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[特集: 時代を切り拓く新プロダクトを創れ! 1/3] ネットと国内1万4000店舗のリアル店舗を融合させた「ソーシャルコマース」の仕組みを作る

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◆セブンインターネットラボが描くソーシャルコマース

セブン&アイグループが『流通クラウドコンピューティング』と呼ぶプラットフォーム上に、消費者・グループ各社・メーカー・コンテンツプロバイダー・メディアパートナーなどすべての知恵を集結させ、ソーシャル的なアプローチで従来のビジネスモデルを刷新する概念。

「われわれが志向しているのは『ソーシャルコマース』。ネットとリアルを融合させた新しい小売りの形を作っていきたいと考えています」

株式会社セブンインターネットラボ 執行役員 本部長ソーシャルソリューション本部 飯田克也氏

株式会社セブンインターネットラボ 執行役員 本部長 ソーシャルソリューション本部 飯田克也氏

そう話すのは、セブンインターネットラボのソーシャルソリューション本部で執行役員を務める飯田克也氏だ。

セブンインターネットラボは、コンビニエンスストア、総合スーパー、百貨店、出版・メディア、フードサービス、金融、専門店、ネット通販などを擁するセブン&アイ・グループのインターネットにかかわるIT戦略・システム戦略を担うことを目的とし、2009年3月に設立。セブン&アイ・グループのIT戦略、システム開発を担っている。

セブン&アイグループ全体で売上高9兆1000億円、総店舗数3万9000店、1日あたりの来店客数3800万人という、世界屈指の規模を誇る流通グループが進める「ネットとリアルの融合」。具体的にはどのような形で小売りのあり方を刷新しようとしているのか。

「今ではもう当たり前になってしまいましたが、ネットで注文した商品を指定したセブン-イレブンの店舗で24時間いつでも受け取ることができます。このサービスはクレジットカードがまだ持てない若い世代のお客さまや、インターネット上でカード決済することに抵抗があるお客さま、不在がちで宅配便の受け取りがなかなかできないというお客さまの声にお応えしたものであり、ECサイトである『セブンネットショッピング』とリアル店舗を持っているからこそ可能なサービスです。つまり、”ネット”と”リアル”を融合すれば、お客さまを時間や決済方法の制約から解放できるという一つの証です。今後作っていきたいのは、こうした新しい小売りの形をさらに進化させたものなんです」

全国1万4000店舗に無線LANを敷き、消費者の細やかな要望に応える

今年7月に同社の母体であるセブン&アイ・ホールディングスが発表し、同社で企画・開発を行う『7SPOT』計画も、飯田氏の言う「新しい小売り」の可能性を広げるための布石といえるだろう。

この『7SPOT』は、セブン&アイ・ホールディングスが NTT東日本と協力して、2013年2月までに全国のセブン-イレブン、イトーヨーカ堂、そごう・西武、デニーズなど約1万4000店舗に無線LANスポットを設置するというもの。ただし、これは店舗内でメールやサイト閲覧をしたいというユーザーの要望に応えるだけのものではない。

「もちろん、店内に設置したディスプレイにわたしたちがお伝えしたい情報を表示してご覧いただくこともできます。ですがもっと身近に表示できるディスプレイがあるじゃないか、と。多くのお客さまがお持ちになっているスマートフォンにお勧め商品の情報やクーポン、デジタルコンテンツ、フロアガイドなどを表示できれば、お客さまが必要とするタイミングでこれらの情報をご提供できるのではないかと考えたわけです。『7SPOT』はそうした新たな試みを実現するためのインフラでもあります」

例えば、こんな使い方が可能になるという。

店舗に足を運んだにもかかわらず目当ての商品がない場合、従来ならほかの店に探しにいくか、あきらめるか、店員に入荷時期を尋ねるぐらいしか選択肢はなかった。しかし、『7SPOT』のようなネットワークインフラがあることで、利用者が自分のスマートフォンを使って、卸業者や製造元に在庫状況を直接問い合わせてその場で注文することも可能になる。受け取り場所も決済方法も自分で自由に決められるし、仮に品薄のベストセラー小説を探していたなら、割安の電子書籍版の購入を勧められるかもしれない―――。

こうした利便性の高いネットサービスが、1万4000店という巨大な店舗ネットワークで確立されるとなれば、飯田氏の言う「ネットとリアルの融合」による「新しい小売りの形」という言葉にもさらにリアリティが増してくる。

消費者が「ネットかリアルか」を意識しなくなる社会を創る

セブンインターネットラボが描く、『ネットとリアルの融合』

セブンインターネットラボが描く、「ネットとリアルの融合」

「われわれとしては、サイトからであれ店舗からであれ、お客さまが便利だと感じられる方でお買い上げいただき、お支払いも品物のお受け取りも、その都度自由に選んでいただければ良いと考えています。お客さまはあえてネットであるか、リアルであるかなどと意識しなくても済むような形が理想です。それがわれわれの言う、『ネットとリアルの融合』が意味するもの。利便性に加え、これまでにないまったく新しいサービスを提供できるはずです」

むろん「ソーシャルコマース」の可能性は小売りの場面だけに適用されるものではない。ソーシャルである以上、参加者同士の網の目のような結びつきから、新たなものが生み出されるきっかけにもなるはずだ。

「『ソーシャルコマース』を通じて、お客さまが新商品の開発に参加するなんてこともできるでしょう。そうなれば、お客さまとメーカーさんの知恵、そしてわれわれ流通小売業者の知恵が融合できます。冒頭に申し上げた通り、『ソーシャルコマース』はわれわれのビジネスに関係するあらゆる人たちの『知恵』を結集する場でもあるのです。今までにない結びつきが生まれることを期待しています」

では、現在、内部では実現に向けてどんな取り組みがなされているのだろうか。

技術者倍増で、「顧客目線」「提案型」の開発体制を目指す

「われわれは、開発に関してもオープンかつソーシャル志向。必ずしも内製化に固執するわけではありませんが、やはり”早く”、”上手く”、”安く”作るには、オープンソースを取り入れ、コミュニティともつながりを持つことが必要になります。ただオープンソースを使う以上自己責任は不可避ですから、コアな部分は躊躇なく内製化を進め、その上で瞬発的に大きな山を越えなければならないようなときは外部ベンダーのお力を借りる。そんなハイブリッド型の開発方針でプロジェクトを推進しています」

現在、開発部隊は100名程度。うち正社員は半分ほどを占めるが、今後は正社員比率を倍にする計画だ。

「われわれは、ある意味インハウス型のSIerのような存在。受け身だと仕事にならないという面があるんですよ。『お客さま目線』、『提案型』というのは非常に重要な要素ですが、どれだけ人員が増えても企画立案から運用まで、実現したいイメージを自分たちの中にしっかり持って開発に取り組んでいきたいと考えています」

巨大プラットフォーム上に展開される「ソーシャルコマース」。どんな可能性が花開くのか。彼らの動きから当分目を離せそうにない。

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