Vol.476

「全ての営業マンは、断る勇気を持ちなさい」サイボウズ青野氏が語る“日本を変える”営業職の働き方改革

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「働き方改革」は、いまや国を挙げて取り組むべき日本の最重要課題の一つとなった。多くの企業でも、残業削減や業務の効率化を推進する動きが目立っている。だがその動きから取り残されているのが、他でもない営業職だ。

「お客さまは神さまである」という顧客至上主義が根強い日本では、「クライアントから急な依頼を受けたら、残業や休日出勤をしてでも対応しなくてはいけない」と考える営業が多く、それが過剰なオーバーワークや非効率な働き方に繋がっている。

日本のIT企業でいち早く働き方改革に取り組んできたサイボウズ株式会社代表の青野慶久氏は「母数の多い営業職の働き方が変われば、日本社会全体が変わっていく。そして営業の働き方は、絶対に変えることができる」と語る。果たして本当に、日本の顧客至上主義を打ち破ることは可能なのか。その疑問をストレートにぶつけてみた。

 株式会社メドレー CLINICS事業部 セールスグループ マネジャー 藤田健太氏

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久氏

1971年生まれ。松下電工を経て、97年にサイボウズを設立。取締役副社長に就任。2005年より現職。社内のワークスタイル改革を推進し、離職率を6分の1に減らすとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得したことで話題に。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーを務めるなど、日本のビジネス界で「働き方改革」を推進する

“気合いと根性”で戦うのをやめても売上にはほとんど影響しない

「これまで日本の営業は、『足を使って稼げ』、『数字を取るまで帰ってくるな』といった“気合いと根性”で戦おうとしてきた。それを否定するつもりはありませんが、『お客さまのもとへできるだけたくさん通い、フェイス・トゥ・フェイスで話す時間を増やさなければ、売上は上がらない』というのは、単なる思い込みに過ぎないというのが僕の意見です」

こうはっきりと断言した青野氏。その理由としては、日本の社会全体や働く人たちの価値観そのものが変化しつつあることが挙げられる。

「今はどの企業も人手不足の時代。クライアントの担当者だって、大量の仕事を抱えて多忙なわけです。すると何度も通ってくる営業は、正直言ってウザい(笑)。それよりも、一度の商談で手短に要件を説明してくれたり、わざわざ会わなくてもITツールを活用して効率よくコミュニケーションできる営業の方が、お客さまも助かります。僕が講演などで営業職の働き方改革を提案すると、よく経営者や管理職層から『売上が下がるリスクが大きい』と言われるのですが、一度やってみたらいいんですよ。営業職が長時間労働をしなくても、意外と売上には影響しませんから」

サイボウズ青野氏

青野氏がそう言い切れるのは、既にサイボウズで営業の働き方改革を進めてきた経験があるからだ。時短勤務のワーキングマザーでありながら、フロントの営業としてバリバリ働いている女性社員が何人もいる。「100人100通りの働き方」というコンセプトの通り、同社では営業職も多様なワークスタイルを実現している。それでも、同社の売上は改革前と比べて下がってはいない。柔軟な働き方と高い成果、この2つの両立を可能にしたキーワードが「チーム営業」だ。

「多くの会社では、『一つのお客さまに、一人の営業をつける』という個人営業の体制をとっています。それに対し、『一つのお客さまに、一つの営業チームで対応する』というのがサイボウズのやり方です。すると、昼間は主に時短勤務のAさんがお客さまに対応し、夕方以降は独身のBさんがフォローする、といったことが可能になる。もしAさんが質の高い提案を得意とするベテランなら、Bさんがクイックレスポンスでサポートすることによって、質と速さの両方を兼ね備えたサービスを提供できます。これを一人の営業がやろうとすると、質か速さのどちらかが失われてしまうことが多い。だからお客さまにとっても、個人営業よりチーム営業の方が満足度は高いんですよ」

本気で個人戦を望んでいる営業マンはほとんどいない

また、チーム営業なら、「まずCさんが新規開拓のアプローチをし、Dさんが具体的な提案を進めて、Eさんがクロージングをする」といったプロセスごとの分業も可能になる。一人の営業だと、「自分は初対面の相手と距離を縮めるのは得意だが、商談で細かい数字を詰めるのは苦手」といった得手不得手があるが、「チーム営業なら多様な個性や強みを組み合わせて戦えるので、より短時間で効率的に売上を獲得できる」と青野氏は話す。

「ただし、この“チーム営業”を実践するには、情報共有が不可欠です。隣の人が何をやっているのか分からなければ、お互いに協力やサポートはできません。サイボウズでは、お客さまから来るメールも同じ営業チームのメンバー全員が見られるし、日報ならぬ『分報』といって、個人の仕事の状況を分単位で共有できるシステムもある。お互いの仕事の状況を見える化すれば、『Aさんは今少し手が空いているみたいだから、これを手伝ってもらおう』とか『Bさんが大変そうだから、今日の午後は自分がサポートに回ろう』といった補完関係が生まれやすくなります」

サイボウズ青野氏

このように、チーム営業は働き方の面で非常にメリットが多い。だが一方で、「個人の目標がないとやる気が出ない」、「個人の力を評価してほしい」という人もいるだろう。なおサイボウズでは、営業のインセンティブもチーム単位の業績に基づいて決まるので、もしかしたら「自分一人で営業すれば、もっと高いボーナスが貰えたはずだ」と不満を抱く人が出てくる可能性もあるのではないか。青野氏はその点を認めつつも、「これも実際にやってみて分かったことなんですが」と社員たちの反応を教えてくれた。

「実はチーム営業を導入した時、どうしても個人の業績で評価してほしい人がいたら、『会社をいったん退職して、個別に契約する』という働き方を選べるようにしたんです。でも今のところ、このオプションを選択した社員はいません。つまり、そこまで本気で個人戦を望んでいる人はいないのだと分かった。それと、チーム戦を経験することで、個人の数字を評価されるのとはまた違う幸せがあることに気付いた社員も多いようです。メンバーと助け合うことで、誰かに貢献したり感謝される喜びや、困っている時に誰かに助けてもらえる嬉しさを感じる機会が増えるんですね。人間は基本的に群れる生き物なので、チームワークで得られる幸せは想像した以上に大きいのだと思います」

無茶振り企業には、別れを告げていい

とはいえ、読者の中には「うちの会社は考え方が古いから、上にチーム営業を提案しても、すぐには受け入れてもらえそうにない」という人も多いだろう。まだ組織を変えるほどの権限を持たない若手の営業が、自分たちの働く環境を変えるためにできることはあるだろうか。

「『断る勇気』を持つことですね。夜19時にお客さまから『今日中にお願いします』と仕事を頼まれた時、『はい』と言って引き受けてしまったら、相手は『この会社はこの時間に頼んでも頑張ってやってくれるんだ』と思い、夜19時の発注が当たり前になってしまう。でも勇気を持って『できません』と断れば、相手も反省して『さすがに19時じゃ無理か。じゃあ、次は遅くとも夕方16時までには連絡しよう』などと考えてくれます。実際のところ、僕が知る限り、仕事を断って顧客から怒られたという話はほとんど聞きません。むしろ、お客さまから喜ばれたという話ばかりです。いつも上司から仕事を急かされていたクライアントの担当者が、『あの会社は今後夜19時以降の発注は受け付けないそうです』と伝えたら、上司も『それなら仕方ないな』とあっさり納得したので、担当者も早く帰れるようになって感謝されたとか。つまり断る勇気を持つことは、お客さまにとっても決して悪いことではない。だから誰かが断る勇気を持ち、負の連鎖を断ち切ることが重要なのです」

サイボウズ青野氏

たとえ「仕事を断るなら、君の会社は使わない」と言われたとしても、「むしろラッキーだと受け止めればいい」と青野氏。

「残業を強要するクレーマーな顧客を手放せば、定時までの仕事で満足してくれる別の顧客を開拓する余裕が生まれる。限られた時間でより効率的に成果を出せるお客さまに力を注いだ方が、生産性は間違いなく上がります。どの会社でも営業職は数が多いから、一人一人が自分の働き方を変えれば、必ず会社や上司も変わっていく。営業職が“気合いと根性”から抜け出し、“効率重視”へシフトすれば、日本のビジネス全体の生産性も確実に上がっていくはずです」

確かに若い世代は権限を持たないが、新しいやり方や考え方を取り入れることに抵抗は少ないはずだ。それを武器として、まずは自分が新しい営業スタイルにチャレンジしてみること。一人でも多くの営業が「お客さまは神さま」、「営業は足で稼ぐ」といった古い価値観を捨て去り、今の時代に合ったワークスタイルを工夫していくことが、営業の働き方改革を成功させる大きなカギとなるだろう。

取材・文/塚田有香 撮影/赤松洋太

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