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[スゴ腕の妙技 1/2] 1サービス40時間でローンチ!『ヒルカツ』開発者が語る「超高速でWebサービスを生み続ける方法」

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「開発しているのを横で見ていたことがあるんですが、あの人はスゴいですよ、ほんと。何がスゴいって、初見のシステムの全体像を即座に把握して、その場でコーディングに着手できちゃうんです」

そう語るのは鈴木伸明氏。お願い解決で人とつながるコミュニティプラットフォーム『WishScope』を運営する、ザワットの取締役CTOだ。

「普通のプログラマーと比べてコーディング自体のスピードが速いんですよね。『独自のフレームワークを作って、貯めていっているから』と聞きましたが、その手堅い仕事ぶり、まさに『IT業界のハードコアロッカー』たる異名を持つに十分ですよね」

鈴木氏が「スゴい」と絶賛するエンジニアこそ、オンザボードでCIOを務める山下博巨氏(写真左)である。

話題に

2月1日よりサービス開始する新サービス『ヒルカツ』。事前登録を開始した1月12日だけで1500人を超す登録者を集めた

東日本大震災の被災者支援を目的として急遽開発し、昨年末の『Mashup Awards 7』でPower Apps JAPAN賞を受賞した被災者向け支援物資のマッチングサービス『Toksy』や、2月1日の正式リリースに先駆けて発表された、ランチを介した就活生向け就職支援サービス『ヒルカツ』の開発者として、知る人ぞ知る山下氏。

一体、どれほど「スゴい」のか。そのことを客観的に判断すべく、2010年以降、山下氏と、そのパートナーであるオンザボードのCTO小原和麿氏(写真右)がリリースしてきたWebサービスをまとめたのが下だ。

◆2010年以降、山下氏と小原氏がリリースしたWebサービス◆

① 『Comicab(コミキャブ)』
http://www.comicab.com/
概要     マンガの蔵書管理サービス&SNS
開発者    2人(山下氏・小原氏)
ローンチ    2010/11/12
開発期間   日中業務しつつ、夜間のプライベートな時間を利用して約2週間
備考     この開発によりフレームワークの原型が完成

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② 『Twiqtion(ツイクション)』
概要     Twitterを利用しYes/Noの2択の質問が作成できるサービス
開発者    1人(山下氏)
ローンチ   2011/1/22
開発期間   前職の卒業制作として、プライベートな時間を利用して3日で作成
備考     現在はサービス終了

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③ 『Toksy(トクシー)』
http://www.toksy.jp/
概要     被災者向け支援物資のマッチングサービス
開発者    1人(山下氏)
ローンチ   2011/4/13
開発期間   約2週間
備考     東日本大震災の被災者支援を目的として急遽開発。
「Mashup Awards 7」でPower Apps JAPAN賞を受賞

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④ 『givee(ギビー)』
http://www.givee.jp/
概要     被災者への寄付金送金仲介サービス
開発者    1人(小原氏)
ローンチ   2011/6/12
開発期間   約1週間
備考      Toksyに続き被災地の支援ニーズの変化を受け開発

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⑤ 『Pictionary(ピクショナリー)』
http://www.pictionary.me/
概要     画像で見るソーシャル辞書サービス
開発者    1人(山下氏)
ローンチ   2011/7/8
開発期間   約3日
備考     PC、スマホ、ガラケーおよび4カ国語に対応

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⑥ 『ShareWave(シェアウェーブ)』
http://www.sharewave.net/
概要     サーファー向け波情報共有サービス&SNS
開発者    1人(小原氏)
ローンチ   2011/8/10
開発期間   約3週間
備考     企画者が別にいたため開発期間が少し長め

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⑦ 『ヒルカツ』
http://www.hirukatsu.com/
概要     ランチを介した就活生向け就職支援サービス
開発者    1人(山下氏)
ローンチ   先行会員登録 2012/1/12  正式ローンチ 2012/2/1予定
開発期間   約40時間
備考     大手企業社員や一流大学の学生が多数参加で話題に

なんとその数、計7サービス。しかも二人とも、普段は受託業務を行いながら、空いた時間を利用して自社サービスを開発しているというから驚きだ。

どうすればこれほどの速いペースで、立て続けに完成度の高いソーシャルサービスを生み出すことができるのか? 二人に話を聞いた。

まずは「今いらない機能は作らない」スタンスが大事

――どうしてそんなに短期間にたくさんのサービスを作るんですか?

小原 そもそも作ること自体が好きというのもあるし、ユーザーのみなさんに使ってもらうのもうれしい。だからどうしても「次から次に」となっちゃうんです。まぁ単に面白いからっていうのと、飽きっぽいっていうだけかもしれませんが(笑)。

山下 飽きっぽいっていうのは確かです(笑)。あとは、短時間で一気にモチベーションを上げて、ガガっと作っていく方が、集中してコードが書けるしやれることも多い。それに、作ったものはすぐに使ってもらいたい。それで結果的にサービス数が増えてしまうんです。

――スピード開発の秘訣は?

「」

「ユーザーのニーズを先読みして、前もって開発することはありません」(小原氏)

小原 いくつかありますけど、まず挙げたいのは、「必要のないものは絶対に作らない」っていう信念じゃないですかね。

山下 先々のことを考えて「後で拡張が入るから」と、いきなり作り込みに入る人がいますけど、僕らの場合は、ユーザーのニーズが分からない段階で先回りして開発することはありません。

小原 二人とも、必要になった時に作れば良い、という考え方なので。

山下 それに、オンザボードの開発者は僕ら二人しかいませんし、基本的には自分で考えたものは自分で最終意思決定者のプロデューサーとなって開発しているので、情報共有に時間を割く必要もないというのがあります。

小原 あとは、独自のフレームワークを使っていることでしょうね。弊社のフレームワークはソーシャル系Webアプリ開発に特化しており、サーバ環境も含めたスケルトンが用意されています。

サーバやミドルウエアのセットアップ、バージョン管理やデプロイ、バックアップ手順の作成など、非機能要件のわりと時間を取られる部分をすっ飛ばして、いきなりアプリケーションの開発に没頭できるようになっています。

グーグルが提供しているGoogle App Engineが代表的ですが、PaaSと言われてるものに近いかもしれません。それでいて、すべてがわりと”枯れた技術”の組み合わせなので、実績があってネット上に情報も多い。

山下 僕自身もそれが一番大きいと思っています。独自フレームワークには、ソーシャル系Webアプリに必要な機能はひと通りそろっていますよ。

例えば、Webアプリで必須なMVCの機構やキャシュ、画像変換、全文検索、メール送受信、課金、またソーシャルアプリで必須のTwitter、Facebook、mixiのOAuth認証やソーシャルAPIを利用する際の機能、アプリケーションとしてあればうれしいバッチやキュー、S3関連の仕組みなどはあらかじめそろっています。

逆に一般的なフレームワークでよくある国際化機能やValidation、テンプレートなどは、今のところ必要がなかった、もしくはアプリ単体ではあるがほかで流用する予定がなかったなどの理由で、組み込んでいません。先に挙げたSNS以外のAPIも今のところは実装されていません。Windowsでも動作実績がありませんね。

SIer での経験から学んだ「開発の順番」に効率化のカギが

――独自のフレームワークを作られた経緯は?

独自フレームワークを作るきっかけとなった『Comicab』

独自フレームワークを作るきっかけとなった『Comicab』は2週間で作られた。現在も順調にユーザー数を増やしている

小原 以前、二人で一緒に『Comicab』をつくった時、サービスに依存しない機能は「少し手を加えるだけで分離できるね」ってことになったのがきっかけでした。

自分たちの開発スタイルを考えれば、あったら便利とは感じていたので頭の隅にはありましたけど、「さぁフレームワークを作ろう」という感じで作ったわけではありません。

山下
 僕らは二人ともSIer出身なんで、開発の進め方も考え方も、そこで学んだ部分が大きいんです。

二人ともJavaでしっかりオブジェクト指向のプログラムを書いているし、SIer時代には大規模な開発も経験しているから、UIより先にデータ構造から手を付けた方が効率的だとか、ソースやコメントは潔癖なほどきれいに書くだとか、開発手法や考え方に共通点も多い。それが結果的にフレームワーク化するのに役立ったんだと思います。

小原 実際切り出しやすかったですからね。どういうパッケージ構造がスマートか、ちょっと悩んだぐらいです。自分が書いたコードでも、1年も経てば他人が書いたようなものじゃないですか。

Webに限らず、サービスってずっと改修が続くものだと思っているので、SIer時代から誰が見ても分かるように書くことに気を使っていたのが良かったんでしょうね。お互いどうしようもないソースに悩まされた経験がたくさんあるので(笑)。
(2/2に続く)

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