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[連載:法林浩之⑤] 技術屋として「錆びない」ために心掛けたい10個目のこと

公開

 

2月12日(日)、東京国際フォーラムで開催された『エンジニア適職フェア』で、「赤井誠×川村聖一×竹迫良範が経験談を披露!『錆びない技術屋がやっている10のこと』」と題したトークLiveのモデレーターをやらせていただきました。

今回、モデレーター役を依頼いただいた時に、わたしは現場の司会進行だけでなく、イベントで登壇していただく3人の人選も任されました。なぜ「錆びない技術屋」というテーマのイベントで、赤井さん・川村さん・竹迫さんを選んだか。そして、さまざまな議論から浮かび上がってきた、「錆びない技術屋」でいるための条件とは何か。今日は、そのあたりを書いていこうと思います。

ありきたりでない斬新なマッチメークを提供する

今回の3人を選んだのは、第1に「錆びない技術屋」という条件に当てはまっていたから。皆さん、最前線で活躍し続けている人たちです。ということは、日々、錆びない努力を重ねているはず。そのあたりを質問すれば、来場者の皆さんに参考になると考えました。

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IT系のイベントで多くの「マッチメーク」を生み出してきた法林氏だからこそ、想定外な展開を楽しむことができる

赤井さんとは、7年くらい前からの付き合いです。彼が日本ヒューレット・パッカードでマーケティングの仕事をしていたころから、僕も参加していたオープンソースカンファレンスなどで協力をお願いしていました。

エンジニア出身なので技術には詳しいし、マーケティングからキャリアデザインまで幅広い知識を持つ、すごく引き出しの多い方です。さらに、サラリーマンを経験してから、昨年、40代で独立。来場者のロールモデルにもなりやすい、このイベントにうってつけの人だと思いましたね。

川村さんは、JANOG(JApan Network Operators’ Group)の運営委員。5000人くらいのネットワークエンジニアが集まる巨大な団体で、メーリングリストなどを通じて数多くの発言を行っています。そこでのやりとりを見ているだけで、「この方の知識量はハンパじゃない」と感じられます。

また、ネットワークエンジニアという職種はずっと昔から、インターネットを通じてグローバルと向き合う機会が多かった。「錆びない努力」を意識したことも多いはずだと考え、キャスティングしました。

そして竹迫さんは、LLイベントなどを通じて昔から知っていました。この方も、精力的に情報発信・活動を行っています。中でも代表的なのが、「Shibuya.pm(Shibuya Perl Mongers)」リーダーとしての活躍。技術レベルがとても高いことで有名なコミュニティーのリーダーなのだから、当然デキるエンジニアなんです。さらには、「U-20 プログラミング・コンテスト」など、幅広いプロジェクトに参加しています。

3人には、「幅広い知識や経験を持つ」、「情報発信に熱心」、「第一線で活躍している」という共通点がありました。一方で、職種や技術領域は見事にバラバラ。実は、僕が企画するトークLiveは、このようなタイプのものが多いです。

同じジャンルから何人も選ぶと、暗黙のうちに共通のバックボーンを前提とした話になってしまう恐れがあります。あまり顔を合わせたことのない人同士でセッションを組めばそれを防げる。プロレスに例えるなら、団体交流戦でしか見られないような対戦カードを組んでいる気分です。

話の展開が予想できないのは司会者としては大変なんですが、斬新なマッチメークでエキサイティングな展開を楽しんでもらいたいんですよ。

尖ったエンジニアは、尖るための場を自ら求めている

トークLiveでは、印象的な言葉がたくさんありましたね。

トークLive当日は、立ち見客が出るほどの盛況ぶりを見せた。

トークLive当日は、立ち見客が出るほどの盛況ぶりを見せた。

まずは、赤井さんの「得する職場で働こう」という発言。僕自身、吸収できることが減ってきたと感じたためにソニーを退職しました。だから、自分にとってプラスになる点が少ない職場なら、ほかを目指すべきだという考え方は、とても共感できましたね。

赤井さんの発言では、「パーソナルブランディングなんて気にするな」という言葉も考えさせられました。実は、トークLive後の食事会で、その話題が出たんですよ。そこでは、「ブログやTwitterで人の意見を右から左に流しても、自分のブランドなんて作れない。自分自身で取り組んでいること、自分自身で生み出したものを発信しなければ、自分の価値は上がらない」という意見で一致しました。

キャリアデザインの資格を持つ赤井さんが、上滑りのパーソナルブランディングを戒めるのは、すごく重みがあったと思います。

川村さんと竹迫さんが、異口同音に「本を読む」と答えていたのも印象的でした。確かに、お金の価値は下がる危険性がありますが、知恵や知識なら、頭の中に残っている限り価値は下がりません。「お金があるなら、自分磨きに投資する」という考え方は、錆びないエンジニアの共通点かもしれませんね。

川村さんの「周りに反対されることをする」、竹迫さんの「自分にできないことを頼まれたら断らない」というポリシーも、皆さんの参考になると感じました。言われた仕事や、自分のできる仕事ばかりをやっていては、いつか錆び付いてしまうんですよね。いろんな人とぶつかったり新しい分野に挑戦したりすることで、エンジニアは磨かれるわけです。やっぱり、尖っている人たちは、尖るための場を積極的に求めている。それが明らかになったのは面白かったです。

「未知」に挑戦を続け、刺激を求めることが錆びない秘けつ

さて、トークLive本番は限られた時間で行われたため、3人が「錆びないための3つの心がけ」を発表した段階でタイムアップになりました。トークLiveのテーマは、「錆びない技術屋がやっている10のこと」。そこで、本番で言えなかった「10番目の心がけ」を、僕なりに提言したいと思います。

それは、「未知の事柄に挑戦し続ける」ということです。

僕の場合、ソニーを退職する前は不安もありました。続く転職先のインターネット総合研究所を辞め、フリーになる前も不安でしたね。辞めてうまくいくという確信は、まったく持てませんでした。トークLiveを見ていただいた来場者やこの記事の読者の中にも、転職などに対して不安を持つ方もいらっしゃると思います。気持ちは、よく分かりますね。

同じ環境で同じ仕事をしていれば、楽と言えば楽です。とりあえず目の前の仕事は、さほど問題なくこなすことができるかもしれません。でも、それではエンジニアとして錆びてしまうんですよ。

感受性や吸収力が衰えるし、最新の技術にも疎くなりがち。人間の幅も狭くなってしまいます。小さな企業に勤めているなら、いろいろな仕事を任されることが多いし、時代の変化にも晒されやすいでしょう。でも、大企業では一つの仕事をずっと担当することがある。すると、いずれ適応力が落ち、時代の変化についていけなくなって、エンジニアとしてダメになってしまうんです。

自分を磨くためには、新しい刺激が必要。そのことは、常に意識しておきたいことですね。

社外に多くの友人を作ることが、不安解消の近道

「未知のことがらに挑戦する」には、もう一つの意味があります。それは、常に新たな人との出会いを求めてほしいということです。

赤井さん・川村さん・竹迫さんは、それぞれが多彩なコミュニティ活動を行っています。僕もソニーに在籍していた当時から、イベント運営や勉強会などの活動を通じて、たくさんの人と出会ってきました。社外に友人がたくさんいたことは、本当に心強かったですね。何しろ、周囲のエンジニアの多くは、すでに転職してうまくいっている。「みんなが何とかなってるんだから、オレも大丈夫だろう」って安心できましたから(笑)。

もし、転職などを考えて不安になっているなら、会社の外に仲間を作ることを、ぜひお勧めしたいですね。転職に役立ついろいろな情報が得られるし、何より、「みんな、同じような不安を抱えて働いているんだなぁ」と励まされるんですよ。

勉強会などに参加して、社外の友人をたくさん作る。そして自らの不安を和らげながら、挑戦をするための場を求め続ける。それも、「錆びない技術屋」として生き残るために、必要な条件ではないでしょうか。

<法林氏MCのイベントで、社外エンジニアと交流しよう>


TechLION vol.6
IT文化の振興と、UNIX/Linux文化の楽しさを広く伝え、エンジニア同士の連帯を図ることを目的とするトークイベント。日々多くの技術が生まれ、消えていくが、これらの技術を密林の動物たちになぞらえ、百獣の王となる技術を酒を酌み交わしながら発掘・探求しようというイベントです。

開催日:4/12(木)
MC:法林浩之、馮富久
ゲスト:まつもとゆきひろ、後藤大地、閑歳孝子、角俊和
場所:SuperDeluxe