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[連載:品田哲②] 結局、「なければ作る」メンタリティーがモノをいう

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テクニカライザー・品田 哲のエンジニア観察日誌
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株式会社フロンテッジ  先端コミュニケーション・ラボ  ディレクター
品田 哲

技術力と先見性を武器に、異業界をまたに掛けて活躍する”テクニカライザー”。大学卒業後、ソニーに入社し、一貫してカーエレクトロニクス分野の設計開発に携わる。2001年には、ソニーとトヨタがコラボレーションしたコンセプトカー、Podの共同製作を担当。2007 年より、ソニーと電通の連結子会社である広告代理店・フロンテッジにて、現職

今回の災害は、大変な思いをされている方々が大勢いらっしゃいます。
心からお見舞い申し上げます。

わたしのエンジニア人生のスタートは、岩手県にあったソニー千厩というところでの製造実習でした。今でこそなくなってしまった製造所なのですが、それ以来の付き合いがある友人は、気仙沼に居を構えています。

この友人の家族と家は、津波が来たエリアより更に1km奥であったため、直接の被害は受けませんでしたが、それでも親類縁者、友人には多く行方不明がいます。その友人によると、いまだ電気はおろかガス、水道も来ておらず、なおかつ10分おきぐらいに微地震があって寝てられないそうです(3月20日時点)。

単三電池⇒単一にする緊急時用カートリッジを作ってみよう

友人の依頼もあって、とりあえず電池、照明などを調達に秋葉原に赴きました。電池がない、というのは聞いていたのですが、実際探すと、本当に単一電池がありません。期限切れの単2が100円とかで売られていますが、それが限界。幸い単三は潤沢にあり、しかもアルカリが4本80円(ちなみに都会の電気エンジニア御用達の秋月電子です)なので、買ってきました。

こういった時、従来型?のエンジニアは工夫をします。単三を単一の代わりに使うアダプタを売っているところはありませんが、考えてみれば

★長さを1cm下駄をはかせる
★円筒の直径を34mmに太らせる(単三は14mm)

などの処理をほどこしてやれば良いのです。そこで実際にいくつか製作してみました。作る上での目標の一つは、単三電池が容量的に小さいことを踏まえて、交換が簡単にできる仕様にすることです。

試作品1_1.JPGのサムネール画像


オフィスにあった液状のりのケースに、単三電池を2本入れ…

試作品1_2.JPG


後ろに穴を空けて、フタにネジを入れ込めば…

試作品1_3.JPG


単一電池2個分になりました。

試作品2_1.JPG


単一電池が1個だけ必要な場合は、ペットボトルのフタに穴を空け、単三電池の前後に差し…

試作品2_2.JPG


懐中電灯のフタにあるバネを伸ばせばOK。パチンコ玉を間に挟んでも良いですね。

不測の事態が起こった時こそ、エンジニアの真価が問われる

こういった、不測の事態に対応する経験は、直接的にキャリアには関係がないかもしれません。しかし、即応能力に秀でていれば、確実に頼られる存在となるので、結果的に後々の人間関係に良く作用する可能性は高いでしょう。ダーウインのいう、「生き残れるのは変化に対応できる種」という言葉を思い出します。

例えば、わたしが新商品のプレゼンのために、シカゴのホテル4シーズンズのスイートにいた時のこと。

オーディオアンプにチューナーも何もつないでいないにもかかわらず、ラジオが聞こえてきたことがありました。しかしこれではデモにならない。ただ、ホームオーディオの担当者は経験が浅く、こういった事態の対処はおろか、原因もよく分かっていない様子でした。

一方わたしは、カーエレクトロニクスをやってきていましたから、同様の妨害を受けた経験がありました。従って原因と対策(アンプの入力段が検波をしてしまい、音が出ているため、入力段にちょっとしたコンデンサを追加すれば解決する)も知っており、容易に対処することができました(後で分かったことですが、このビルはラジオの電波塔となっており、かなり電界強度も強かったとのことです)。

開発系のエンジニアをしていれば、たいていのプレゼンで、

★持って行った機器が動かない
★送った機器が届かない
★上記の組み合わせで届いたときにはすでにプレゼン1時間前!だが動かない
★動くは動くが外的要因で何かしらの問題が起こる

といったトラブルに遭遇したことがあるでしょう。こういった場面で、ものをいうのは、サバイバル的なものの考え方です。

電気のエンジニアの場合、電気が来ないことには、手の出しようがないことが多いのも事実です。しかし、最終的にはありものを使って情報収集ができる人こそが、サバイバルできる素質の持ち主だと、わたしは考えています。

そういう意味で、不測の事態だらけの今は、エンジニアの日ごろの自分の姿勢やサバイバル資質が試されている期間だともいえるのではないでしょうか。

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「理数力」に「理系の力」。要は、ありものからモノを作り出す工夫する力ですね。

…それはさておき、最近エンジニアのニーズが高まっているようです。写真のように、出版物もかなりこういった方向をアピール。エンジニア諸君、これからの時代は我々エンジニアが台頭する時代です!

地震で(?)東京タワーが曲がってしまう時代ですが、まっすぐ進みましょう。

撮影/小林 正(人物のみ)