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今年はいよいよ“Geek Shift”が起こるか【編集部より新年のご挨拶】

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読者の皆さま、新年あけましておめでとうございます。日ごろエンジニアtypeをご視読いただいている皆さまに感謝をしつつ、2014年が幸多き1年になりますよう祈念申し上げます。

さて、今年最初の記事ということで、2014年がエンジニアにとってどんな年になるのか、少しだけ未来に思いを馳せてみたい。

いきなりの現実論で恐縮だが、多くの人にとって(もちろん弊誌にとっても)、今年1年の仕事が元旦に立てた計画や予想どおりに進むことはまずないと思う。考えや行動は自らの意思で変えられるが、業界トレンドはもちろん、目先の仕事も、己の力だけで劇的に変わることはないからだ。たいていの場合、仕事というのは他者(他社)の言動なり技術の発展なりに影響を受けながら、徐々に変わっていく。

だから、ここで弊誌が大仰な予想をしたところで、多くの読者にとってはさほど意味をなさないだろう。そこで、昨年の取材記事やご寄稿いただいた執筆陣の言葉を借りながら、今、何が変化しているのかを紐解いていきたいと思う。

2013年は「新たな成熟期」のはじまりだった

2013年に行った幾多の取材を振り返ってみて思うのは、昨年はさまざまな業界にとって「新たな成熟期」のはじまりだったということ。

一昨年までに話題になることが多かったのは、スマホアプリの開発やソーシャルゲームの台頭、若い世代のスタートアップによる新規サービスなど。景況が回復しつつあったことに加えて、iPhoneが2007年に生まれて以降、数多くのスマートデバイスが市場に投入されたのが背景にあった。

また、リーマン・ショック以後、企業がシステムのあり方(≒開発のあり方)を見直すようになったことや、クラウドコンピューティングの一般化によって、SI産業にも大きな変化が訪れていたことは弊誌でも何度か取り上げてきた。

だが、昨年はこうしたトピックスで記事を作ることが減っていた。正確には、スマホアプリの開発だけ、SI産業が変わっているという事実だけを取り上げることが減っていた。理由は簡単で、それらの事象「だけ」を取り上げても、ニュース性の乏しい内容になってしまうからだ。

昨年の中島聡氏の連載(20年後もソフトウエアエンジニアとして「真ん中」にいたいから、今、3Dモデリングを学ぶ)にも、このような記述があった。

わたしはこの1~2年間、ある種の行き詰まりを感じていました。iPhone誕生から6年が経とうとしている今では、スマートフォンアプリの開発も「みんながやっているもの」になった。人マネが嫌いな性分なのもあって、アプリやWebサービスの開発には面白みを見出せなくなっていました。

ウエアラブル・コンピュータの開発を含む“MAKERS”の台頭を除けば、この「みんながやっているもの」の中でどう差別化するかが、2013年の大きなトレンドだったように思う。

日本におけるスマートフォンコミュニケーションでデファクトとなったLINEが爆発的な伸びを見せ、「グロースハッカー」という言葉が普通に使われるようになり始めたのも、こうした背景があってのことだろう。

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エンジニアの守備範囲はどんどん広がり、違う“筋肉”が必要に

では、この「新しい成熟期」の中で、エンジニアの役割はどのように変化していくのか。それを知る上で、えふしん氏による昨年8月の寄稿(「Webがあたりまえ」になって生まれた軋轢と、その先の世界を考える)は示唆に富んでいる。

今までの企業のWeb活用は、広報や広告宣伝が主な活用方法だったと思いますが、今後は企業が本業として提供するサービスがスマートデバイスと直結して大きな売り上げを上げていくことが期待できます。昔叫ばれた「eビジネス化」がようやく日常生活に入り込む時代になってきました。

今まで企業のWebは間接費の予算で作られていたかと思うのですが、今後は本業に組み込まれ原価として動き始めます。そこでWebの作り手は、今までとは違う“筋肉”を求められることになるでしょう。

この「違う筋肉」を鍛え、駆使することで、注目を集めたケースは多々ある。弊誌の中でも、以下の記事は昨年の年間PV獲得ランキングで上位20位に入るほどの反響を得た。

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それぞれ異なるジャンルの記事ではあるが、共通項はプログラミングやシステム開発の知見を「以前の主戦場ではない分野」へ転用し、話題を振りまいたという点である。このようなシフトが、今年はもっとさまざまな分野で起こり始めると考えるのは、あながち間違った予想ではないだろう。

事実、以下の記事を読めば、すでにエンジニアの守備範囲がかなり広がっていることが分かるはずだ。こうした話は、もはや一部の先端的なエンジニアや先進企業だけの話ではなくなりつつある。

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各種エンジニアのシゴト人生を応援していくことを媒体ポリシーに情報発信をしてきた弊誌では、この潮流を“Geek Shift”と称して、引き続き追っていきたいと思っている。

さっそく1月18日にはこのテーマによるパネルディスカッションを開催予定(エンジニア適職フェア・イベントブース内にて)で、B2B、B2Cそれぞれの領域で活躍する有名エンジニアや企業のCTOたちに協力を仰ぎながら、今後のエンジニアの働き方を考えていくことにしている。

エンジニアtypeプロデュースイベント「Geek Shift~新しい開発者のキャリアを考える」

冒頭にも記したとおり、僕らの仕事はすぐには変わらない。しかし、「未来の仕事」を決定付けるような変化は、目の前の仕事とは異なるところでどんどん進んでいる。

その変化は、今年中に業界を席巻するかもしれないし、人によってはもっと早くに訪れるかもしれない。だから、潮目を見逃さずにチャレンジを続けるエンジニアを今まで以上にサポートしていくためにも、弊誌は引き続き精力的に取材を続けていきたい。

文/伊藤健吾(編集部)