エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

[コラム] カヤックLT交流会で、ヒットアプリ開発者のちょっと変わったアイデア発想法に迫る

公開

 

もし、あなたが企業の新規事業チームのメンバーとして、「スマートフォン上で新しいプラットフォームとなるようなアプリを開発する」という使命を担ったとしたら、どんなアプローチでアイデアをひねり出すだろうか。

業界の内外から一目置かれる独自アプリ・サービスをリリースしてきた面白法人カヤックには、そんな重大な使命を課せられたチームがある。それが、新規事業チーム、『BM(ブッコミ)』だ。

カヤック鎌倉本社1Fのカフェ『Bowls』で行われたイベントには、多くのアプリ開発者が詰め掛けた

カヤック鎌倉本社1Fのカフェ『Bowls』で行われたイベントには、多くのアプリ開発者が詰め掛けた

彼らが生み出したものは、『ナカマップ』、『Reengo』、『うんこ演算』、『こえ部』、『EncountMe』など多岐にわたる。どれも、カヤックを代表するヒットアプリである。

これらのアプリを開発した同チームに所属するエンジニアたちは、一体どんな発想でヒットアプリを生み出してきたのか。

8月4日、カヤックが主催する『スマートフォンアプリエンジニアLT交流会』に登壇した『ナカマップ』開発者の大塚雅和氏、『Reengo』開発者の村瀬大輔氏、『EncountMe』開発者の堤修一氏が、その”発想の源”をこのように語った。

「新しい技術で、新しいコミュニケーションの形を作る」

「僕は、すでにある技術を使ってヒットしそうな新サービスが出ても、奮い立たないんです」というのは、大塚氏。彼は、「圧倒的に新しい体験」を生み出せそうな技術に強い興味があるそうだ。

「例えば、ネットオークションってすでにさまざまな企業が展開していますよね。そんな中で、既存のオークションの概念をガラっと変えてしまうかもしれない技術が出てきたらしびれちゃいます」

そんな彼が、新しい技術と向き合う時に注意していることは、新技術を節操なく何でも試すのではなく、その技術を俯瞰的に見て、どんな特徴があってどんなサービスに向いているのかを分析した上で扱うということ。

「新しい技術を何でもかんでも試すのは、僕の役割じゃないんです。村瀬くんのようなアーリーアダプターな人が記す、新しい技術に関するフィードバックを見て、僕はその技術でどんなことができるのかを理解できる。そこから、どんなサービスが開発できるのかを考えられるのです」

「コップすら将来廃れちゃうんじゃないかと考えてみる」

typesterとしても、業界では知名度が高い村瀬氏

typesterとして知られる村瀬氏はPerlの普及活動も行っている技術者としても有名だ

大塚氏が「アーリーアダプター」と評する村瀬氏も、大塚氏と同様に「世の中の常識を少し斜めから見る」点を重視しているという。

「例えば、コップって、いつまでたっても変わらずに飲み物を入れる容器として使用されているけど、実はコップじゃなくてもいいんじゃないかと考えたり。今常識と思われているものも、いつか廃れる可能性がないかどうかを考えています」

もともとSFが好きだという村瀬氏。「現実世界では考えられないものがSFの世界にはあり、またそれが数年後に現実世界で生まれているかもしれない」からこそ、面白いのだそうだ。確かに、現実世界で携帯電話が発明される以前から、あるSFの世界ではすでに描かれていた。

そんな、今の常識を覆すことができるのが、村瀬氏にとって「技術」なのだ。

「このBMチームに多いタイプかも知れませんが、僕は新しい技術やサービスをベースに新しいサービスを開発することが多いですね。『Reengo』に関しても、Facebookを自分で使い始めたころに浮かんできたアイデアでした」

結果として、『Reengo』はFacebookを使って電話できるサービスとして、従来のIP通信を使う電話の概念を変えるアプリとなっていた。

「僕は、他人に良いサービスを生み出されるのがとても悔しいんですよ。何で僕が思いつかなかったんだろう、と。だからこそ、自分が世の中に新しい価値を生み出してやろうという思いも人一倍強いと思います」

今そこにない新しいものを生み出すのは、もしかするとこれくらい気持ちが強いエンジニアなのかも知れない。

「人のアイデアでも”乗っかって”自分のモノにする」

最後に紹介する堤氏が『EncountMe』を作り始めたのは、カヤックの社長の思いつきがきっかけだという。

「去年の10月に、『iPhoneのすれ違い通信ってないの?ないなら作ってよ』と、代表である柳澤(大輔氏)が僕に言ってきたんです。社長のアイデアって、(思いつきのまま発言するし、その量も多いため)カヤックでは日ごろスルーされがちなんですが(笑)、僕はその時面白そうだなと思って企画を始めました」(堤修一氏)

そこから、カヤック名物の『旅する支社』inベトナムでほかのメンバーと企画を詰め、開発し、2011年1月にリリースする運びとなったのが、『EncountMe』だ。

「自分が面白いと感じたもの以外作らない」という堤氏。それが例え、ほかの社員から出たアイデアだとしても「すぐに乗っかっちゃう」そうだ。

「●●に関してちょっとブレストしたいんだけど」とどこからともなく声が上がり、その呼びかけに集まるメンバーと共に15分ほどブレストする。

そんな、カヤックにとって”日常的な風景”が、堤氏にとっては絶好のアイデア発掘の場なのだろう。

社長の思いつきの言葉でも、「すれ違い通信で自分のログを残せる」ということに強い興味を抱いたという堤氏。現在温めている企画も、メンバーのアイデアから膨らませたものだそうだ。

今の常識とされていることに対して疑問を投げかけてみたり、コミュニケーションの新しい形を模索してみたり、仲間の企画から発想を膨らませたり……。

“新しいプラットフォームを生み出す”という一つの目的に対して、一人ひとりが異なるアプローチでアイデアを形にするため、リリースされるアプリにもバラエティー感があふれているのだ。企画を立てる際は、この3者3様のアイデア発想術を参考にしてみては?

取材・文/小禄卓也(編集部)