Vol.110

『ナポレオンの村』のモデルになった公務員が語る「若手営業マンが英雄になるヒント」

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営業マンなら誰しも一度は「誰もやったことのない大きな案件を成功させてヒーローになりたい」と考えたことがあるだろう。

しかし、実際にそれができる人は少ない。なぜなら自分のことを「普通の一営業マン」だと高をくくっているからだ。

7月からTBS系で放送されるドラマ『ナポレオンの村』は、唐沢寿明演じる浅井栄治という一人の公務員が限界集落を立て直すというサクセスストーリーだ。

主人公・浅井栄治のモデルとなっているのは、石川県羽咋市役所職員の高野誠鮮氏。高野氏は地域で生産した米をローマ法王に献上するという超大型プロジェクトを実現した。なぜ地方の一公務員である彼がそのような大きな仕事を成し遂げられたのだろうか。

その秘密を探るべく高野氏に話を聞くと、普通の営業マンが“ヒーロー” になれるヒントが見えた。

羽咋市教育委員会 文化財室長  高野誠鮮(たかの・じょうせん)氏

羽咋市教育委員会 文化財室長
高野誠鮮(たかの・じょうせん)氏

1955年石川県羽咋市生まれ。高校卒業後上京し、放送作家として『11PM』などの番組に携わる。84年に羽咋市役所の臨時職員になり、宇宙科学博物館『コスモアイル羽咋』を造り話題に。その後、羽咋市神子原地区の米をローマ法王に献上するなどの戦略で、限界集落だった同地区を4年間で蘇らせる。日蓮宗本證山妙法寺の第41世住職でもある。著書に『ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?』(講談社)

セカンドプランだったローマ法王へのアプローチ

「2005年、当時農林課に所属していた私が市長に任されたのは、限界集落だった神子原地区の建て直しでした。その一環として、1年以内に農産物をブランド化するという役割を与えられました」

高野氏は、当時料理関係者の間で高い評価を受けていた同地区の米、『神子原米』に目を付けた。

「農作物をブランド化するにはどうしたらいいのか。真っ先に思いついたのは天皇陛下に神子原米を献上し、“皇室御用達”にすることでした。すぐに宮内庁の石川県出身の方にアプローチしましたが、結局天皇陛下に召し上がっていただくことはかないませんでした」

しかし高野氏は諦めない。次に考え出したのはローマ法王の口に米を届けること。ローマ法王を選んだのは、「神子原」という地名から“神の子”と呼ばれているキリストを連想したから。キリスト教で最大の影響力を持つローマ法王に米を食べてもらえたらその効果は大きいと考えた高野氏は、さっそくローマ法王庁に神子原米の献上を申し入れた。

「とりあえずローマ法王庁宛に手紙を書きました。しかし、1カ月経っても、2カ月経っても返事は来ませんでした。ローマ法王を諦めて、ブッシュ大統領に米を食べてもらおうとアメリカ大使館と交渉を始めた頃、千代田区のローマ法王庁大使館に招かれたんです」

彼が持参した神子原米は正式にローマ法王の献上物となり、“ローマ法王庁御用達”というブランド価値を得た神子原米はその後飛ぶように売れたという。

挑戦しない人間に反対する権利はない

高野氏が他の公務員と大きく違うところが2つある。まず「周囲の反対を真に受けない」ことと「とにかく行動する」ことだ。

■周囲の反対を真に受けない

実は宮内庁へのアプローチも、ローマ法王庁への手紙も、高野氏は上司への事前の相談をせず、事後の報告で初めて共有していた。大規模案件であればあるほど相談が求められるのは当然のことだが、高野氏は事後報告の理由を次のように語る。

「当時の上司に言ったところで『そんなの失敗するに決まっている』と猛反対されるのが分かっていましたから。でも、私、上司が反対する意味が分からないんですよね。だってその上司はローマ法王庁に米の献上を打診したことがない。同じことをやって失敗した経験がある人がそう言うのならまだしも、挑戦すらしていない人に何が分かるのかと。その人は『やらなくても分かる』と言っていたので、『○○さんって預言者なんですか?』と真顔で聞いたらすごく怒られました(笑)」

■とにかく行動する

他人にどんなに「無理に決まっている」と言われるような案件でも、高野氏は行動を起こさずに諦めることは絶対にない。

「大事なのはとにかく行動すること。これまで私は神子原米のブランド化に際し、天皇陛下に食べていただこうとしたり、『LOUIS VUITTON』と一緒に米袋を作ろうとしました。しかし、それらはうまくいかなかった。何でもかんでも最初からうまくいくことはありえないんです。ローマ法王に断られて、ブッシュ大統領もダメだったら、次は矢沢永吉さんにアプローチしようとも考えていました。彼に『矢沢、米好きです』と一言言ってもらえばきっとブランドになる。何をするにも、私はいつも3案くらいは考えて、ひとつがダメでも、次の行動にすぐ移れるようにしています」

可能性の無視は最大の悪策

高野誠鮮(たかの・じょうせん)氏

「とにかく前向きに挑戦すべき」と力強く断言する高野氏は、挑戦しない営業マンを失望の念を込め、“公務員化した営業マン”と呼ぶ。

「民間の営業マンでも上司の許可をもらえないと動けない、判断できない“公務員化した営業マン”が実に多い。それは本人たちだけのせいじゃなくて、会社が作った強固な縦割り社会のせいもあります。私は市の職員ですが、私たちよりも管理による締め付けが厳しそうだ、と思うことがしばしばあるんです。そんな組織の中ではのびのびと仕事がしにくい、新しいことに挑戦しにくいのかもしれません」

しかし、彼らにこそ、失敗を恐れずに挑戦してほしいと高野氏は話す。

「私もいろいろ失敗してきました。でもそれは挑戦したからこそ失敗という結果に結びついたのであり、挑戦していなかったら成功も失敗も起きていなかったはず。逆を言えば、ローマ法王への献上も挑戦したからこそ初めて生まれた結果なのです。一番愚かなのは失敗することではなく、成功するかもしれないという可能性を無視することです」

また、失敗したときの気持ちの切り替え方についても言及する。

「もし失敗して腐ってしまっても、宇宙から自分を見ればいい。地球をレモンくらいの大きさだとすれば、あなたの悩みなんて顕微鏡で見えないくらい小さい。失敗して四面楚歌になっても、上を見上げれば青い空が広がっている。そう思えば、一回の失敗で腐る意味が見出せなくなるでしょう。だから、どんどん挑戦して欲しい。失敗しても、リカバリー方法の可能性はあなたの頭上の青い空のようにどこまでも広がっているんですから」

取材・文・撮影/佐藤健太(編集部)

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