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[対談:ひがやすを×和田卓人] プログラマー人生を楽しむために知るべき97のこと【シャイ克服編 2/2】 「モード」を切り替える儀式を持とう

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―― 日付まで覚えているんですね!

和田 ちょうど、角谷信太郎さん(元・日本Rubyの会理事)の「チームかくたに」に参加した日なんですよ。角谷さんをはじめとするメンバーは皆、有名なブログを書いていたり、雑誌の取材記事に普通に出たりしていました。僕はそれまで何もアウトプットをしていなかったので、「スゴイところに来ちゃったなぁ」と。で、その日から、自分もやってみようかなと、こっそりブログを始めてみたんです。そしたら、翌日くらいにすぐ見つかってしまった(笑)。

TDDについてだけでなく、時にコードを公開しながら幅広い技術話が展開される和田氏のブログ『t-wadaの日記』

TDDについてだけでなく、時にコードを公開しながら幅広い技術話が展開される和田氏のブログ『t-wadaの日記

ひが 運の尽きだったね(笑)。

和田 XPのことについてなど書いていたら、全然知らない人からもコメントをもらえたんです。これがうれしかった。「どうやら、自分の書いていることにも価値があるらしい」と。それからは、さらに熱を込めて書くようになったし、そうなるともっと反応が増えていって。

ひが そうやって、「プログラマー和田卓人」としての自信を深めていったわけだよね。

和田 そうなんです。おかげで、「どこかの勉強会に出よう→オフラインの知り合いが増える→勉強会で発表を頼まれる→講演を依頼される」というサイクルが回り始めたんです。このサイクルがもたらす利点は、さっきお話したとおりです。

ひが やっぱり最初のきっかけが大事だよね。シャイな気持ちをこじ開けるきっかけさえつかめれば、そこから良い方向に回転していく。

和田 それまでは、勉強会に参加しても自分から発言するのはほぼゼロ。技術本もたくさん読んでいたけど、発信はしない。インプットばかりの生活でした。それが、ブログを書き始めてからは、アウトプットをすることで世界が広がると気付かされた。

―― 行動することで、全然予期してなかった結果が生まれたりするわけですね。

和田 僕は、こっそり日記を書いていたら見つかったという「巻き込まれ型」。一方のひがさんは、自分から動いて変えていったタイプ。何だか、第2回の「スキルアップ編」の対談と同じ展開ですね(笑)。

ひが 実は僕は、自分から動くための方法論があるんですよ。それが、冒頭で話した『ガラスの仮面』ごっこです。

オフではリチャード・ギア、仕事ではOSS開発者の「仮面」をかぶる

―― いよいよ来ましたね、今日の本題が。詳しく説明をお願いします。

ひが ご存じの方も多いとは思いますが、『ガラスの仮面』っていうのは北島マヤという女優を主人公にしたマンガです。北島マヤは「千の仮面を持つ」と言われていて、どんな役にもなり切れるんですよね。

和田 ありましたね、それ。

ひが 僕は、これを日常に応用しているんです。高校生の時に『ガラスの仮面』を読んで以来、何かなりたいものがあれば、その仮面をかぶるんです。例えば、女性に接するときには、映画『プリティウーマン』に出てくるリチャード・ギアの仮面をかぶっています。優雅でオトナの余裕があり、「女性に輝いてほしい」と心の底から思っているみたいな。

和田 じゃあ、さっきの「パリジャンになる」ってお話も、仮面をかぶるみたいなイメージなんですか?

ひが 自分がイメージする「パリジャン」はたぶんこうだろう、というイメージで、見た目と気持ちを”仮装”するんですよ。そうすると自信が生まれてきて、「告白してみるか」ってなれる(笑)。

和田 一種の自己洗脳ですね。

ひが ホントにそう。で、今、仕事上の僕がかぶっている仮面は、オープンソース開発者の仮面。特に『Seasar2』を始めてからは、「社交的で華やかな開発者」という仮面をずっとかぶっています。「コミュニケーションが苦手で地味」というエンジニア像を変えたいと思ったんです。

ひが氏、和田氏ともに、特に講演の壇上に上がる時などは「スタンドが下りてくる」と意見が一致

ひが氏、和田氏ともに、特に講演の壇上に上がる時などは「スタンドが下りてくる」と意見が一致

和田 確かに、イベントなどで講演するときのひがさんって、普段と違いますね。しゃべり方から立ち振る舞いまで全然違う。役者さんっぽい感じって言うんですかね。

―― そうなんですか。

和田 今のひがさんのお話には、僕も共感するところがあって。講演の時などは「壇上に立つ自分」を演じてる気がしますね。仮面をかぶるというか、仮面の方からやってくるというか。

ひが 『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドみたいに?

一同 爆笑

和田 奥さんによく言われるんですよ。普段は聞き返すくらい声が小さいのに、どうして壇上だとあんなに大きな声が出るの? って。それは多分、下りてくるからなんですよ(笑)。モードが切り替わるんですね。

ひが そうやって人前に出ていると、「自分の名前」で仕事が来るようにもなっていくよね。

和田 はい。僕のように独立している身からすると、それが最も大事かもしれません。そういう流れで僕のところに来た方は、講演などで見た僕を期待しているんですよ。だから僕も、彼らに安心感を持ってもらえるよう振る舞います。大きな声できちんと目を見て話したり、期待に応えられるように勉強したり。

自己催眠にかかるまで、徹底的に「想定問答」を解き続けよう

―― 「モードを切り替える」と言葉にすると簡単ですが、実際にやるのは難しいんじゃないんですか? 何かコツはあるのでしょうか?

ひが うーん、さっきも話したように、これって自己催眠なんですよ。思い込み。僕なんか、本来はものすごくプレゼンが下手くそなんですよ。でも、イベントの前などに「オレは大丈夫だ」と自己催眠をかける。

引っ込み思案な自分をTPOによって変えるため、ある「儀式」を持っていると話す和田氏

引っ込み思案な自分をTPOによって変えるため、ある「儀式」を持っていると話す和田氏

和田 (大きくうなづいて)あー、分かります。僕も講演の前は、自己催眠しないとやってられないですよ。あえてコツを挙げるとすれば、仮面をかぶる「儀式」を用意しておくことくらいですかね。僕の場合は、講演に臨む際、以前ならゼナ、今はレッドブルを飲むことがモードチェンジの「儀式」になっています。

ひが 「儀式」ね、それは良いかも。

和田 ただ、実はこれも後付けの理由で。最初はそんなつもりはなかったんですよ。講演の直前は、徹夜で資料を作ったりするじゃないですか。その後で2時間しゃべり切るのは大変だから、栄養ドリンクを飲んで”ドーピング”していたんです。それが何度か続いて、儀式になったという感じですね。
 

ひが 何かを始める時って、基本的に自分に自信がない状態じゃないですか。そういう時に、自信のあるキャラになり切るのは有効だよね。それが僕の場合はリチャード・ギアだったわけで。

和田 逆に、ときどきエンジニアの発表を聞いていて「あまり良くないなぁ」と思うのは、ひたすら自己卑下をする発表のパターン。へりくだりたくなる気持ちも分かりますが、自信のなさそうな人のプレゼンを聞かされても、聞く側は困惑してしまいます。そして、仕事をしていく上で大事な「信頼」も得にくくなってしまいます。

ひが 人前に立つときは、とにかく伝えたいことをきちんと話す。これができるとできないでは、エンジニアの価値も大きく変わってきます。

―― ひがさんの「リチャード・ギア」や「パリジャン」のように、仮面をかぶるときは何かロールモデルがある方がやりやすかったりするのでしょうか?

ひが まぁ、それはどちらでも。僕の場合がそうだっただけで、例えば身近に尊敬できる先輩やあこがれている人がいるなら、彼らをマネしたって良いわけで。理想的なロールモデルがなかなか見つからなければ、自分で「こういう人になりたい」とイメージトレーニングをしていけば良いんじゃないかな。

―― そのイメトレは、具体的にはどうやってるんですか?

ひが 「このキャラなら、こういう場合はどう答えるだろうか?」と、いくつか想定問答集を頭の中に描いておくんです。その問答集が分厚くなるほど、キャラが確立されていくんですね。とにかく、練習すればするほど仮面をかぶるのが上達しますよ。北島マヤちゃんと同じ(笑)。

和田 僕は、誰かをマネしたことはあまりなくて……。コーディングや文章などについては、誰かのやり方を参考にするのがとても大事です。ただ、しゃべり方や立ち振る舞いは、あこがれている人と同じことをしても、なかなかうまくいかなかったんです。

ひが 皆違う人間なのですから。学べるところは学ぶけれど、そこに我流を加える。そうやって「オリジナルの仮面」を作るべきだと思います。そして、その仮面をたくさんかぶるほど、仮面と皮膚が一体化してくるんですよ

―― なるほど。

ひが シャイを克服するって、それなりのきっかけが必要じゃないですか。もうすぐクリスマスや新年がやってきますし、これを機になりたい自分をイメージして仮面をかぶり、自分を変えてみるのも良いと思いますよ。

―― 今回も絶妙なオチで締めていただき感謝しきりです! ありがとうございました。

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取材・文/白谷輝英 撮影/小林 正

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