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[コラム] 低迷続く受託開発の現場でニーズ急騰中!! 「2 in 1」エンジニアのナゾ

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顧客企業の内製化、オフショア開発の本格普及、システム投資額の減少……。どの切り口から見ても、暗い話題ばかりが出てくる最近のSI業界。そんな中、多くのSIerやネットワーク構築会社(以下、NIer)が次の稼ぎ頭として力を入れ始めているのが、「クラウド・コンピューティング」や「ユニファイド・コミュニケーション」だ。

いずれも、開発や運用コストの削減や省力化、業務効率や品質のさらなる向上といった、これまでトレードオフの関係にあるとされてきたニーズに同時に応え得る技術キーワードとして、ユーザー、サプライヤー双方から熱い視線を集めている。

未曾有の被害をもたらした東日本大震災以後、システムの仮想化やコミュニケーション手段の統合・複合化が、サーバやストレージの安全性のみならず事業の継続性にもメリットをもたらすと考える企業が増えることが予想され、急速な市場の拡大が見込まれている。

IT専門調査会社のIDC Japanが今年4月に発表した「国内クラウドサービス市場動向」でも、2015年の同市場規模は2010年比4.3倍の1947億円と予測されている。SIerにとって、新たなビジネスチャンスとなるのは間違いないだろう。

表・国内クラウドサービス市場 セグメント別売上額予測、2010年~2015年 

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出典:国内クラウドサービス市場 2010年の実績と2011年~2015年の予測(IDC Japan株式会社。2011年4月4日)

とはいえ、アキレス腱がないわけではない。プロジェクトの最前線に立つ開発エンジニアに求められる要件が、従来とは大きく変わりつつあるからだ。

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株式会社リアルゲート
代表取締役 社長
平沼 健氏
2005年、ネットワークエンジニア派遣とMicrosoft社認定のITトレーニングを行うリアルゲートを起業

ネットワークエンジニアの派遣や技術者教育事業を手掛けるリアルゲート代表取締役社長の平沼健氏は、通信・ネットワーク分野で、すでにそうした変化が起こり始めていると話す。

「従来からネットワークエンジニアの育成と派遣事業に力を入れてきましたが、かつてのようにルータやスイッチに強ければ引く手あまた、ということはなくなっていますね」

その要因になっているのが、まさにクラウドやユニファイド案件の増加にあるという。

「数年前までは、初歩クラスのCCNA資格さえ持っていれば評価されるような状態でしたが、最近では”普通免許”程度の扱い。すぐにプロジェクトにアサインするのは困難な状況です。固有のベンダーや機器に詳しいだけでは、クライアントに評価され難くなっています」

必要なのは、開発領域を横断して任せられるエンジニア

特定のプロダクトが圧倒的なシェアを持って使われていた時代は、技術力の証としてプロダクトをドリルダウンしながらベンダー資格を取得していくのも、キャリア形成上有効な手段だった。しかし今は、マルチベンダー、マルチデバイス対応が当たり前の時代。システムを構成するプロダクトやアプリケーションは、以前とは比較にならないほど増加している。

「クラウドにしてもユニファイドにしても、サーバと端末の間を取り持つのは通信でありネットワーク技術。だからこそ、年を追うごとに通信・ネットワーク技術の重要性は増しているのです。また一方で、スマートフォンやタブレット端末の普及で、企業システムにも多様化するクライアントへの対応やASP、ソーシャルメディアとの緊密な連携が求められるようになりました。つまり、業務システム構築やアプリ構築の現場で、通信・ネットワークの知識が必要とされるシーンが拡大しているわけです」

かつてはアプリケーション開発やDB領域は、それぞれに特化した開発エンジニアのテリトリーであって、ネットワークエンジニアは自らの仕事としてとらえる必要はなかった。その逆もしかりだろう。しかしこれからは、こうした開発領域を横断的に担当できるエンジニアが求められているという。

「ネットワーク構築に関して言えば、これまで通信・ネットワーク分野とされていた領域は、ルータやスイッチの設定が大部分を占めていました。でも、もはやそれだけの仕事はなくなりつつある。今、ユーザー企業が求めているのは 『2 in 1 型』のエンジニア。つまり通信・ネットワーク構築と、アプリやシステム開発を兼務できるエンジニアなのです」

平沼氏によると、例えばネットワークエンジニアを必要とする案件であっても、付加条件に「Linuxでシェルスクリプトを組めること」や、Oracleとの連携、さらには「Windows Server 2008とHyper-V(仮想化アプリケーション)のスキルセット」などを挙げるユーザー企業が増えているという。システムのスケーラビリティが最重要視されるクラウドシステムの開発では、単一技術だけをもってこなすのがもはや不可能に近いからだ。

「技術者教育事業も展開している弊社の経験上、こうしたプロジェクトを担当できるエンジニアを育成していく際、業務アプリエンジニアに通信・ネットワークの知識を身に付けてもらうよりも、ネットワークの基礎を身に付けているエンジニアにアプリ開発の手法を学んでもらった方が早い成長が期待できます。いくら業務アプリの開発経験が豊富なSEでも、TCP/IPのパケットレベルから通信・ネットワーク技術全般にまで理解を拡げようとすると、知識習得にそれなりの時間がかかってしまうからです」

「そこにある危機」にいち早く気付いた人が生き残る

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ネットワーク知識+業務系の開発力を会得することが、苦境脱出の「出口」になると平沼氏は言う

いわば「クラウド時代の業務系SE像」として、最も有利な立場にいるネットワークエンジニア。しかし、この事実に気付いているエンジニアはまだまだ少数派だと平沼氏は感じている。

「もちろん、その逆も同じことが言えます。SI案件の受注が減っていることに危機感を持つ業務アプリエンジニアは多いでしょうが、自分のキャリアのあり方にまで思い至っているエンジニアはまだまだ少ない。だからこそ、早い時期に『このままではマズい』と気付いた人には、チャンスが増えていくと思います」

企業向けシステム開発のみならず、次世代送電網として注目されるスマートグリッドや電気自動車、プラグインハイブリッドのテレマティクス化など、通信・ネットワーク技術を核とした新たなインフラ整備が進むことを考えると、平沼氏の言う「2 in 1」エンジニアへの期待と需要はさらに高まることが容易に予想できる。

平沼氏が経営するリアルゲートでも、外部技術者の教育事業やSES(システムエンジニアリングサービス)事業の拡充のため、すでにこの「2 in 1」 エンジニアの育成に力を入れ始めている。その効果もあって、このSI不況のさなかでも、売り上げ規模は増加し出しているという。

「ネットワークエンジニアがネットワーク構築だけで食えた時代、業務系SEがシステム開発だけやっていれば食えた時代は終わろうとしています。顧客が求める低コストかつ高品質なシステムを実現するには、いち早く『2 in 1エンジニア』になっていくことが何よりも重要です。もし、あなたがルータやスイッチの専門家であること以外に誇れる技術がないなら、自分が置かれている状況に敏感になってほしいですね」

これからもSIerやNIerで活躍の場を得たいと考えるエンジニアに今必要なのは、正しい現状認識と意識変革、そして”領域横断力”の習得だ。この好機を逃さず、ぜひ将来性のあるスキル構築を図ってほしい。

取材・文/武田敏則

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