NEXTユニコーン企業で働くエンジニアたちに体当たり取材!NEOジェネレーションなスタートアップで働く技術者たちの、「挑戦」と「成長」ヒストリーをご紹介します

目指すは次世代インフラの創出。大企業からスタートアップに転職、“空飛ぶバイク”づくりに挑むエンジニアの素顔【A.L.I. Technologies】
今回訪れたのは、“空飛ぶバイク”『XTURISMO』の発表などで話題を呼ぶA.L.I. Technologies(エーエルアイテクノロジーズ/以下、A.L.I.)。
「次世代を支える新たなインフラ企業となる」ことを目指す同社では、『XTURISMO』に代表されるホバーバイク事業以外にも、ドローン、AI、ブロックチェーン、シェアードコンピューティングなど、先端技術を活用したさまざまなビジネスを展開している。
また、そこで働くエンジニアたちのバックグラウンドも多種多様。ハイスキル人材が肩を並べ、自動車やバイク、ドローンが自由に空を飛び交う「エアーモビリティー社会」の実現に向け、新たなルール形成の壁に挑んでいる。
そこで今回は、大手企業からの転職で同社にジョインし、『XTURISMO』の開発に取り組む二人のエンジニアにインタビューを実施。同社の開発組織の裏側や、二人の挑戦、目標などについて話を聞いた。


Air Mobility本部 研究開発ユニット リーダー 髙木 優(たかぎ ゆたか)さん東北大学工学部卒業、同大学院航空宇宙工学専攻修了。研究テーマはロボット技術を利用した脳外科手術シミュレータ用の力覚提示デバイスの開発。2010年に本田技研工業株式会社に入社し、人型ロボットの動作生成や姿勢安定化のソフトウエア研究・開発に従事。新規ロボット検討プロジェクトリーダーを経験。18年12月にA.L.I.Technologiesに入社。ホバーバイクの制御ソフトウエア開発に従事。19年4月よりホバーバイク開発本部副本部長となり、今年編成変更を行い現ポジションに就任


Air Mobility本部 商品設計ユニット リーダー 大庭崇史(おおば たかふみ)さん 大学卒業後ヤマハ発動機にてモーターサイクルのエンジン開発を担当し、フラッグシップモデルほか多くの車種に携わる。製品開発以外にも、外部機関との共同研究、課題分析タスクなどに従事。その後、航空宇宙スタートアップのispaceに入り宇宙機の開発他、宇宙ビジネスに携わったのち、 A.L.I.Technologiesに入社。現在は、機体設計をはじめ商品企画やマーケティング分野を担当する
災害現場での活用に、新たな産業の創出……
ホバーバイク開発の狙い

髙木さん(以下、敬称略):当社に入社する前は本田技術研究所で働いていたのですが、前職にいた頃からホバーバイクの開発には興味があり、自分でA.L.I.の求人に応募したのがきっかけです。入社後は希望通り、『XTURISMO』の開発に携わっています。
大庭さん(以下、敬称略):私はヤマハ発動機株式会社に新卒で入社し、その後、宇宙開発のスタートアップに転職しています。そこで働く中で、もっとビジネスや組織づくりにも関わりたいという気持ちが強くなり、再び転職活動をすることに。
ちょうどその頃、当社の社長である片野に誘われて、ヤマハでバイクを作っていた経験も生かせると感じたため、A.L.I.への入社を決めました。

髙木:ありがとうございます。浮上できるので、河川や湖の上、砂漠や湿地帯など足場の悪い道でもスムーズに進めるところが特徴で、発展途上国などでの移動や、災害支援などでの活用を視野に入れています。
大庭:また、空を舞台にしたホバーバイクレースの開催など、スポーツやエンターテインメント分野で新しい産業を生み出したり、地方活性化へとつながる可能性も秘めていると思います。
髙木:『XTURISMO』の飛行にはドローンの技術を応用していて、センサーで現在の姿勢を検知し、姿勢制御用の推力プロペラでバランスをとるように作られているのですが、その制御ソフトウエアの開発を担当してきました。
2019年4月からは、ホバーバイク事業を行う部門の副本部長も任せてもらい、プレイングマネジャーとして、採用、組織づくり、ソフトウエア開発まで幅広く手掛けています。
大庭:私は入社以来、エンジン開発など技術的な仕事だけでなく、商品企画や製品化を見据えたマーケティング戦略の立案、ブランディングなどを担当してきました。髙木同様、採用や組織づくりにも携わっており、スタートアップらしく“何でもやる”スタンスですね。
また、A.L.I.で働き始めてから一番最初に経験した大きな仕事は、『東京モーターショー2019』でのプロトタイプ出展です。会期中は、たくさんの方から反響をいただくことができました。

大庭:『東京モーターショー2019』が終わってからは、機体開発のサポートをしながら、自らテストライダーもやっています。

大庭:はい。今年に入ってからは試験機による飛行試験も開始し、順調に進めることができました。ただ、コロナショックを受けて海外での展示が延期になってしまったり、開発にやや遅れが出ている面もあるのですが、一般販売へ向けてチーム一丸となって前に進んでいるところです。
仲間をどう増やし、伸ばすか。組織づくりでぶつかった壁
髙木:そうですね、スタートアップ企業の多くがぶつかる課題だとは思いますが、プロジェクトメンバーの人数が少なかったため、苦労することはありました。
今でこそ社員も増えましたが、私が入社した頃は、ホバーバイク事業に携わっているメンバーも10人以下でしたから(笑)。やりたいことは山ほどあるけれど、マンパワーが少なく開発がなかなか思うように進まないことはありましたね。
午前中はソフト開発、午後は試験場に向かって開発したソフトを実装してテスト、夜にデバックして、また開発に生かして……っていうサイクルを続けていました。過密スケジュールな日もありましたが、常に夢中だったので、それはそれで苦じゃなかったんですよね。

大庭:私も、技術的なことよりは、未成熟な組織をどう伸ばしていくか、というところが難しいところだと感じています。
当社にはハイスキルなエンジニアがたくさんいますが、それぞれの人たちのポテンシャルを最大限伸ばすにはどうしたらいいのか。人材配置や、労働環境づくりまで、良い組織をどうつくっていくかという点で、頭を悩ませることは今も多いですね。
大庭:そうですね。人的資源が限られているからこそ、一人一人が担う役目は大きいですし、採用の面でも優秀な方を仲間にする努力が必要だと感じています。
髙木:A.L.I.はまだ若い組織ですから、経営層と社員の間に垣根がなく、エンジニア一人一人が、組織づくりにも参加できるところが特徴です。製品開発だけでなく、会社組織を自分の手で創っていくことにチャレンジしたい人には向いていると思います。
また、今回の取材ではホバーバイクのことを中心にお話をしてきましたが、当社には大きく分けて三つの事業があり、それぞれの知見を使ってお互いに補い合うような構造になっています。

そのため、ホバーバイクの開発を担当するエンジニアであっても、さまざまな専門知識を持った人たちと協業することになります。お互いのことを尊重しながら、必要なコミュニケーションを取ることができる力が不可欠ですね。
大庭:技術者として、一ビジネスパーソンとして、事業をつくっていく力を養いたい人にはうってつけの会社だと感じます。
ホバーバイク作りは“手段”に過ぎない
高木:冒頭でも少し触れましたが、このホバーバイクを「日常的に使えるもの」へと育て、世の中に新しいインフラをつくりたいですね。
最初はどうしても生産数が少ない関係で一機あたりの価格が上がってしまい、簡単に手に入れるのは難しい商品になってしまうと思いますが、ホバーバイクの信頼性をさらに上げて量産化できる体制をつくり、自動車や二輪バイクのように“空飛ぶバイク”が当たり前に使える社会にしていきたいと考えています。

大庭:そう思います。私は「ホバーバイクを作る」というのは、人の暮らしを変える「手段」でしかないと考えていて、次世代のインフラをつくっていくこと、それによって世の中の暮らしをより豊かにすることが目標になると思います。
個人的には、ホバーバイクのレースなど、新しい「エンターテインメント文化」を創っていくことも、楽しみにしていることですね。

髙木:最後まで「良いものを作る」というこだわりを持ち続けること、でしょうか。ただ、これは自分のやりたいことに固執するという話ではなく、ビジネスとして何が必要なのかを考えながら、細部までこだわったものづくりをしていくという意味です。
大庭:エンジニアリングには「正解」か「不正解」しかありませんから、「正解」を求めてとことん理想を追求していく姿勢というのは技術者として大事にしていることですね。
また、会社に育ててもらおうと受身でいるのではなく、自分からどんどんチャレンジを積んでいくことも重要ですね。そういう意識を持って仕事に取り組むことで、今いる環境で最大限成長していけたらと思います。
>>A.L.I. Technologiesの公式サイトはこちら


【この記事の著者】
マスク・ド・アナライズ(@maskedanl)IT業界に突如現れた謎のマスクマン。 現場目線による辛辣かつ鋭い語り口は「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれ、AI・データサイエンス分野における啓蒙活動に従事している。東京都メキシコ区在住
取材・文/マスク・ド・アナライズ 撮影/竹井俊晴