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増え始めたソーシャルコマース、成功のカギは? デジタルガレージのR&Dプロジェクト『9cool』に聞く

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マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長を務める伊藤穰一氏が取締役に名を連ね、これまでにTwitter、LinkedIn、Pathなどのソーシャルサービスを米国から日本に持ち込んできたデジタルガレージ。

日本のネット業界内の“目利き”として新規性の高いサービスを発掘・育成してきた同社が、現在自社のディレクター&エンジニアを投入してある新規事業を展開している。それが、キュレーション型のソーシャルコマースサービス『9cool(ククール)』だ。

ザッカーバーグも注目していた「ソーシャルコマース」の今

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ソーシャルコマースサービス『9cool(ククール)』β版のサイト

『9cool』は、キュレーターが自分の設定したテーマで9つの商品・アイテムをくくり(ククールの語源でもある)、ほかのユーザーに共有していくソーシャルWebサービス。アイテムは国内のアマゾン、楽天に登録される約1億5000万品の中から選べる。

商品をキュレーションして発信するユーザー(ククリエイターという)は、アイテム群を通じて自分の世界観をビジュアライズすることができ、同じ趣味趣向を持つユーザーとコミュニティを形成することができる仕掛けだ。

ククリエイターがくくった9つのアイテム群「ククリスト」を閲覧したユーザーは、購買欲求を刺激されたらアマゾンや楽天に飛んですぐに購入可能。『9cool』は、いわば商品とユーザーの思わぬ出会いを創出するプラットフォームである。

ただ、ご存知の人も多いように、ソーシャルコマースは決して今に始まったわけではない。

Mashableによると、2010年にFacebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は「もし予測しろと言われるならば、ソーシャルコマースが次の大きなトレンドになると思う」と発言している。

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From Andrew Feinberg
2年前の段階でソーシャルコマースの可能性を見出していたマーク・ザッカーバーグ

あれから2年、市場はようやく彼の予測に追いついた。

今年11月、インプレスR&Dが発刊した『ソーシャルコマース調査報告書2013』によると、ソーシャルメディア利用者のうちソーシャルコマースの経験があると回答したユーザーは74.8%に上った(※ここでのソーシャルコマースの定義は、「ソーシャルメディアで得た情報が決め手となった購買活動」を指す)。

ソーシャルコマース先進国のアメリカでは、大型小売チェーンのウォルマートがソーシャルWeb上の友人が欲しがりそうなプレゼントを推薦してくれるFacebookアプリ『Shopycat』を公開し、ほかにもソーシャルコマースのプラットフォーム構築に奔走するスタートアップが多数登場するなど、動きは盛んだ。

しかし、国内外問わず、いまだ「本命」といわれる頭一つ抜きん出たサービスはなく、どれもビジネスとしてスケールするのかを試行錯誤しているようなフェーズだ。

ソーシャルコマースを活性化させるのに大切な3つのポイント

話を『9cool』に戻そう。このサービスは、デジタルガレージ社のグローバルインキュベーション本部・ビジネスディベロップメント部 小松大介氏の発案によるもの。「これまでのネットは、ECサイトで友人やその分野に詳しい人の情報を手がかりに、どの商品を買うべきかを意思決定する手段を欠いていた」(小松氏)と言う。

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『9cool』の企画立案からかかわってきた小松大介氏は、情緒価値による購買促進に興味を持っていた

例えば、ヘッドホンを買い替えたいと思った時、価格やスペックといった【機能価値】についてはネットで比較検討できるが、実名情報にひも付く「人の聞き心地」や「詳しい人の評価」といった【情緒価値】から購買をサポートしてくれるプラットフォームはほとんどない。

趣味趣向をシェアするインタレストグラフをコアに据えたソーシャルWebサービスという観点では、『Pinterest』や『Fancy』が競合にあたる。とはいえ、コマースに特化するというサービスコンセプトは発案当時、ほかに見当たらなかったという。

『9cool』は今年7月にβ版をローンチし、ククリエイターがアイテム群をまとめて作成したククリストの数は約1000。くくられているアイテム数は約6500個となっている。これまで大規模な広告予算を投下することはなく、まだユーザービリティーを高めるための機能拡充やA/Bテストに重きを置くフェーズだ。

彼らが試行錯誤しているポイントを聞いてみると、ソーシャルコマース市場で頭一つ抜きん出るサービスになるためのヒントが見えてきた。
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