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カルティエの時計を187円で買う!~LINE MALLチャンスプライスの価格予測からビッグデータ方面を眺める【連載:えふしん】

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えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

最近、『LINE MALL』のチャンスプライスにハマっている、えふしんです。

『チャンスプライス』に出品されていた定価79,800円の『ルンバ 880』

『チャンスプライス』に出品されていた定価79,800円の『ルンバ 880』

チャンスプライスというのは、『LINE MALL』の集客企画で、LINE社が1日1つ用意するブランド品や家電品に対して、自由な値付けをすることができます。

申し込んだ人の中で、一番最安値を「たった1人」付けた人がいれば、その商品を購入することができるという素敵な企画です。

(※編集部注 単独エントリーがなかった場合、最もエントリー件数が少なかった金額を最も早く申し込んだユーザーに購入権が付与されます)

これまで出品された商品は、

・iPad Air : 8万1800円
・LOIUS VUITTONのカバン : 18万9000円
・デジカメ Nikon D350 : 13万4800円
・スーツケース : 8万9250円
・ソニーの4K液晶テレビ : 39万9800円
・ルンバ 880 : 7万9800円

でした。これに対する落札価格と、値引率は以下のとおりです。

今までで一番熱かったのは、カルティエの29万円の時計を、何と187円で落札した人がいたことです。また、初日のiPad Airは、8万円以上する品が470円での落札でした。それ以外の日の落札金額でも、99%台の値引率で買えています。

このゲームは、『LINE MALL』のアプリさえインストールすれば誰でも楽しめます。入札にはお金がかからず、ノーリスクで楽しめます。ぜひ、皆さんも参加してみてください。

さて、この記事では、今、僕がやっている「チャンスプライスの落札価格をどうにか予想することができないか!?」という、緩い研究について書きたいと思います。

なぜ、カルティエを187円で買うことができるのか!?

このゲームは、数字当てゲームにほかなりません。誰も選ばない最小の値を選ぶことができれば勝ちです。このゲームには、一切戦略性のようなものがありません。とにかく1日1回好きな金額を選ぶだけ、すごく簡単です。他の人がどのように入札しているかはまったく分からないので、駆け引きのようなものは表向き存在しません。

しかし、その数字自体が購入希望価格、という価値判断が問われるため、このゲームに「いくらまでならお金を出せるのか!?」という参加者の経済感覚が反映されるのが非常に興味深いと考えています。

仮説としては、以下のような分布になるのではないかと思っています。

予想グラフ

安く買える方が得に決まっているわけですから、ユーザーの心理として1円に近い金額に人気が集まります。しかし、それではこのゲームは勝てないので、ある程度、考える人は金額を上げていきます。

でも、どこかの段階でこれ以上は出したくないというラインに突き当たるハズです。うっかり1人しか入札しない「穴」が低い金額で生まれない限り、これ以上、お金を出したくないというポイントまでは曲線に近い分布になるのではないかと思っています。

この曲線を、商品、金額、参加人数などから予測できないか!?と考えているわけです。あわよくば、その時の状況にあわせて、自動的に入札価格をはじき出すシステムが作れないかと思って、今は目の前の数字をExcelシートに入力しながら、小さなPDCAサイクルを回す活動をしています。

ですが、そんな活動をヨソに、カルティエの時計は、たったの187円で落札されました。いわば万馬券です。

この要因ですが、この時計は定価が29万円。LINE MALLにはお得な最大入札価格が設定されており、おそらく定価の70%くらいの金額ではないかと予想されます。カルティエの時計の場合、入札可能価格は約20万円です。つまり入札可能なケースは20万通り。

これに対して、その日の参加者が6.8万人しかいなかったので、入札価格が分散して、低い値段に穴が生まれてしまったものと思われます。こういったことが起きるのが、このゲームの面白いところです。

なお、この日の僕の予測金額は、8901円でした。定価が高く、人気のブランド品ですから、参加人数も入札もハネると思っていたのですが、まったくもって甘かったようです。商品のカテゴリによる、「荒れ具合」についても、今後様子を見て行きたいと思っています。

落札金額を当てることはできるのか!?

結論を先に書くと苦戦しています。ある程度の傾向は分かってきましたが、精緻なレベルで予測するのは不可能だということは、肌感覚として理解できました。

現状、このゲームについて以下のように考察しています。

・参加人数が増えれば、落札金額は上がっていくハズ

・参加者が合理的に賢くなれば、同じく落札金額は上がっていくハズ

・商品の定価と落札金額は相関関係にない

・だが、その商品が欲しいと思う人が増えると欲が出てきて荒れる可能性がありそう

・入力しやすい数字という特異点が存在する。ここ数日、1000円が最多金額で大人気。1円や1000円という分かりやすい金額に集中しても、永遠に報われないと思うが、そういう人が数%程度存在すると思われる

・毎日最高値で入札している人は業者の可能性アリ。参加母数が十分に増えれば確実に当たる選択肢。今はまだ得策ではない

『ルンバ880』への入札は最高額と最低額で実に55,859円もの開きが!

『ルンバ880』への入札は最高額と最低額で実に55,859円もの開きが!

結局、自分が入札した金額に、ほかの人がたった1人でも、かぶってしまえば当たらないわけですから、当たるか当たらないかは、最後は運ということになります。

いくら傾向が予測できていても、1円違えば天国と地獄。落札金額の範囲は見えているような気はするのだけど、当たる気はまったくしないという状況です。

現状の傾向として落札価格に影響を与えるパラメータは、“商品の魅力”ではないかと思っています。商品の魅力が高ければ参加人数も増えるようで、人数が増えれば落札金額は上がる傾向にあります(穴も生まれていますが)。

しかし、商品の魅力がそこそこだと参加者数が前日割れしてしまうので、傾向が予測しにくいという状況です。商品の魅力は数値化するのは難しいので、予測も難しいです。

いずれにせよ、数百円以下の精度は予測不可能と考えて、ECサイトならではのゲームとして楽しんでいます。LINEブランドで、こんな簡単でノーリスクなゲームでも、線形にユーザーが増えるわけではないのか!?というあたりも驚いています。

しかし、着実に参加者は増えており、今後が楽しみです。

なお、こういった予測で思うのは、データ解析に対する妥当性という部分です。データ解析の話を考えると、たびたび漫画『キャプテン』の第4話「結束」の回を思い出します。

この漫画は40年前の漫画ですが、対戦相手が選手のデータを元に行動予測して、主人公の墨谷二中が苦戦するという秀逸な話があります。はたして予測技術が発達しても、こんなにうまくいくのか!?と。

どんなにデータ解析が進んでも、「この範囲に入りそうだ」という確率論を超えないハズです。A/Bテストや広告のクリック率みたいに、どっちの選択肢でも当たれば良いというものであれば有益でしょう。

しかし、チャンスプライスのように、ざっくりと傾向が予測できたとしても、1円違えばまったく違う結果をもたらすものや、代替の選択肢を用意するのに多大なコストがかかるものに関しては、いくらデータを解析してもコストがペイできない可能性は十分に考えられます。

ここがA/Bテスト否定論につながるポイントではないかとも思ってもいます。結局、設計がピタリとハマるかどうかがカギなのでしょう。

最後に繰り返しますが、このゲームを楽しむのに金銭的リスクはありません。LINE社が毎日、多大な広告宣伝費をかけている面白い取り組みですので、ぜひ、皆さんも参加してみてください。

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