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[連載:社カツ! チームラボMake部] Makeで火がついたエンジニア魂が、本業でもシナジーを生み出す

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エンジニアにとってのモノづくりが本能のようなものだとするなら、あらゆる制約から離れたモノづくりこそ、エンジニアの魅力を再確認する絶好の機会になるのではないか。この連載では、サークル活動などを通じ本業以外の開発を純粋に楽しんでいるエンジニアたちと、そんな彼らの「業務外の社内活動=社カツ」を支援する企業に取材を敢行。一般的な「ワークライフバランス」の枠には収まらない、エンジニア独自の幸せのあり方を探っていく。

「『Make』という雑誌があるのをご存知ですか?」

チームラボでマーケティングプランナーを務める高須正和氏が取り出したのは、オライリー・ジャパン社が発行する電子工作のDIY雑誌『Make: Technology on Your Time』日本語版。本家はアメリカだが、2006年からは不定期ながら日本語版も刊行されている。日本でもここ数年人気が高まり続けている電子工作ブームの火付け役のひとつになった雑誌だ。

「この雑誌の名前を冠したイベントが東京でも開かれているんですよ。それが『Make: Tokyo Meeting』。このイベント、Makeに出展したい有志がチームラボ社内で集まったのが、『Make部』なんです」

チームラボの社員がMakeの見学に行ったのは第2回からだが、回を重ねる毎に見学に行く人数が増え、「出展したい!」という人数が増えていったのだという。

2~3人のMake見学から、今では40名ほどがMakeに参加

Makeに出展するチームラボ・高須氏

Makeに出展するチームラボ・高須氏

「実際にMake部が出展を果たしたのは、2009年11月開催の第4回からなんですけど、2~3人の同僚と第2回のMakeを見に行ったあと『ムチャクチャ面白かった!』って仲間に話してまわったんですよ。そしたら興味を持つ人が増えて、第3回は7~8人ぐらいが見に行ったのだと思います。実際に見てみると、やっぱりみんな『面白い』と。だったら次回こそは自分たちも出展しようということになって、実際に作品を作る人、ブースの店番などでサポートする人、あわせて20人ぐらいが集まり、出展することになりました。」

Make部の発起人である高須氏だが、はじめての出展以来、一貫して出展メンバーのサポート役に徹している。「自分が作るより、社内の人が作ったものを説明してる方が楽しい」と考えているようだ。

「Makeのイベント自体は大好きですが、僕本人は何か作るのが得意ではないので、何らかの形で出展したいなーと考えたときに、集まってグループで出そうと考えました。こういうイベントに出展するのって意外と手間がかかるもので、一人で出展すると、他の人の作品を見て回ることもできません。もっと言うと、トイレやごはんも一苦労になってしまいます。それなら仲間を集めて出展し、交代でブースに入るようにすれば、よりMakeを楽しめるし、作品を作っていなくてもイベントに参加できて楽しいんじゃないかと思ったのです。普段はディレクターをやっているせいか、自分で作るよりもエンジニアのサポート役が得意なので苦にはなりませんでした。」

初回の出展以来、チームラボ社内でMakeに参加する仲間は増え続け、これまで、延べ40人ほどの社員がMakeイベントにかかわるまでになった。全社員約200人のうちの20%を占めるというのだから、かなりの数にのぼる。

“個性”が光るモノづくりのオンパレード

「それではいくつか実際に展示した作品をご紹介しましょう。まずこれは『ヘブンズドア』(開発:山本遼)という作品です」

高須氏が操作するモニター画面上に表示されたのは男子トイレの画像と、chromeの拡張機能。

「今、チームラボのオフィスには男性社員100人以上に対して男性トイレの個室がたったの2つしかないという状況がありまして、タイミングが悪いといつも<使用中>ということがよくあるんです。それで席についたまま空室確認がしたいというニーズを汲んで生まれたのがこの作品です」

当初は人感センサーとArduino、ノートPCをトイレ内に配置。信号を無線LANでサーバーに送信しFirefoxのブラウザにアドオン表示する仕掛けを試したところ、目論見通り大成功。しかし、いったん火がついたエンジニア魂はそれに満足することはなかったようだ。

「山本が『トイレにPC置くとか必死すぎて負けだろ……』と言い出しまして(笑)。別のエンジニア(@nazoking)が『マウスでいけんじゃね?』などと言い出したので、どうするのかと思ったら、ドアの上部に無線マウスを張り付け、開閉のたびにクリックされるよう仕掛けたんです。当初よりずいぶんシンプルなシステムになりましたね(笑)。もちろんMakeでもこの顛末を含めて来場者にプレゼンしたところ、非常にウケましたし、チームラボはテクノロジーを使ったオフィス内装も提案しているので、実際に提案書の一部に組み込まれたりしました」

エンジニアが自発的にモノを作り、更に面白いアイデアを加えて改良し共有する。 Makeに出展したほかの作品もそうだが、日常業務においてもエンジニアの自発的な活動を良しとする環境が同社にはある。モノづくりに対する無邪気さと、現代のネットワーク文化が醸す独特のユーモア感覚が融合した風土といえばいいのだろうか。いずれにしてもMake部が生まれたのも、こうしたユニークな社風があってこそのものだろう。

チームラボとMake。”似たもの同士”がシナジーを生み出す

「確かにチームラボとMakeのカルチャーは相性が良いと思います。もともとモノづくりを目的としている会社ですし、モノづくりが大好きなエンジニアが集まっていますから。社内で誰かがはんだ付けしていたり、何か面白そうなことをしたりしているのを察知すると、みるみる人が集まってくるってことは日常茶飯事ですからね。オフィス内で何か作ることを、注意する人なんかいません」

全員が自主参加で、各々の作りたいものを作ってはMakeに出展している。出展中の、純粋に楽しんでいる姿が印象的だ

全員が自主参加で、各々の作りたいものを作ってはMakeに出展している。出展中の、純粋に楽しんでいる姿が印象的だ

モノづくりを愛する社風が生み出したMake部。もちろん、一社内サークル活動であり日々の業務とは一線を画しているが、ここでの活動から商品として世に出たものもあるというから驚きだ。

「最近のプロダクトでは、ハンガーにかけられた洋服を手にとると、一番カッコ良く見えるコーディネートをディスプレーに表示してくれる『チームラボハンガー(TEAMLAB HANGER)』が人気なのですが、代表の猪子(寿之氏)も、インタビューで「電子工作のブームが、このプロジェクトの実現を後押ししたかも知れません」と話していました。特に最近になるほど、展示や店舗演出など、Webだけでない実空間を対象にする仕事が増えてきましたが、チームラボはもともとMake部に限らず、プログラムにしても電子工作にしても、業務外で自分の欲しいものを作っていると、それが仕事につながることが多い組織だと思います」

メリットは業務の広がりだけではないという。高須氏は続ける。

「リアルイベントを対象にした活動なので、実際に会う人の輪が広がったことも大きいですね。アイデアを形にして人前で発表することで、来場者の反応を感じられるのも楽しいですし、子供たちからキラキラした目で見つめられるのもうれしいものです。Makeを通じて出会った人に勉強会やイベントに誘われたり、Makeへの参加を通じて優秀な人の採用に結びついたことも1人や2人ではなかったと思いますよ。エンジニアにとってはスキルを伸ばすきっかけにもなりますし、アドレナリンが出るのでストレス解消にもなりますしね。ただし睡眠不足にはなりますが(笑)」

テクノロジーやアート方面からも注目を集めるチームラボ。強い引力で人を引き寄せる企業には心底モノづくりを愛するエンジニアが集まっているのだ。

取材・ 文/武田敏則(グレタケ)