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[連載:品田哲①] エンジニアは”ハイブリッド性”が売りになる

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テクニカライザー・品田 哲のエンジニア観察日誌
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株式会社フロンテッジ  先端コミュニケーション・ラボ  ディレクター
品田 哲

技術力と先見性を武器に、異業界をまたに掛けて活躍する”テクニカライザー”。大学卒業後、ソニーに入社し、一貫してカーエレクトロニクス分野の設計開発に携わる。2001年には、ソニーとトヨタがコラボレーションしたコンセプトカー、Podの共同製作を担当。2007年より、ソニーと電通の連結子会社である広告代理店・フロンテッジにて、現職

長年エンジニアとして働いてきたわたしは、現在広告業界という全く趣を異にする職種の中で働いています。それもはや3年、気付いた点がいくつかあります。その一つが、「人の入れ替わりの早さ」です。会社自体の特性もあるかもしれません。しかしその後の追跡でも、転職したクリエーターや営業が、また転職する話も聞くのであながち間違った見識とも思えません。

数値化するのは難しいのですが、強いて挙げるなら3年前の写真が根拠をものがたります。この会社に来て間もないころ、とある宴会を催しました。そのときの集合写真、参加者20名のうち、現在もこの会社で働いている人は半分もいないのです。過半数の方が新天地を求めて去りました。

一方、わたしの長期エンジニア時代、20年前の出張先で撮った仕事仲間の写真に写っているエンジニアは、まだ7割以上も同社同業です。

この差に気づいて以来、「エンジニアにとっては転職するということは特に大きな決断なのだ」という思いを深くしました。エンジニアとして活躍できるようになるには、育成期間が長く必要で、雇う会社にとっては長く働いてもらいたい。

また働く方も、苦労して習得した技能は、活かすことがその人のキャリアにとっても優位であるからにほかなりません。たとえ転職したとしても、業種が全く異なる転職が少ないのは当然のことだと思います。しかし今の時代はむしろ思い切った違う業種への転職の機会ではないだろうか、と思うのです。

わたしの転職の経験は、そういう意味からすると先進的な例かもしれませんが、それはかえって自分の別の可能性というものを感じられる貴重な経験であったと思います。

人の価値は、業界を変えてみると大きく変わる

では、具体的にエンジニアが異なる業種へ転職する場合、どういったことを考えて企業や働き先を考えればよいのでしょうか?例えば、電気関係のエンジニアには、職種例として

★アナログ電気回路設計(電源回路設計なども)
★論理回路設計(ロジック設計など)
★IC(集積回路)設計

などが挙げられますが、これらの分野の設計者を求めている業界は、いま自動車分野において顕著なのです。本業ともいえる電気業界、IT業界では、TV、携帯電話、オーディオ関連機器、デジカメ、ほとんどすべての分野で、特に日本国内生産は赤字で、”大量のエンジニアを必要とする成長分野”とは言い難い。しかし自動車業界は電気化が本格化したばかりで、ニーズは高まっています。

エンジニアは、一般的には、「自分の研究開発分野がどう活かせるか」、というよりは「目の前の目標をどう達成するか」、という方向に目が行きやすいのですが、これからのエンジニアは「今求められている業界はどこか」、ということにも目を向けていく必要があるのではないでしょうか?

「士農工商電源屋」

例として挙げた自動車業界は今、空前の電気自動車ブームです。内燃機関がここ数年でなくなり、全て電気で動く、そしてそのインフラが、街づくりも変えていくといった、ちょっと先走りすぎのような風評ではありますが、自動車各社が、いやおうなく取り組んでいる分野であるのは確かなことです。

そこで重要視されているのは、充電を含むいわゆる「電源屋」という畑です。表題の「士農工商電源屋」は、20年前ぐらいにつきあいのあったDC-DCコンバータ設計屋さんが言っていた言葉なのですが、いわく

「電源屋は、設計者としての地位は大変低いが、決してなくならない。」

ということを言いたいための独特の言い回しでした。これは今でも立派に通用しています。今やカメラでも時計でも電池がないと動かないご時世ですから、電源屋はまさにひっぱりだこ。スマートフォンの普及により、限られた電力でいかに効率よく回路を動作させるか、という戦いは加熱する一方なのですから当然です。

更に非接触充電、電動自転車における回生充電、更には太陽電池、風力発電など、一定ではない発生電力をどのように効率よく充電するかも、これからの発展技術の一つです。この分野は更にエンジニアを必要とするはずです。

「商品カテゴリー」が崩壊し、ハイブリッドエンジニアが引く手あまたに

昔の”商品カテゴリー”という考え方は、今や崩壊寸前です。デジカメは、ビデオカメラとしてのフルハイビジョン動画撮影機能を持ち、今はGPS機能で位置情報を記録、今どこにいるか、を見ることもできます。更に携帯電話がその最たる例ですが、デジカメであり、音楽プレヤーであり、財布であり、ナビであり、さらに今度はゲーム機になろうとしています。

わたしの知り合いは、携帯電話のエンジニアであったため、この就職難の時代でありながら50歳を過ぎても意外に早く再就職が決まりました。携帯をやっていたために、売りこめる商品分野が多かったのが幸いしたのだと思います。

このような時代ですから、自分の専門分野を深く掘り下げる一方で、「活かせる場所を自分で考える」、ハイブリッド性も重要になってきていると思います。それは新しい分野の商品企画でもあり、また新たなカテゴリーを作ることになるかもしれません。

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撮影/小林 正(人物のみ)

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2011年1月に、東京ビッグサイトで行われた『[国際]カーエレクトロニクス技術展』の様子。このイベント、前代未聞の注目度でした!

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充電関連技術ブースの周りには黒山の人だかりが! まさに今、充電が「注目の技術」になっていることがうかがい知れます(@『[国際]カーエレクトロニクス技術展』)