Vol.236

ソフトバンク接客コンテストで日本一を獲った男が語る、正義の営業論。「顧客満足が提供できないビジネスはありえない」

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2012年、東京・築地にある浜離宮朝日ホール。そのステージの上で、スポットライトを浴びる若い男性がいた。彼が持つ優勝カップには、ソフトバンクの役員をはじめ会場に集まった約500人の視線が注がれている。

彼の名前は武田佳祐。当時21歳、ヤマダ電機日本総本店で働くソフトバンクの派遣社員だった。彼は全国3800人が参加する接客コンテストの優勝を機に正社員になり、その後2年で6店舗を統括するスーパーバイザーに上り詰めた。

現在は、店舗の開業・改装を考えている人と店舗デザイン・施工会社をつなぐシェルフィー株式会社で営業統括を務めている武田氏。一見すると、全く違う仕事をやっているように見える。しかし、武田氏のインタビューを通して、彼を日本一に導いたある種の「正義感」のようなものが、彼の営業マン人生の根底にあることが垣間見えた。

シェルフィー株式会社 ビルダーリレ-ション部 セールス統括 武田佳祐氏

シェルフィー株式会社 ビルダーリレ-ション部 セールス統括 武田佳祐氏

買ってもらうのではなく、満足してもらう

「人に喜んでもらうことが好きだったんです」

1990年生まれ、今年で25歳になった武田氏はそう語る。高校卒業後、フレンチレストランでサービスマンとして働き、その後ソフトバンクに派遣社員として入社。当時ソフトバンクだけで販売されていたiPhoneの販売員として派遣されたのは、池袋にあるヤマダ電機の日本総本店だった。

「家電量販店勤務を志望したのは、いろんな客層と触れ合えるからです」

派遣先にソフトバンクを選んだのにも理由がある。当時のソフトバンクはCS(カスタマーサティスファクション)を重要視していたからだ。

しかし、実際に入社し、店頭で接客を始めた武田氏は理想と現実の差にショックを受ける。

シェルフィー株式会社 ビルダーリレ-ション部 セールス統括 武田佳祐氏

「CS重視と言いつつも、周囲の同僚たちは『とにかく売上を上げよう』と必死になっていたんです。1人1人の来店客に全力を尽くすその接客に尊敬する一方で、どこか違和感を覚えました」

当時の同店舗は、買い物客がひっきりなしに訪れていた。断られる度に気持ちを擦り減らすような接客をしていたら精神衛生的に良くない上、しつこい接客は受ける側にとっても迷惑だ。疲弊していく割に成績が伸びない同僚を見て、彼はそう考えた。

「その頃、ソフトバンクは回線数ナンバーワンを目指し、携帯の端末代金が減額できない代わりに副商材をセットに提案していました。でも、副商材であるデジタルフォトフレームの入った大きな紙袋を、重そうに提げてお帰りになるお客さまの後姿が、顧客満足とはかけ離れた物に見えたんです」

きちんと説明をしていたとしても、そのように契約した顧客に限って「子どもが安さに釣られて買わされた」と言って親が解約に来たり、2年後のMNPのタイミングでの解約が後を経たなかったという。

たとえセットで販売した商品でも、納得の上で顧客に満足してもらい、クレームが減れば、その分接客に費やす時間が増える。また、クレームを受けないことでスタッフの雰囲気も良くなる。いつか自分がマネジャーになった時のためにも、顧客満足度の高い接客を心掛けようと決意した。

「私が心掛けていたのは、あえて積極的に売る努力をしないこと。まずは『今日は何を買いに来られたんですか?』など、世間話から始めるようにしました。そこで、購買の意欲がなければ、いったん商品をお勧めするのは止めます。また、仕事帰りに立ち寄った人は週末に家族連れで再来店し、家族全員で乗り換えてくださるかもしれないので、メリットを説明するだけにとどめて無理なクロージングはしませんでした」

武田氏の考えは当たり、成績はぐんぐんと上昇。ソフトバンクの接客コンテストの出場条件である、販売台数と顧客満足度の基準をクリアし、優勝を収めたのだ。

営業によって顧客が損をするのはおかしい

その後、23歳で6店舗を統括するスーパーバイザーに就いた武田氏。しかし、個人向け営業を極めたいという思いと、人生で一番大きい買い物を手伝いたいという思いから、野村不動産のマンション販売の営業職に転職する。

野村不動産という会社を選んだ理由はそれだけではなかった。

「野村不動産は、『30年後のリピーターを狙う』と社内で掲げるくらい、顧客満足度で業界1位を目指していたからです。お客さまに長くお客さまでいてもらうためには、顧客満足度が重要です。顧客満足度が高ければ、何十年経ってもリピート受注は入る。そのビジョンに共感したんです」

しかし、24歳で彼はまた転職することになる。彼が転職先に選んだのはベンチャー企業のシェルフィー。同じ建築業界に関わる仕事とはいえ、なぜ大手からベンチャーへの転職を踏み切ったのか。

シェルフィー株式会社 ビルダーリレ-ション部 セールス統括 武田佳祐氏

「ソフトバンクの時、私と同じ職位であるスーパーバイザーは全員年上でした。学ぶことも多い一方で、同年代の活躍や自分よりも若くて刺激を与えてくれる人が周囲にいなくなった時、自分はより成長できるのかという不安に駆られました。実はその頃からベンチャー企業への転職を考えていたんです」

自分の同年代や、自分より若く志の高い人の多いベンチャーで、会社や組織を拡大する側をやりたいという思い。それがベンチャー企業への目を向けさせた。また、この転職の際も、武田氏の信念が顔を覗かせた。

「不動産業に接すれば接するほど、不動産業界の『闇』の部分が見えるようになってきたということもありました。一般的に、中古マンションが売れるためには、まず売主と買主の間にそれぞれ仲介業者が存在します。本来であれば、売主側の仲介業者が売主から手数料をもらい、買主側の仲介業者に連絡し、買主が契約したタイミングで、買主側の仲介業者に手数料が支払われます。しかし、中には売主側の仲介業者が、売主と買主双方の手数料の独り占めを狙い、買主側の仲介業者から問い合わせが来ても『もう売れた』と嘘の報告をし、自力で買い手を探すケースもあるんです」

「お客さまが損をするのはおかしい。ITならこの業界を変えられるかもしれない」。他業界に比べ、IT化が進んでいない建築業界だからこそできることがあると武田氏は考えた。

営業は満点じゃなくていい。相手の立場に立てるかどうか

しかし、IT化の遅れゆえの困難もある。シェルフィーが行っているのは、飲食店や美容院など、店舗の内装工事の案件と工事を受ける施工管理会社のマッチング。営業先は40代後半~50代が中心でITリテラシーが高くない上、今までの同業者が誠意のない営業をしてきたこともあり、ITにアレルギーを持っている人も少なくないという。

「今までも類似のサービスはありましたが、それはWeb完結の成果報酬型でした。初期コストはかかりませんが、良い案件とのマッチングは100件に1件。しかも、発注側の質が低く、見当違いな金額での施工を要求してくる人ばかりだったそうです。アフターケアもなく、受注者の顔も見えない。施工管理会社の人たちは、Webサービスの営業マンに不信感を持つようになっていました」

そんな負のイメージもあり、営業先の中には、椅子にふんぞり返るように座り、「声が小さい!」と武田氏を威嚇するような態度を取るところもあったという。しかし、現在ではその施工管理会社もシェルフィーのユーザーだ。

「この建築業界は、紹介で狭い世界で仕事を回してきたこともあり、閉鎖的なんです。だから、施工会社が直接大手企業に売り込んでも取り合ってもらえません。第三者であるシェルフィーが信頼を勝ち取って、質の高い案件を提供することがお客さまの満足につながるのだと思います。どんな仕事でも、意識していたのはお客さま目線であること。お客さまの立場に立って接客や営業ができれば少し納得度に欠けたとしても、残りを信頼が補って契約してもらうことができる。たとえ100点満点じゃなくても、『この人のために自分は何をしてあげられるのか』を考えているかどうかが重要なんだと思うんです」

取材・文/佐藤健太(編集部) 撮影/柴田ひろあき

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