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[津田大介からの質問状] 富士通編(2/2) 「経済的価値と社会的価値の同時実現は可能だ」

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≪≪[津田大介からの質問状] 富士通編(1/2) 被災地支援『つなプロ クラウド』開発に見る、SEの新しい役割

津田大介氏からの質問 その3

震災後、現地のニーズと支援者のマッチングサービスが多数生まれましたが、

それらが別個に乱立しているのも事実です。他サービスと相互連携できるよう、

データをAPIのような形で統一フォーマットにしていく予定はあるのでしょうか?
 

生川 津田さんのご指摘はわたしも重要な課題だと思っていますが、今のところ相互連携はあまり意識していません。そういった”IT大連合”は、国や自治体が音頭を取ってやらないと難しいと感じているからです。

生川氏と吉無田氏、被災現場にて。他サービスとの連携を「考えていない」のは、市町村の状況を鑑みてとのこと

生川氏と吉無田氏、被災現場にて。他サービス連携を「あまり意識していない」理由は、市町村の現状を鑑みてだ

実は、避難所情報の統合管理をわれわれから自治体に提案したこともあるのですが、【質問その1】でもお答えしたように、被災地域の各市町村はさまざまな対応に追われて調整を図る余裕がありません。

実際に現地を見ていても、決してそれが悪いわけではなく、あの被災現場では仕方のないことだと感じます。

それに、今回の震災対応のようなケースにおいては、ITの理想形を語るよりも、スピード重視ですぐに役立つオーダーメイドサービスを構築するのを優先するべき、というのがわたしの持論です。その意味で、今は『つなプロ』の活動を裏方としてサポートし続けることが、より直接的な支援になるのではないかと考えています。

『つなプロ』がすごいのは、これまでの支援活動で築き上げたナレッジを、「災害支援ノウハウ」としてまとめて今後に残そうとしている点です。われわれとしても、『つなプロ クラウド』で学んだ情報管理のノウハウを非被災自治体に提案し、今後の震災対応などに活かしていただこうと検討しています。

震災で起きた構造変化をキャッチアップしていくのもプロの仕事

津田大介氏からの質問 その4

今回、社内でプロジェクトのGoサインを得るため

「活動前に『つなプロ クラウド』の発展形を提示した」とある記事で読みましたが

今回の取り組みをどうやってビジネスに発展させたいとお考えですか?

現時点での青写真を教えてください。

生川 現時点での構想は、社会ニーズに対応することで得たノウハウを提案し、経済の循環性を回すというもの。例えば、今回のようなクラウドシステムを「被災地域には社会貢献として支援」、「非被災地域には今後の防災・減災システムとして提案」していくなどです。

今まで、地震に備える仕組みは数多く存在していましたが、津波被害の”その後”に対応する仕組みは見かけません。今回われわれが『つなプロ』と一緒に支援に取り組んで得たナレッジは、今後の防災・減災システムを構築しようとする自治体の方々にとっても非常に大きな価値となるはずです。

その後も現地に足を運び、震災後数カ月が経ってから発生する社会課題に対してITがどんな貢献ができるかを考え、ビジネス化の可能性を随時社内にフィードバックしていく中で、正式に活動のGoサインをもらいました。

もう一つ、6月に入ってからわたしたちが社内に提示したのは、今回の震災によって社会構造そのものにイノベーションが生まれるかもしれないということです。具体的には以下の3つの動きです。

①新しい公共

既存の援助システム(行政・職能団体・支援団体)では埋めることのできなかった役割を担う組織が自発的に発生し、NPOやボランティアなどによる共助の精神が地域を支える。

②新しい情報の流れ

既存メディアよりも迅速に、個人が発信する情報がソーシャルネットワーク上に流れ、一気に市民権を得た。

③新しいお金の流れ

企業や団体、さらには個人からの善意が寄付という形で集まり、困っている人を支えていくという「寄付社会」の芽生え。

こうした流れを汲み、「社会的価値のあるITシステム」を作り上げることができれば、いずれマネタイズの機会も生まれるはずだと考えています。

その一例として、最近では市町村ごとに変わりつつあるニーズを丁寧に拾っていく活動の一環として、高齢者の生活環境や健康状況を調査する仕組みを地域医療団体やNPOと連携して構築し、提案活動も行っています。

時には、被災地支援を希望している企業やNPO団体が活動原資を獲得するために、助成団体や行政に対して企画をする支援などもしております。

富士通はこれまでも大小問わずさまざまな企業・団体さまにシステム提案を行ってきましたから、「提案力」という強みを活かして活動原資確保にこぎつけます。IT面以外でもコーディネートできることも、先に述べた「ITのプロ」としての仕事だと思っています。

今回の一連の活動を通じてわたしなりに手応えを感じたのは、「経済的価値と社会的価値の同時実現は可能だ」ということ。そして、本当の意味で役に立つシステムは、必ずどこかでマネタイズできるということです。

技術的な優位性や利便性だけを売り込むのではなく、それらを使ってどうユーザー満足を高めていくか。そこにフォーカスして、ニーズ→マッチング→デリバリの流れすべてをフォローしていくことが、わたしたちのようなSEに求められることになっていくのではと思っています。

取材・文/伊藤健吾(編集部)

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