Vol.235

年商10億、新潟の夜の街を変えた女性社長は、なぜ「地方は売れない」の常識を覆せたのか

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新潟市の繁華街、古町。2005年のある日から、路地に並ぶクラブやキャバクラに足しげく通う若い女性がいると噂が広まった。キャバ嬢のようなドレスをまとってはいるものの、両手には大きなカバン。中にぎっしりと詰まった華やかなドレスを、飛び込みで売り歩いていたのだ。

その女性は、当時23歳、わずか8坪のドレスショップをオープンしたばかりの清水彩子さん。彼女はその後10年を経ずして、年商10億円を超える敏腕経営者となる。

それまで営業経験はおろか就職経験もなかったという彼女はなぜ、新潟という地方の一都市を起点に成功をおさめることができたのか。

売れないことを自分の置かれた環境のせいにし、逃げ道をつくることは営業マンなら一度は経験があるだろう。しかし、それで良いのだろうか。地域性、知識量、技術、全ての不利を乗り越えるエネルギーとなった、彼女なりの商売の鉄則について聞いた。

株式会社sugar 代表取締役  清水彩子/しみず・あやこ

株式会社sugar 代表取締役
清水彩子/しみず・あやこ

1982年生まれ。高校卒業後、就職せずに、家族で開業したコンビニエンスストアを手伝う。衣服のオークション出品を経て、2005年6月に新潟市でドレスショップを出店し個人事業主に。07年にネットショップを開設。09年2月に社名を『sugar』として法人化。現在、『sugar』をはじめとした4ブランドのネットショップと、新潟市内に2つの実店舗を運営し、年商10億円超のビジネスを牽引中

新潟で起業した理由は「そこに商機があったから」

清水さんのキャリアは高校卒業と同時、家業の手伝いから始まる。

それまで勤めていた会社を定年退職した父が、第二の人生のフィールドとして開店したのがコンビニだった。高校卒業後、特にやりたいこともなく、就職していなかった清水さんに両親は家業の手伝いを勧めた。しかし、当時彼女は19歳。遊ぶお金が欲しくても、家族経営のため、両親から高額な時給をもらうには気が引ける。そんな時、自分の小遣い稼ぎのために始めたのがネットオークションだった。

株式会社sugar 清水彩子さん

「私が着古した買値8,000円のTシャツが2万5,000円で落札されたんです。中古でこれなら新品はもっと高く売れるはずだと思いました。当時の貯金の全てを使って、ショップに同じTシャツを買いに行ったのが、今の事業のきっかけでしたね」

その後、商材としてドレスを扱うようになった清水さん。それまでのアパレル販売と同じようにショップで買って、ネットで売る、というビジネスを続けていた彼女だったが、ふとあることに気付く。

「その頃、問屋から仕入れればもっと利益率が高くなると気付いたんです。当時はそのことすら知らなかったんですよね(笑)。それで、問屋さんに直接仕入れたいとお願いしに行ったんですけど、店舗を持たないと卸せないと言われたんです」

店舗探しを始めた清水さんが、結果的に店をオープンさせたのは小学校から高校までを過ごした新潟市。しかし、当時の彼女の住まいは埼玉県だった。長い期間を過ごした土地とはいえ、人口の多さからも、東京に近いことによる地理的な条件からも埼玉の方が有利に見える。なぜ彼女は新潟という土地を選んだのか。

清水さんにその疑問の答えを求めると、「直感です」という回答が返ってきた。

「私自身、新潟に帰るつもりなかったんですよ。寒いし、雪は降るし、埼玉に比べたら何にもないし。でも、たまたまゴールデンウィークに友達に会うため新潟へ戻った時、繁華街で働く女性たちが目に止まったんです」

彼女たちが着ていたのは、ピンクやエメラルドグリーンの派手な色のスーツ。肩パットを入れ、前髪を内巻きにしたその姿は、1990年代から時計の針が止まっているようだった。ここなら都会ではあたりまえの、きらびやかで派手なドレスが売れるに違いない、彼女はそう確信した。

思い立った彼女はゴールデンウィーク中に契約書を書き、翌月にはその繁華街に8坪のドレスショップを構えるオーナーとなっていた。

行動すれば必ず突破口は開く

しかし、店舗を持ったからといってすぐに軌道に乗るわけでもない。

株式会社sugar 清水彩子さん

「出店してから2年近くは月に200万円くらいの売上げが続きました。仕入額を考えるとあんまり儲かってなかったんです。店で待っていてもお客さんは来ないんだと思って、外に売り込みに行こうと思いました」

清水さんが始めたのは、自分自身が商材であるドレスを着ての飛び込み営業。自らがドレスを着ることで、ドレスの魅力を分かってもらえる、彼女はそう考えた。

夜の街を一軒一軒訪ね歩く日々。最初はまったく売れず、門前払いが続く。生来前向きな清水さんもさすがにめげそうになったというが、そこで諦めなかったのは、行動することが必ず突破口を開くと信じていたからだ。

「新潟の人の性質として、外から来た人にすぐには心を開かない性質があるんです。でも逆に、一旦心を開いてくれるととてもよくしてくれるんです。きっかけはあるお店の店長さんでした。彼は東京の夜の街を知っていて、スーツ姿のキャバ嬢を『ダサい』と感じていたみたいです。その店長さんが知り合いのお店に紹介してくれてからは、一気に販路が広がりました」

店を訪れる人が増えたおかげで、顧客からの「こんなドレスが着たい」という要望も増えた。そこで清水さんはメーカーにオリジナルドレスの相談をする。しかし、小ロットのため、聞き入れてもらえなかった。

「ドレスのタグを見たら、みんな『Made in China』って書いてあるんです。だから、自分で中国に工場を開拓しに行くことにしました」

言葉も分からない。当てがあるわけでもない。それでも彼女は単身中国へ乗り込んだ。結果として、彼女はこの旅で、自社製品の製造ラインを確保することになる。しかし、この旅では自身の身の危険を感じることもあったという。

一見無謀にも思える危なげな行動力。しかし、これこそが彼女の強みでもある。

言い訳してるだけじゃ何も変わらない

彼女に自らの強みを問うと、「考えすぎないことと、運が良いことかな」と笑って話す。

「考えれば考えるほど、難しいこととか無理そうなことばかりが思い浮かんできて、結局は挑戦することをやめてしまうような気がします。同じうまくいかないのなら行動して失敗したほうが、何もしないより学ぶことはたくさんあると思うんですよね」

中国の工場集積エリアへ出かけていって引き受けてくれるところを探す。ネットショップを開設するため、タイピングすらできないのに独学でECサイトを立ち上げる。あれこれ考え、準備に時間をかけるくらいならまず動く。清水さんならではの行動哲学だ。

2009年、彼女が個人として行っていた事業は収益額があまりに大きくなり、税務署から法人化を勧められることになる。その際の彼女の反応にも、「まず動く」という行動哲学が顕著に表れている。

「年商が3億円を越えた頃に税務署の方が来られて、『法人にした方がいいですよ』って。法人税も2年間免除になるっておっしゃったので、『あ、お得かもしれない』って」

株式会社sugar 代表取締役  清水彩子/しみず・あやこ

2015年、新潟の古町で肩パット入りのスーツを着るキャバ嬢を見ることは、ほとんどない。一見すると逆境かと思われたフィールドで、清水さんは「新しい文化」を創った。

「自分の商品が売れないと、環境のせいにしたり、商材のせいにしたりと、言い訳を言う人がいるかもしれません。でも、そんなことに時間を使うなら、売るための“次”の行動をしたらいいと思います。デザインが悪いのか、値段が高いのか、買いにくいのか。自分が思う『売れない原因』を解決するために、デザインを変えるために企画部署と交渉をする、開発部署と一緒にコストを見直してみる、ユーザーが買いやすいようにマーケ部門に助言してみるなど、営業マンという枠を超えて行動すべきだと思うんです。こういう風に前向きに行動していれば、きっと運も向いてくるはずです」

取材・文/浦野孝嗣 撮影/竹井俊晴

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