Vol.187

人事ジャーナリストが解説! 会社目線で見た「営業マンの年収」とは【営業の年収大解剖】

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営業マンの仕事と報酬を考える
営業の年収大解剖
「年収とやりがい、どっちを取る?」「自分の年収は世間的には高い? 低い?」「営業を続けたら年収はどこまで上がる?」―― 営業マンなら誰もが気になる「年収」について、営業typeが徹底解剖!営業職としてのキャリアを考えるのに必要なのは「年収額の大小」だけではないはず。あなたにとっての「仕事と報酬」とは何か、この機会に探ってみてはいかが?

数字さえ良ければ年収が上がる時代は終わった

営業職なら、仕事を頑張るモチベーションは何かと問われて「年収が上がること!」と迷わず答える人は多いだろう。だが、そもそも営業職の年収はどのように決まるのだろうか。企業の人事・労務に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏によれば、営業職の給与体系や評価の仕組みはここ10年ほどで大きく変化したという。

溝上憲文氏
溝上憲文氏
月刊誌、週刊誌の記者などを経て、独立。新聞・雑誌などで、経営や人事、賃金、年金問題などのテーマを中心に執筆。著書に『人事部はここを見ている!』(プレジデント社)など

「かつての日本企業は年功序列の賃金体系を採用していたので、たとえ営業職であっても、同じ年代の社員同士で年収に大きな差が出ることはありませんでした。しかし2000年前後に日本でも成果主義が導入され、営業成績が良ければ基本給(月給)も上がり、それに加えて成果に応じた賞与やインセンティブをもらえる仕組みに変わったため、同じ営業職でも年収に何倍もの差がつくようになったのです。

ところが、これが大失敗だった。“営業の成果=目標達成度”で評価されるため、給料を上げたいがために低い目標数字を設定し、達成度を高く見せかけるといったことが多くの会社で横行したのです。これでは評価の公平性が保てないし、会社全体の業績アップにもつながらない。そこで最近では、成果主義をやめて、仕事のやり方やプロセスも評価した上で年収を決める企業が増えています」

給与や評価の仕組みを見直す企業が増えた背景には、ものが売れない時代になったこともある。特にリーマンショック以降は、法人であれ個人であれ、「自社の業績や我が家の家計が苦しくて、ものを買うどころではない」という顧客が増えた。

こうなると、いくら営業マンが足しげく客先に通ったり、接待をしたところで数字には結びつかない。そこで企業の営業部門は、個々の営業マンの力量に任せるのではなく、「顧客が抱える課題を解決するためのソリューションをチームで提案し、商品やサービスの導入につなげる」という営業手法をとるようになった。営業職の中でも、「ソリューション営業」や「コンサルティング営業」と呼ばれるスタイルが増えたのはそのためだ。チーム全体で成果を出すことが求められるようになれば、個人の売上げだけで年収が決まる給与体系は成り立たなくなる。

「そこで近年増えているのが、“職能・役割給”という仕組みです。これは“課長職”“係長職”などの職位によって基本給を決めるというもので、職位が上がれば基本給もアップする。そしてチームが高い成果を出した場合は、各メンバーの賞与を増やすという形で賃金に反映します」

長時間労働する営業マンは年収が下がる!?

つまり現在は、営業職であっても「自分の数字さえ良ければ高い年収をもらえる」という時代ではないということ。課長や係長、主任などのポストに見合った役割を果たし、チーム全体の業績に貢献できるかどうかが年収を決めるのだ。では、企業側は昇進・昇格を決めるにあたり、どんな人材を高く評価するのか。それはズバリ、「優秀なマネジメント人材」だと溝上氏は断言する。

「以前は企業の人事も、プレイヤーとして高い数字を達成した人をそのままマネジャーに昇格させていました。ところが、このタイプにマネジメントを任せても、チーム全体の業績は上がらないことが分かってきた。現在では、『自分の数字だけを追いかける一匹狼タイプの営業は必要ない』というのが人事部の本音です。

今の時代のマネジャーに求められるのは、自分が現場で学んできた営業のノウハウを部下たちに教え、優秀な営業マンを育成し、その人たちを一つにまとめあげてチームとして高い成果を出すこと。そして個々の営業マンが集めてきた現場の情報や顧客の課題を分析し、どの顧客を誰がどのように攻めるかという戦略を立て、それをどの営業マンでも実践できるよう仕事のやり方を仕組み化すること。それができるだけの能力やスキルを備えた人を管理職に昇格させたいと人事部は考えています」

よって、これからの時代に営業職として年収を上げたいなら、マネジメントのノウハウやスキルを身につけるための勉強や努力をする必要があるということ。さらには、働き方そのものを見直す必要も出てきている。とくに長時間労働が当たり前になっている営業マンは、大きく年収がダウンする可能性があるので要注意だ。

「成果主義が導入され始めた2000年以降、会社側が“人件費=コスト”と捉える傾向が強くなり、無駄なコストができるだけ削りたいと考えるようになりました。そこで目をつけたのが、人件費の中でもかなりの部分を占める“残業代”です。労働基準法では、1日8時間の法定労働時間を超えた場合に25%の割増賃金を支払うこと、夜10時以降も働いた場合は50%の割増賃金を払うことが定められていて、これは営業職にも適用されます。

しかし、会社にとって残業代はまさに無駄なコスト。よって、同じ仕事量を夕方5時までに終わらせた人と、夜10時までかかった人がいたら、後者は『仕事のやり方が悪い』という評価を下され、間違いなく人事考課が低くなります。現在マネジャーの人も、部下の残業時間が多い場合は『マネジメント能力に欠ける』と評価され、降格される可能性も出てくる。そうなれば当然、年収は下がるでしょう」

しかも今の国会で労働基準法の改正案が審議される予定になっており、「裁量労働制」が法人営業職にも適用される可能性が出てきた。この制度は、例えば労使で話し合って「1日の労働時間は9時間」と設定すれば、法定労働時間である8時間を超えた1時間分の手当はつくが、9時間を超えて働いた分の残業代は出ない仕組みになっている。この改正案が成立し、多くの企業に導入されれば、手取りの年収が大きく減ってしまう営業マンはかなりの数に上ると予想される。

今回のアンケートで「年収が高ければ、どれだけ労働時間が長くても受け入れられる」と答えた人は20%に上ったが、今後は「どれだけ労働時間が長くても、年収は高くならない」という時代が来ることを知っておくべきだろう。

今の時代に合った営業手法や営業スタイルを生み出すことが価値

このように、今はまさに営業職の給与体系や評価の仕組みが大きく変わろうとする転換期にある。だが溝上氏は、「この変化は営業マンにとって決して逆境ではない。20代や30代の若手にとっては、むしろ年収を上げるチャンスと考えるべきだ」と話す。

「先ほども言ったように、今はバブル期のようにものを作れば売れる時代ではない。40代以上の先輩営業マンたちがやってきたことをまねても、成果は出せないのです。だからこそ、若い人ならではの新しい視点で今の時代に合った営業手法や営業スタイルを生み出せば、会社に変革をもたらすイノベーターになれる可能性がある。

その手法やスタイルが評価されれば、若くして昇進・昇格を果たすこともできるし、高い報酬も期待できるでしょう。さらには、その先に転職や起業といった選択肢も見えてくる。自分が生み出した営業手法がどんな業界や会社でも通用するものであれば、より年収の高い企業に移ることもできるし、その営業ノウハウを提供するコンサルティング会社やマーケティング会社を立ち上げれば、経営者として多額の報酬を手にすることも夢ではなくなります」

こうしてみると、年収について考えることは、自分の仕事のやり方や将来のキャリアについて考えることと表裏一体であることが分かる。営業マンの年収を決める条件が大きく変わりつつある今だからこそ、ぜひ「自分にとって年収とは何なのか」を改めて問いかけてみてほしい。

取材・文/塚田有香 撮影/赤松洋太

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