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[連載:八反田 智和] 江川崇氏に聞く(2/2)-「スマホ周りの今後のキーワードはノード、エッジ、リンクですかね」

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Windows Phoneの台頭で熾烈になったOSのシェア競争について、江川氏に見解を聞く八反田氏

熾烈になったOSのシェア競争と今後の展望について、江川氏の見解を聞く八反田氏

八反田 なるほど、すごく具体的で分かりやすいです。タブレット展開という意味ではどのOSが向いてそうですか?

江川 『iPad』は完成度が高く、とても素晴らしいタブレットだと思います。初代『iPad』が出た時に、軽さを犠牲にしてでも電池の保ちやすさを重視したあの判断は、当初はとてもアグレッシブで感銘を受けました。『iPad』が創り出したライフスタイルは、生活にうまく溶け込んでいますよね。

わが家では、子どもが生まれてから、妻がノートPCを開くことがなくなりました。でも、『iPad』は常に見ています。子どこを傍らに置きながら『iPad』を見ている光景が、わが家の日常です。

Appleは時間とお金をかけて機種を厳選しているため、世の中に広く受け入れられる汎用的な用途で使われるものしか出さないでしょうから、ある用途に特化したものや、カスタマイズ性を持たせたいものは、AndroidやMeeGoなどが活躍できる余地は十分にあると思います。

例えば、Androidも最近になってタブレットと外付けのUSB機器が接続できるようになりましたが、【タブレット+外付けUSB機器】の組み合わせを考えれば、いろいろと未来はありそうですし、すみ分けができると思います。また、スマートフォンより大きく、現在のタブレットより小さなサイズのものがたくさん出てきそうですよね。

八反田 わたしはタブレットをまだ使い切れてないので、今後どのような形でライフスタイルに入り込んでいくのか気になります。では、総括的な感じで、スマートフォン新時代のキーワードを3つ教えてください。

江川 【ノード】、【エッジ】、【リンク】ですかね。

今後の開発体制は、より「Small is beautiful」に

八反田 おぉー、それ、聞き覚えあります(笑)。興味深いですね、ぜひそれぞれのイメージを教えてください。

江川 すみません、勢いです(笑)。3つも思い浮かばなかったので…….。要はグラフです。

それぞれのスマートフォンや、スマートフォンを持っている人がノード、スマートフォンから利用できるいろんなサービスやWebサイトもハブ的なノードになるかもしれません。それらのノードをつないでいくのがリンクです。

ノードからノードへ辿っていくと、膨大な組み合わせ数ですよね。サービスは、モノやお金、暮らしとつながっているので、スマートフォンを通じてあらゆるものとつながっていると言えると思います。インターネットが出てきた時と同じで、今までもPCでそれはできてたでしょ? と言われれば、技術的にはその通りなんですが、生活の密着度ではスマートフォンの方が段違いに上なので、だいぶ意味は違ってくると思います。

エッジはグラフ用語としてはリンクと同じような意味なので、3つ挙げるためのこじつけなんですが、鋭さみたいなものも重要なんじゃないかと思っています。

ノードの一つとしてグラフの中に自分も存在しているので、そのノードが何かっていうことを問われる機会が多くなると思っていることと、後は、TVとかのマスメディアって基本的に受け身じゃないですか。受け身だと何も考える必要がなくて楽だと思いますが、ソーシャルメディアは自分で効率的なノードの辿り方を考えないといけないので大変ですし、取捨選択も難しいと思います。

このTV番組が不謹慎だ、とか、このアニメは子どもの教育に悪いから問題だっていうレベルで考えてると、スマートフォンじゃ電源を入れることすらできないですよね(笑)。そういうのをすべて受け入れた上で自分なりに判断するという意味で、エッジ です。

八反田 この辺りの世界観はすごく発展的で面白いですね。ソーシャルグラフも似た概念なのかなと考えています。今の日本のWeb業界でこの話を始めたらキリがなさそうです。さて、そんな変化の渦中で、これから求められるエンジニア像にはどのような変化がありそうだとお感じですか。

江川 難しい質問ですね。ちょっと極端な言い方ですが、最近は特にエンジニアが携わるものの単位が、今までよりもますます小さく分割されていく傾向があります。

これからはさらに「一人で勝負できるエンジニア」が求められるシーンが増えると話す江川氏

これからはさらに「一人で勝負できるエンジニア」が求められるシーンが増えると話す江川氏

例えば、今までは10人で一緒に開発するのが当たり前だったものを、2~3人の単位で3つに分けるなど、そういったケースが今までよりも増えていますし、かなりやりやすくなっています。今後、ますますそうなってくると思いますよ。大きなものを作るときも、当たり前のように分けられるんじゃないかと。

そうなってくると、リンゲルマン効果じゃないですが、エンジニア一人一人の存在価値はすごく高まっていく。優秀な人の価値は高まり、そうでない人は、そうでないことが明らかになります。

何が優秀かは個性や特性にかかわることなので一概には言えませんが、個々の力がますます重視されるようになると思っています。

また、グローバルな視点で考えると、日本国内でエンジニアが活躍できる市場規模は減っていますし、今後も減り続けると思いますので、望む・望まないにかかわらず、世界で闘うことが求められていると思います。

「レーダーチャート的にデコボコした人の方が面白い」

八反田 そうなると、個人的には若いエンジニアが育つための環境としてあまり良い状態じゃないというのが心配です。お話の中で、エンジニアの「優秀さ」という言葉がありましたが、周りの方で優秀な方ってどんなパターンが多いですか?

江川 その人らしさ、というか、個性がはっきりと見える人が多い気がします。たいていの場合、社会生活を営んだり、組織の中でうまくやっていくために……などと考えるあまり、自然といろんなことを抑えてしまうと思うんです。そこを、その人が本来持っているベロシティを下げずに、ボリュームをMAXに上げた状態で維持できる人はすごいと思います。

かつ、そういうスタンスでも周囲から孤立しない状態を創り出せる人は、本当にすごい人だなと思います。必ずしも社会人としてマジメであったり、品行方正である必要はないと思います。もちろん、社会生活の中で、踏み越えちゃいけない一線はあると思うんですけど、何らかの能力が際立っていればいるほど、代わりにほかの何かが欠落していることも多いと思います。

それが「個性」として受け入れられる範疇であれば、例えばレーダーチャート的にデコボコしている人の方が面白いですね。自分にないものを持っているな、という尊敬の念もあります。

八反田 そういった方が増えていくためにも、これからの日本企業や日本人エンジニアが、世界のスマートフォン市場で活躍していってもらいたいと思います。次の世代が追いかけ、追い抜いてくれると、ますます面白くなりますからね。本日は示唆に富んだお話をありがとうございました! 関西に戻られても、コミュニティ活動などで東京にはちょくちょく来られるんですよね?

江川 こちらこそありがとうございました! はい、もちろん東京には頻繁に来ます。多分、しばらくは「一体どこにいるのか分からない人」になると思います。

依然として距離や場所が問題になる局面も多いですが、近いうちに時代も変わると思うんですよね。「江川さんって、どこにいるか分からないけど、だからといって困らないし、そもそも何で今まで気にしてたんだろう?」というような世の中になると思います(笑)。

それが当たり前になったらすごく面白いんじゃないかと。まずは、自分とその周りだけでも、そういう状況を創り出していきたいです。

八反田 実際、徐々にですがそうなってきてますよね。REALの中西晋吾さんとか、Gclueの佐々木陽さんとか。私事ですが、6x6cmプロジェクトも含め、今後ともよろしくお願いします!

※この連載では、インタビューゲストを募集しております。自薦・他薦は問いません。
https://www.facebook.com/hattandaまでメッセージをいただけたら幸いです。
 

撮影/柴田 ひろあき(八反田氏カットのみ)

  

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