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[コラム] 新感覚ITイベント『TechLION』が教えてくれた、IT勉強会の上手な活用術

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6月17日(金)の夜7時30分。多くのサラリーマンが仕事を終え、同僚や友人、家族、恋人と、”華の金曜日”を楽しむ時間帯だ。

そんな”ハナキン”に、東京のアンダーグラウンドタウン・新宿に吸い寄せられるかのように集まる技術者たちがいる。

彼らが目指すのは、USP友の会が主催するITイベント『TechLION』。

数多のアングライベントが行われてきた新宿ネイキッドロフトにて開催される、「本物の技術者の生き方を探る」新感覚ITトークライブだ。

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オープニングテーマと画像が、とにかくかっこいい。緊張と興奮の中、第二回『TechLION』が始まろうとしている

ライブハウスでITイベントが行われること、そして、食事をしながらビールを飲みながら参加できるイベントであることが、よくある「IT勉強会」とは一線を画している。まさに、”新感覚”のITトークライブである。

イベントが始まる頃には、ライブハウス内は60名以上の技術者で超満員に膨れ上がった。立ち見が出るほどの盛況ぶりだ。

技術への愛と情熱が交差する『TechLION』

IT業界の明石家さんま(?)、法林浩之氏(日本UNIXユーザ会/USP友の会)をMCに、『TechLION』のプログラムは以下のように続いていく。

【1部:獅子王たちの夕べ】
「Rubyを通して学んだこと」高橋征義氏(達人出版会/日本Rubyの会会長)

【2部:ライトニングトークEx.】
① 渋川よしき(@shibukawa)氏(DeNA/日本XPユーザグループ) 「アート・オブ・コミュニティ」
②市谷聡啓(@papanda)氏(Devlove / Project 4tate) 「あなたは己の帆をどこに立てる、か。」
sigwyg氏(AGN/Sugamo.css) 「Web屋にVimが拡がりゆく不思議」
④川村聖一(@kawamucho)氏(NEC ビッグローブ/JANOG) 「やってみましたWorld IPv6 Day」

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生の高橋メソッドプレゼンテーションは、シンプルかつ分かりやすい内容。もちろん、観客を笑わせることも忘れない

第一部では、日本Rubyの会会長・高橋氏がRubyについて余す所なく語ってくれた。Rubyとの出会いや、日本最大級のオブジェクト指向スクリプト言語Rubyに関するイベント『RubyKaigi』発足の経緯など、話は尽きない。特に印象的だったのは、『RubyKaigi』を今年で最後にすると決めた理由について話す高橋氏の姿だ。

「ちょっと内輪っぽさがあり、ぬくもりを感じられるくらいの規模感や場所でやるのが本来の姿かもしれない」「スケーラビリティと運営コスト、参加者の経験値の広がりなどを考えると、これまでと同様のやり方で運営するのが限界に感じてきた」

今や1000人規模(懇親会に400人!)のイベントとなった『RubyKaigi』を、一度リセットしたかったのだろう。良くも悪くもRubyistが拡大したため、一度遠目から見つめ直したいという、ファン心理のようなのもかもしれない。
※ちなみに、今後は日本Rubyの会を一般社団法人化し、新しい活動を見せるそうだ。

高橋氏の言葉の節々に感じる「純度100%のRuby愛」が会場にも伝わり、感嘆の声が広がっていった。

IT勉強会の主催者たちに共通することとは!?

第二部は、ライトニングトーク(以下、LT)Ex.。通常の5分間のLTに加え、MCの法林氏、高橋氏を交えたアフタートークが魅力だ。

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小ネタを多用していた@papanda氏のLT。およそ80シートはある力作(プレゼン資料)を引っさげ、会場を笑いの渦に

LT一人目の渋川よしき氏が、オライリー・ジャパンから出版された『アート・オブ・コミュニティ』の翻訳秘話を語れば、@papanda氏は『RubyKaigi2008』に参加した帰り道に『DevLOVE』の設立を思いついたという自身の経験をもとに、「理想(=勉強会の高揚感)と現実(=毎日仕事に翻弄され続ける現場)の間で自分たちが何をすべきか」と会場のお客さんに向けて熱弁を振るう。
※『DevLOVE』=開発(Develop)を愛する人達の集まり

Sigwyg氏の回で「Vimの流行と魅力」についての話になると、emacs派の高橋氏との論争が勃発。互いに譲れないものがあるのだろう。技術の話になると、会場も自然とヒートアップし始める。

そして、ラストを飾る川村氏のLTは、多くのエンジニアが気になる「World IPv6 Dayの舞台裏」。観客全員が「へぇ~」と興味深く聞き入っている。当日のIPv6でのアクセスは1.5%と少なかったが、「『全日本剣道連盟』がIPv6にサイト対応していた」という小ネタには、どっと笑いが起きた。

興味深く聞き入る人、ガヤを入れる人、笑う人、感心する人・・・・・・。一人ひとりの感情がリアルに伝わってくるのが、『TechLION』の魅力なのかもしれない。ライブハウスならではの距離感が、会場に一体感をもたらしていた。

こうして賑やかなムードの中、第2回『TechLION』は幕を閉じた。次回開催は、9月22日(木)の予定。興味を持った方がいたら、ぜひこの一体感を味わってもらいたいものだ。

勉強会主催者も、はじめはみんな参加者だった

1000人規模のITイベントを主催したり、オライリー・ジャパンの書籍を翻訳したり……。今回の出演者は、今でこそすごいことをやっているように思えるが、それぞれが口をそろえて「ターニングポイントはITイベントだった」と述べている。

MCを務めた法林氏も、この『TechLION』を主催したきっかけは、今まで参加していたITイベントだそうだ。

「これまで僕がITイベントとかLTに出演・参加してきた経験を活かせないかなと思っていました。特に、Lightweight Languageのナイトセッションなどでトークライブの経験はあって、すごく盛り上がったんです。『TechLION』は、これらの経験がベースとなって生まれたイベントですね」

このように、今ではIT勉強会やイベントを主催する人たちでも、起源を辿ればみな参加側の人間だったのだ。もしかすると、勉強会には人をモチベートする何かがあるのかもしれない。では、果たしてIT勉強会に参加したことで何が変わっていったのか。

ここからは、主催者となりうるエンジニアの行動を、体系化してみることにしよう。

IT勉強会を有効活用する方法

色々話を聞いていると、ITイベントや勉強会を企画するような「本物の技術者」として活躍するエンジニアの多くが、IT勉強会に参加した後に何らかのアクションを起こしていることがよく分かる。

一概に言えることではないが、もしあなたがIT勉強会を主催する側へと回ったなら、それは「本物の技術者」への1つのステップを踏み出したと考えられないだろうか。

そうすると、IT勉強会を主催するためには具体的にどんな行動を取ればよいのだろうか。法林氏はこう話す。

「まずは、どんなものでもいいからIT勉強会に参加して、同じものに興味を持つ友人・知人を作ってください。そのためにも、懇親会へ参加することをおすすめします。

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papanda氏の言うように、勉強会の帰り道でボーッとしていてはいけないのかもしれない。思い立ったら即、行動だ

大抵のIT勉強会は登壇者が主役ですから、イベント中に知り合いを作ることは簡単ではありません。だからこそ、懇親会やイベント終了後の交流会などで積極的に声を掛け合うのが重要なのです」

勉強会への参加は、自身の技術的なスキルアップのためだけではなく、興味のあるコミュニティーとのネットワーク作りとしての重要な役割を占めているということだ。

「自分の興味のあるコミュニティーとの距離が縮まったら、そこから情報交換が始まる。結果的に、自分にとってとてもプラスになるんですよね。また、そこで繋がった人同士で勉強会を開くというケースが多くあります。今では846人ものエンジニアが参加しているあの『DevLOVE』でさえ、はじめは2人からのスタートだったんですから」

法林氏は続けて言う。

「エンジニアが得意じゃないことは承知ですが、もっと”自分”を全面に出して、存在をアピールするべきだと思います。あとは、人として魅力のあるエンジニアになってもらいたいですね。そうすれば、きっと周りに人がついてきますよ」

取材・文/小禄卓也(編集部)