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元・日本ユニシスの50代ベテラン技術者が「SI脳」と「Web脳」のハイブリッド開発で生み出した『Brappi!』

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主婦層を中心に、幅広い年齢層のユーザーに利用されている『Brappi!』

主婦層を中心に、幅広い年齢層のユーザーに利用されている『Brappi!

リリース後、1カ月間で2万ダウンロード。app storeでは無料アプリのライフスタイル・カテゴリーで堂々1位を獲得し、総合ランキングでも17位と好調のアプリがある。この『Brappi!』、機能はといえば商品に印刷されたバーコードを利用したコミュニケーションサービスだ。

今やあらゆるジャンルの商品に添えられているバーコードは、もちろん販売側が売上管理等の目的で利用するためのコードではあるが、これを『Brappi!』で撮影すると商品名や価格を自動的に読み取る仕組みとなっている。ユーザーはそうして画面に現れた投稿欄に、自分なりの情報や感想を書き込んで発信していくというわけだ。

こうして商品を軸としたコミュニティを形成していくソーシャルプラットフォームであり、TwitterやFacebookにつぶやきを共有する機能も備えている。

コムレボの代表取締役・江平裕昭氏は、「細かなユーザー分析はこれから」と前置きしつつ、『Brappi!』好調の理由をこう話す。

「価格も含んだ具体的商品情報を基にしたコミュニケーションは、これまでありそうでなかったものと自負しています。『Brappi!』は、バーコードをスキャンするだけでクチコミを投稿できる。手軽さと、バーコードを読み取る作業の面白さも手伝って、今までクチコミサイトに参加したことのない層からも支持を得ているのだと思います。実際、主婦層のユーザーが非常に多い。これも『Brappi!』ならではの特徴として喜んでいます」(江平氏)

大手SI経験者とアプリ開発の猛者がシナジーを生み出す

注目したいのは『Brappi!』そのものだけではない。企画・開発した江平氏が、51歳のベテランエンジニアで、しかも日本ユニシスで大規模プロジェクトをリードしていた人物という点だ。

その江平氏が、若手起業家たちの躍進もあって競争が激化するアプリ市場に、活躍の場を移したというのだ。そこには、若いエンジニアにはない、ベテランならではの老練な発想や姿勢があった。

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「『Brappi!』の構想は、昨年の夏から描いていた」と江平氏は話す

「日本ユニシスには6年前まで在籍していました。コンパイラ・統合開発環境の開発などを手掛けつつ、いくつものSIプロジェクトのPMなども経験したんですが、興味の対象がBtoBからBtoCに移っていき、退職を決意したんです」(江平氏)

もっとエンドユーザーの顔が見える分野で力を奮いたい、との思いを胸に持ちつつ、まずはIT系のコンサルティングビジネスを立ち上げた。その上で、BtoCビジネスに直接タッチできる事業機会を探していたという江平氏。

「『Brappi!』の出発点となるアイデアは2011年夏にはできあがっていました。そこで、コンサルティングの会社とは別で、この開発をコア事業とするコムレボを設立したんです」(江平氏)

もともと金融系システムなどの業務システムの設計に携わっていたこともあり、BtoCのWebサービス開発は江平氏にとって未知の領域。そこで出会ったのが、数々のWebサービス・アプリ開発実績を持つブレイブソフトだった。

弱みがあるなら、補完してくれるチームと組めば良い

2011年9月、江平氏は、絶対の信頼を置く人物からの助言もあり、同社代表の菅澤英司氏と出会う。

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江平氏は「餅は餅屋」の発想で、アプリ開発の豊富なノウハウを持つブレイブソフトに開発部分をすべて外注している

「まあ、ちぐはぐなところもありましたよ、最初は(笑)。わたしはベテランエンジニアと言っても、いわゆるお堅いところで、しっかり仕様書を書いてから手を動かすような開発プロジェクトに携わっていましたから」(江平氏)

「一方で、僕らはというと、スピード勝負の世界でもあるので、話し合いをしながら手も動かすようなスタイルが染みついていたので、江平さんも当初は驚いていましたね」(菅澤氏)

自身が経験してきたウォーターフォール型の開発とは打って変わり、アプリはアジャイル開発で柔軟さやスピードが重視の世界。だが、同時にクオリティに対するこだわりでは一切妥協をしなかったという。

当初12月を想定していたリリースを遅らせてでも完成度を高めようとした。2月にはUIの決定を行い、3月からはβユーザーの意見を取り入れながらの機能を実施。ようやく5月のリリースに到達したというわけだ。

「アイデア勝負、という側面の強いアプリ市場の特性は理解できていたつもりです。しかし、『Brappi!』はスピードの早さよりも、『誰もが簡単に操作できて、安定した作動をする』ことの方が大事だと思いました。ですから、アプリのリリース時にも一切妥協せず、細部にこだわるよう心掛けました。だから、少しでも仕様書と違う開発部分があれば、遠慮なく菅澤さんたちに注文をつけさせていただきました」(江平氏)

直接開発のリーダーとなった崔氏、汪氏は、笑いながら「特に注文が厳しくて開発に苦労したのがカメラ部分だった」と振り返る。菅澤氏はこれに加え「『Brappi!』がシンプルに見えて複合的な要素を実現しなければいけないサービスだった」点も、難しかったポイントだという。

アイデア発信と中核アーキテクトのクオリティにこだわるのが江平氏の役割、これらを着実に形にするのが菅澤氏ほか、ブレイブソフトの役割という分担。また、アプリリリース後の機能改善などについても、ブレイブソフトが対応している。

「開発部分を委託した理由はシンプルです。コスト面もありますが、何よりiPhoneアプリの開発に精通したエンジニアチームに協力を仰いだ方が早いと思ったからです」(江平氏)

昨今のIT系スタートアップ企業では、優秀なエンジニアを携えて少数精鋭の開発チームを作り、スピード重視の開発・改善を行ことがトレンドとされている。しかし、江平氏は自前で開発チームを作るより、一見手間と工数が掛かりそうな「受託開発」を選択した。

ブレイブソフトの開発チーム

どうすれば最も効率良くアプリを開発・リリースできるのかを考える際、ユニシス時代の経験が活きていると話す江平氏

「わたし自身がアプリ開発の経験がなかったため、それならノウハウのあるチームを探せば良い。異なる強みを持ったチームが、それぞれの良さを尊重しつつ補完していけば、結果的に効率良くサービスを開発できると思ったんです。

そんな態勢で取り組めたのは、かつての(ユニシス時代の)大規模プロジェクトの経験を活かせたポイントかもしれませんね」(江平氏)

今後の展開について聞くと、江平氏は「まず現在の好調を維持できるよう細かなブラッシュアップを随時行いつつ、ユーザー分析も進めていく」と語る。『Brappi!』がコミュニケーションツールとしてだけではなく、「消費者のリアルな本音を察知できるメディア」として価値を上げていくチャレンジを成功させれば、企業のプロモーションなど、BtoBによるマネタイズの可能性も大きく広がる。

「投稿情報に脚色を加えない公正さが価値そのものですから、これをきちんと守りながら、スケーラビリティやセキュリティの担保もどんどん進めます。グローバルに通用するビジネスモデルだと考えていますから、このアプリを通して世界中の人が本当に価値のある商品に出会えるような世の中にしていきたいですね」(江平氏)

取材・文/森川直樹 撮影/小禄卓也(編集部)