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[コラム] クラウド時代のシステム開発で引く手あまたの「1人3役SE」になる方法

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クラウド・コンピューティングやユニファイド・コミュニケーションの進展によって、システム開発の現場では「2 in 1」、つまりネットワーク構築と業務アプリ開発の双方に精通したエンジニアが求められる――。[コラム] 低迷続く受託開発の現場でニーズ急騰中!! 「2 in 1」エンジニアのナゾで、リアルゲート代表の平沼健氏は「次世代型SE」のあり方をこう指摘した。

しかし、口で言うほど、「2 in 1」エンジニアになるのは容易ではない……。読者の中には、そう感じる人もいるだろう。一般的なSI案件は分業が当たり前とされ、ネットワーク構築もモノによって100人月を超える巨大プロジェクトになることが多々ある。そんな環境では、一人のSEが領域横断で担当していくためのスキルを身に付けることはできないからだ。

これまでの開発環境を考えれば、「2 in 1」を目指すのは机上の空論でしかないかもしれない。

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株式会社リアルゲート
サービスマネジメント統括本部
テクニカルパートナーセクション
開発グループ
橘 直樹氏
エンジニア歴14年のベテラン。システム開発会社で業務系のシステム開発に従事し、フリーランスを経て2010年にリアルゲート入社

とはいえ、従来型の開発案件が縮小傾向にあるのは、もはや否定のできない事実。顧客ニーズやシステム開発のスタンスが変わりつつある中、どう適応していくかを本気で模索していかなければならないのも、また事実なのだ。

では、実際に「2 in 1」のスキルが求められる開発現場に身を置くエンジニアは、どんなプロセスを経てスキルアップを図ってきたのか。

今年に入ってから、大手ネット企業のインフラ統合プロジェクトに入って陣頭指揮を執る橘直樹氏は、約15年のキャリアの中で、リアルゲートへ入社するまではあるSIerで大手通信キャリアの課金システム構築プロジェクトなどをリードしてきた。「最初の10年あまりはアプリ開発寄りで経験を積み、ここ数年はネットワーク構築のスキルを磨いてきた」という。その理由は、システム開発において起こりがちなギャップに問題意識を持ち始めたからだ。

“ワンストップ受注”を一人でも回せる技術知識が必要に

「通信・ネットワーク分野とアプリケーション開発分野が分断されていることで起こる問題は、前職のSIer時代からたびたび目にしてきました。特に顕著だったのは、何か技術的なトラブルが起こったときです」

システムの規模が大きくなればなるほど、システム設計と開発はA社、ネットワークインフラはB社というように別の会社が担当するケースが多い。そのため、ひとたびトラブルが発生すると、A社もB社も互いの技術分野に疎いため、現場レベルでは問題の発生箇所を切り分け、特定することがなかなかできないという事態に何度も遭遇したという。

そこで8年前に独学で『ORACLE MASTER Platinum』を取得し、データベースのプロとしての道を歩もうと考えた時期もあったが、今では新卒時にやっていた業務系開発の経験も活きているという。顧客からの発注の形態が変わり始めているからだ。

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業務系開発では担当別エンジニアが顧客先に大挙して押しかけることも多かったが、今はそれもスリム化の傾向にある

今担当しているプロジェクトは、顧客企業が複数展開しているWebサービスのラインごとに構築されていたインフラを、統合管理していくためのもの。そこでは、インフラのみならず、データベースや別々に動いていたアプリの知識も必要とされる。

「まさに一人フロント、一人プロマネ、一人プラグラマーの3役(笑)。コスト削減、開発のスピード化を求めるお客さまが増えているので、ネットワークの設計業務から入って、設計、構築、運用・保守までの工程を一括で発注したいという要望が活発になってきていることの表れだと思います」

こうした”ワンストップ受注”を回していくためには、やはり「2 in 1」エンジニアの存在が不可欠となる。橘氏が勤めるリアルゲートでは、こうしたエンジニアを育て、組織化することも視野に入れて社内外の技術者育成を行っているが、橘氏いわく「スキルはもちろん、仕事のスタイルにも変化が求められている」と感じている。

 (※橘氏がスキルアップのために受けたリアルゲートのトレーニングサービスはこちら )
 

「2 in 1」時代の到来は、若手にとってむしろチャンスになる

「先ほど述べたように、最近ではマネジメントから開発まで一連の流れを一人のエンジニアに任せようという案件が増えているので、プロジェクト形態は縦割りではなく横割りになります。それぞれのエンジニアが自分の担当分野のマネジメントをしつつ、自ら手を動かしながら、ほかのメンバーと協調するプロジェクトの方が、スピード感をもって開発できますから、そういう要望が増えているのだと思います」

これまでは、幾多のプロジェクトで下積みを経験してからプロジェクトを束ねるマネジャーに昇進し、開発業務から卒業していくというのがエンジニアの一般的なキャリアパスだった。しかし、効率化、スピード化、低コスト化がより一層求められるこれからのプロジェクトにおいては、PMでありながら作り続けることが必要になるケースも増えてくる。

それが逆に、新しいテクノロジーやトレンドに敏感な若手にとってのチャンスになるのではないかと橘氏は考えている。

「今後は企業のシステム開発も、スマートフォンやタブレット端末など新しいクライアントへの対応や、ソーシャルメディアのようなWeb媒体との連携が求められるはずです。ですから、それらを早いうちから使いこなしている若手は有利でしょう。それに、Webアプリは業務系に比べ、オープンソースなどを使って自作するのも比較的簡単ですから、そこで独学でスキルを磨いておくこともできる。実はわたし自身、前からWebアプリを趣味で作ったりしながら、アプリ開発に関するノウハウを学んでいました」

インフラ構築から、開発、運用・保守までを一括して受注できる会社に移って腕を磨きつつ、それでも身に付かない技術分野に関しては自作しながら学ぶ。資格取得に頼らなくても、「2 in 1」エンジニアになるためにできることはたくさんあるわけだ。橘氏も、「まずは動き始めてみることが大事だし、そのための環境はネット上にたくさんある」と話す。

新世代SEとしての道のりは、決してたやすいものではない。しかし業界全体をとりまく閉塞感を打開するには、結局のところ「個人としての新たなチャレンジ」が欠かせない。将来に向けた第一歩をいち早く踏み出すためにも、その「土台」となる職場環境探しと、「補足」となる個人の取り組みを今すぐ始めた方がよさそうだ。

取材・文/武田敏則

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