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[特集: ビッグデータ時代の歩き方 1/3] ゼロスタート山崎徳之氏「どんなにインフラが変化しても、すべてはOSのインストールから始まる」

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レアメタル化するインフラエンジニア

インフラエンジニアが恒常的に不足している。

理由は、クラウドの拡大・浸透や、Webサービスのソーシャル化が急速に進み、インフラエンジニアの需要が急拡大したからと言われているが、果たして実態はどうなのか?

ライブドアなどで自らインフラエンジニアとして活躍し、現在は大量のログデータ解析を軸とするWebソリューション事業と、トラフィック面の問題解決策を提供するデータセンター事業を展開するゼロスタート代表の山崎徳之氏はこのように話す。

「ビッグデータ時代の歩き方」アドバイザー

株式会社ゼロスタート 代表取締役社長
山崎徳之氏(@zaki

ライブドアなどでインフラエンジニアや代表取締役として活躍。設計・構築・運用のすべてに携わった。2004年にシリコンバレーでRedSIPを創業。2006年にゼロスタートを設立し、代表取締役として活躍している

求人の絶対数、つまり人材ニーズの量だけ見れば、
今でもプログラマーの方が多いですよ。
ただ、需給バランスで見れば間違いなくインフラエンジニアは不足しています。

その理由がクラウドやソーシャルにあることも事実ですが、
それ以前の次元で、インフラエンジニアが不足するのは
当たり前だとわたしは思っているんです。

「要はインフラエンジニアになりたい人間そのものが、昔から少ないんです」と山崎氏。

モノづくりに直接かかわり、華やかな印象のあるプログラマーと比べ、例えばサーバが落ちないように備えるような、地味な印象を持たれがちなインフラの仕事を、進んで望む人材は少ないのだという。それに加えプログラマーとは違い、「自宅で手軽に勉強できる仕事ではないので、そもそも人材が育ちにくい」職業だともいえる。

しかし、ここへ来てソーシャルWebサービスの利用者が急増し、
この傾向を活用しようとする企業が増えたことで、
インフラエンジニアの価値は上がりました。

サーバが落ちて通信不能となるような事態は、
もはや『あってはならない』レベルにまで達している。
ある意味で電気や水道と変わらない、絶対的な安定性が求められている。
だから企業はインフラ担当者の待遇を良くしたりして、
募集をしているものの、なり手がそもそも少ない。

わたしは最近思うんです。
インフラエンジニアは"現代のレアメタル"なんじゃないかと。

では、この傾向を加速させているクラウドとソーシャルをインフラ視点で見た時、何が課題となっているのだろう。

求められるのは、IaaSをコントロールできる技術と知識

まず、最近完全にバブル化している
『クラウド』という言葉を整理しないといけませんね。

SaaSもPaaSもIaaSも、全部ひっくるめて
クラウドと呼んでいる今の世の中の視点では、問題点が見えにくい。
特にインフラエンジニアを熱望しているのは、
主にIaaS系サービスの提供者や関連企業です。

物理サーバをそのまま提供するレンタルサーバ・サービスと違い、IaaSはサーバーのCPUやメモリ、ハードディスクを仮想化技術などを駆使して提供する。

代表的存在である米国アマゾン『Amazon EC2』などがそうしているように、一般的にはOSまで提供する。ハードウエアとしてのサーバを知るだけでなく、仮想化やOSについても深く理解していることが、インフラエンジニアには求められる。

ですから、「クラウド系のインフラを独学しているからできます」
と語りたいなら、例えば『Amazon EC2』を実際に操作して、
何かをしていた人間でなければいけない。
そういう人材は、本当に少ししかいません。

「だって、普通は自分でサーバを用意してまで、何かを学ぼうとはしませんし」と笑う山崎氏。

インフラ系技術は、職務上で要請があり、なおかつそれを実現する環境を与えられて初めて”モノにした”と言えるのだ。

これを踏まえると、新しい技術が次々と台頭するこのご時勢にインフラエンジニアとして生きていくのはなかなか困難な道に思える。しかし、山崎氏は続けて「ベテランも若手も、インフラエンジニアとしての本質は非常にシンプルで、難しいことではない」と話す。

どんな最新技術も、基礎を鍛えなければ意味がない

「基本はOSのインストール。これがわたしの持論です」

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基本の技術が身についていなければ、どんな最新技術を追いかけてもあまり意味がないと話す山崎氏

ウィザードにしたがうだけでなく、今マシンが何をどう動かしているのか、ファイルシステムはどういう手順で起動するのか、そういった視点でカーネルに入っていく。

この一連の作業と確認を繰り返すことが、インフラエンジニアの基礎となる。これは、冒頭の2つの事業のほかにゼロスタートが開催するインフラエンジニア育成スクール『techcamp(テックキャンプ)』でも徹底していることだという。

この基礎を身に付けた上で、現代のインフラエンジニアに必要なのが、「更新系データの取り扱い」だと指摘する。

TwitterやFacebookを例にするまでもなく、
ソーシャル系のWebサービスでエンドユーザーが
最も頻繁に行うアクションは、書き込み、つまり更新です。

ネットワークの下りばかりでなく、
上りもケアできる知識やノウハウが必要になっている。
ReadだけでなくWriteにかかわる情報の取り扱いを
円滑に行えなければ、サービスそのものの人気に影響してしまうんです。

非同期処理やHadoopが自然と身に付く一つの方法

山崎氏が現在注目しているのが、非同期処理やHadoopなどだ。

ここまでくると、勉強だけでなく天性の資質にも関係してきます。
非同期処理などは、同時に複数のことを
考えられないと身に付きません。
生まれ持った『思考の空間把握能力』が問われます。

また、先進技術のHadoopを使用できれば、
場合によっては今までの作業が驚くほど楽になる。
ただし、必要に迫られない限り身に付かないし、
使うこともないのに勉強しても意味がありません。

成長をしたければ、こうした技術を
本当に必要としている企業で経験を積むことです。

山崎氏はさらに、次代の技術変革としてSSDやWi-Fiにも、あえて今注目しているという。

今後同報通信としてWi-Fiが使われるようになると、
IPなしで機器がガンガンつながる。
これは確実に定着するでしょうから、かなり世の中を変えていくと思います。

またSSDは本来ハードウエアの分野で期待している
技術革新ですが、サーバの大敵であるディスクが
機器から消えていくことになれば、リスクは大幅に低減します。
インフラエンジニアならば、期待しないではいられませんね。

最後に、現役のインフラエンジニア、あるいは近い将来インフラエンジニアになろうという人には何を求めるのかを聞いてみよう。

何度も言いますが、まずはOSのインストール。
その繰り返しで基礎をつかめ、と言いたいですね。
また、もう一つ言いたいことがあります。

それはサービスそのもの、つまり企画にも積極的にかかわっていく姿勢が
現代のインフラエンジニアには不可欠ということ。

何を目的にしたサービスで、どういう成果を求めているのか。
これを把握した上でインフラを考えなければいけない。
そして、その延長線上で経営にも目を向けてほしい。
例えば、クラウドはなぜこんなに拡大しているのか。
それはコストを大幅に削減できるから。

そうした経営的目的をきちんと意識して
システムと向き合えば、将来のキャリア形成も違ってくるんです。

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