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[コラム] 『Life is Tech!』発・未来型ギークに対抗する手段は、「浮かんだら即自作」の習慣づくり

タグ : iD Tech Camps, IT, IT教育, Life is Tech!, MOVIDA JAPAN, Teen, カヤック, ギーク, シリコンバレー, デジタルネイティブ, 孫泰蔵, 柳澤大輔, 業界有名人 公開

 

今年の夏。東京大学、慶応義塾大学SFC、デジタルハリウッド大学の協力のもとで、iPhoneアプリ開発やゲームデザインといった最新技術の習得と、創造性を伸ばすことを目的とした日本初の中高生向けIT教育プログラムが始まる。

その名も、『Life is Tech!』。

5月20日(金)、同プログラム発足にあたり、東京大学の福武ホールにて「日本のIT教育についてちょっと考えてみよう」と題した発起会が開催された。

注目度の高いプログラムなのだろう。定員180名の福武ホールは、学生を中心とした一般参加者でほとんど埋め尽くされていた。

今のままのIT教育では、海外には到底かなわない

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「スピーチは、スティーブ・ジョブズを参考にしている」という渡辺祥太郎君

[特集:TeenなGeekの業界改造計画]でも取り上げた渡辺祥太郎君がスピーチで言っていたのは、「アイデアを形にできる人になりたい」ということだ。彼のその発言の裏には、アメリカ・シリコンバレーの『iD Tech Camps』の参加経験が強く関係している。

渡辺君の話によると、アメリカでは小学校低学年のころからWordでエッセイを提出させるなど、子どものうちからコンピュータに触れる機会が豊富にあるそうだ。

ただ技術を身につけるのではなく、異文化交流やコミュニケーションを大切にするのだという。”遊び”を交えてITにかかわることで、「IT=おもしろい、楽しい」と感じられ、豊かな発想を生み出すのかもしれない。

確かに、このようなIT教育プログラムを経験した子どもたちが「自分がおもしろいと思ったことを形にできる人ってかっこいい」と感じるのは、自然な流れだ。さすがITの最先端をいく地域なだけあって、IT教育の進歩は目を見張るものがある。

「日本のIT教育がこのままの状態だと、日本のITは世界にかなわない」と語る渡辺君の言葉に、自分が日本のIT界を引っ張っていくのだという力強い想いを感じ取った。

Geekが子どもたちの憧れに……そのとき、大人はどうする?

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ピスチャー株式会社代表取締役の水野氏は、「日本のIT教育を変えていきたい」と意気込む

『Life is Tech!』を立ち上げたピスチャー株式会社 代表取締役・水野雄介氏のスピーチでは、興味深い言葉が出てきた。

「プロ野球界にドラフト制度があるように、IT界でも一人のスーパーエンジニアを企業が指名するような制度があってもいいと思うんです。また、エンジニアという職種が子どもたちの憧れの職種になってもおかしくないとも思っています。

そのためにも、僕たちで『エンジニアってかっこいい!』と言われるような文化を根付かせたい。実際に、アメリカではスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグといった人たちが若者たちの憧れの存在となっています。

一方、日本ではどうでしょうか。未だにエンジニア=オタクというイメージが強く、子どもたちの憧れの存在とは程遠い気がします。僕たちは、日本でもエンジニアがギークでカッコイイと思われ、憧れの対象になるような環境づくりに協力していきたい。そのために、『Life is Tech!』を発足しました」

これは、今まさに企業で働く大人たちにとっても見過ごせない内容だ。渡辺くんを筆頭に、今後はこうしたIT教育プログラムを通して成長する中高生がIT業界をけん引していくだろう。そうすると、小飼弾氏や中島聡氏のような “スーパープログラマ”は、今後のIT業界ではスタンダードなエンジニアになっていくかもしれない。

語弊を恐れずに言うと、何もしないままのほほんと働いているだけでは「英語もできない上司の言うことは聞けない」というところがあるように、「企画から開発まで一人でできない上司にはついていけない」といった状況に陥ってしまうかもしれない。

では、20代30代のエンジニアが今すべきこととは、一体どんなことなのだろう。

「会社に養成されたエンジニア」では、もう戦えない時代に

前述の「大人エンジニアが今やるべきこと」のヒントは、株式会社ジークラウドの渡辺薫氏をモデレーターとして、MOVIDA JAPAN株式会社代表取締役の孫泰蔵氏、面白法人カヤック代表取締役CEOの柳澤大輔氏、NPO法人CANVAS副理事長の石戸奈々子さん、サイバーエージェント・ベンチャーズ投資家の佐藤真希子さんをパネリストとして迎えて開かれたパネルディスカッションにも転がっていた。

ここで注目したテーマは、ずばり「企業から見た、今求められるIT人材」。

孫泰蔵氏、柳澤大輔氏は、このテーマのなかでこう答えている。

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「スピード感を持って積極的にアイデアを形にしていくことが大切です」(孫氏)

「昔は大規模な開発が前提だったためプロジェクトマネジメントできる人が求められましたが、今はOSSやAPI、クラウドなどの発達によって、誰でもすぐ開発できる環境がそろっています。そのため、すぐに手を動かしてどんどん作り出していける人が求められています。アーティストのような、オリジナリティあふれるサービスを創造できる人が求められているのです」(孫氏)

「カヤックの採用でも、新卒採用のうちの大半が中高生だった時期にHPを立ち上げていたりします。”会社に養成されてエンジニアになった人”よりも、そうした”生まれながらのエンジニア”の方が強いですよね、やっぱり。図工の授業なんかでも、先生から言われた通りにモノを作る人より、想像力を働かせて自分が作りたいものを勝手に作っちゃうくらいの人が面白いじゃないですか。そういう人は、モノづくりの仕事が天職だと思います」(柳澤氏)

つまり、自主性を持って自ら考えたアイデアをカタチにできる人材が求められるということだろう。考えるだけ、作るだけのエンジニアは、このまま行くと時代遅れとなってしまうのだ。

カヤックの柳澤氏は、こうも話している。

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「ギークにかっこいいイメージを与えるために、PVをつくってみるのはどうでしょう」(柳澤氏)

「海外の学生にも負けない、日本特有の学生たちが持つポテンシャルは、日本の文化である多数のアニメやマンガに触れられる環境にいることです。それらは非常に優れたデザイン・ストーリーを持っているため、わたしたちに多くの想像力や発想力をもたらしてくれます」

そして、「彼らのポテンシャルを見抜くには、彼らの作るモノを見れば分かる」とも付け加えた。

確かに、自分ができることややってきたことをいくら口でPRしても、そこにモノがあるのとないのとでは説得力も違う。逆に、モノを見ればその人の持つスキルや趣味趣向までも読み取れる。

デジタルネイティブと呼ばれるTeenなGeekたちが台頭する前に、大人たちの今すべきことが、じわじわと見えてきたような気がする。

まずはどんなものでもいいので、自分の作りたいモノをカタチにしてみるのもいいかもしれない。孫氏や柳澤氏の言うとおり、自主的に行動してみた先に、自身のキャリアを照らす一筋の光が見えそうだ。

取材・文/小禄 卓也

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