど上手くいったんです。そこで、次の仕事は営業だなと。IT通信系企業の営業に転職しました」

どんな仕事であっても「大きなことを成し遂げたい」と考える彼らしく、営業職としても爆速に成長していきたい。そんな当時の成長を支えたのが本書だ。

熊谷氏

「会社員になって常に心がけてきたのが、アウトプットを前提としたインプット。つまりあらゆるビジネス書を読み漁ることでした。行動量が多かったこともあり、営業として稼ぐノウハウは何となく体に身に付いていた気がしますが、それを論理的・体系的に裏づけてくれるものが欲しかった。そこで出会ったのが、この本です」

【2】『ザ・ゴール―企業の究極の目的とは何か』(ダイヤモンド社) エリヤフ・ゴールドラット著

IT通信系企業に就職した後、2000年に現職であるデジタルデータソリューションの設立に営業マンとして参画。それ以降、熊谷氏が常に心掛けてきたのが「次のキャリアステップへの備え」だ。

「ヒラの営業マンの、次のステップは営業部門の責任者。だから営業だけではなくマーケティングに関する本を読み、モノを売ることが組織にどんな意味があるのかといった内容もインプットするようにしていました。ありがたいことに、課長から事業部長、取締役、そして経営トップへと短期間のうちにステップアップすることができたのも、常に上流知識のインプットを欠かさなかったからだと思います」

熊谷氏が短期間で昇進するにあたり、最も役立った本が『ザ・ゴール―企業の究極の目的とは何か』(ダイヤモンド社)だ。

「この本では、組織の中には必ず『ボトルネック』となる部署があって、その原因を探って解決しない限りは、望んだような『スループット(一定時間に処理できる情報量)』は得られないということが解説されています。例えば、5つのラインを持つ工場が、1日10トンの商品をバケツリレー方式で作業を進める場合、その5つのラインがそれぞれ10トンずつ処理できれば10トンの出荷が可能です。しかし、その内1つでも3トンしか作業できないラインがあったら、出荷数は3トンに留まってしまいます。ボトルネックとなる3トンのラインを10トンに改善して効率的な出荷をめざすための方法論が書かれているのです」

この本から、それぞれに異なる目的と目標がある部門や部署にどんな役割を持たせれば組織全体で望む成果を上げられるか、と考えるきっかけを掴むことができた。マネジャーになって組織を、ひいては事業を伸ばしていきたいなら読むべき一冊だと、熊谷氏は太鼓判を押す。

【3】『ビジョナリー・カンパニー2―飛躍の法則』(日経BP社) ジム・コリンズ著

最後に紹介するのは、『ビジョナリー・カンパニー2―飛躍の法則』(日経BP社)。数多くの経営トップへのアンケートや調査から、アメリカの主要企業がなぜ長く成長と飛躍を続けていけるのかを分析しているシリーズ作だ。

「若手の営業マンだと、『会社にビジョンや理念になんていらないだろ』、『モノを売ればそれだけ業績も上がるはず』と思ってしまいがち。ところが事業部長や取締役になって、やがて経営トップを引き受けてとステップアップしていくと、やっぱり企業にとってビジョンは必要だし、明確な経営理念がなければ組織も動かないことが分かります。立場によって、どんどん視点が高くなっていくんですね。だから早い段階でこういう本を読んで、常に視点を高く持つ必要がある。

実際に私は、どん底の経営状態から弊社の代表取締役社長を引き受けたとき、必ず立て直せるという自信がありました。なぜなら、自分が準備してきた、本書を始めとしたインプットがあったからです。『よし、いよいよ身に付けてきたロジックやノウハウを活かすときがきた』というのが当時の実感でした。こうして準備をしておけば、チャンスが来たときに逃がすこともありません」

このエピソードだけでも、熊谷氏が常に上のステップを意識してキャリアを築いていたことが分かる。しかしなぜ彼は、こんなに高い視点を持ち続けていられるのだろうか。その理由を問うと、「私はとにかくビビりだからね」と笑う。

「私はこう見えて、とにかく慎重派なんです。今でも売上げが少しでも下がると営業の責任者を呼びだして、その都度、原因を聞いて改善する指示を出しますし……。トップセールスだったときも、完璧に準備をしていって現場では徹底的に先方の話を聞くというのが私の営業スタイルでした。現状だけを見ずに、知識の準備をしておくことは、ビジネスマンとして大事な要素だと思います」

「練習せずに勝ちたい」は図々しい。インプットを怠らないことがチャンスを掴む

最後に、彼の若手時代と同じく「キャリアアップして大きな仕事を成し遂げたい」と考える若手営業マンへのメッセージを貰った。

熊谷氏

「僕が体育会系の野球部出身だからというわけではないけど、今の若い人は仕事を“勝負”だと思っていない気がします。もっとうまくなりたいから、試合に勝ちたいから練習するわけで、練習もしないで勝ちたいというのは図々しい。その練習方法は、圧倒的な読書量でもいいし、人と会って話すことでもいいかも知れない。自分の力として身に付けておけば、必ずチャンスを掴んで、勝負に勝つことができるはずです」

若手へ向けて、あえて苦言を放つ熊谷氏。ベンチャー企業への参画をきっかけに、ピーク時には年間600冊ものビジネス書を読んで自らの血肉としてきた熊谷氏の言葉だからこそ、確かな説得力をもつ。「同じテーマを扱った本でも、著者によって切り口や結論が異なることを知るだけでも視野が広がり、柔軟性をもった思考力が磨かれる」と熊谷氏は強調する。
今回紹介した3冊が、あなたの向上心をぐっと引き上げてくれるかもしれない。

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取材・文/浦野孝嗣・大室倫子(編集部) 撮影/大室倫子

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