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[対談:家入一真×鶴田浩之③] 単なる思いつきを良いサービスに昇華させる、「2段熟成」のやり方とは?

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プロフィール

株式会社ハイパーインターネッツ  代表取締役
家入一真氏

1978年福岡生まれ。22歳の時に合資会社マダメ企画(後の株式会社paperboy&co.)を設立。個人向けレンタルサーバー事業『ロリポップ!』などで成功を重ね、ジャスダック上場。2009年には株式会社パーティカンパニーを設立してカフェやレストランを展開。2011年より現職。マイクロ・パトロン・プラットフォーム『CAMPFIRE』をリリースして話題に

プロフィール

Labit inc.  代表取締役 CEO  慶應義塾大学環境情報学部在籍
鶴田浩之氏

1991年長崎県生まれ、20歳。2004年、13歳からWebサービスを作り始め、16歳で起業、独立。今年3.11東日本大震災の夜、停電中の避難所で『prayforjapan.jp』を設立、600万人がアクセス。講談社から『PRAY FOR JAPAN – 3.11 世界中が祈りはじめた日』を監修/出版。2011年、株式会社Labitを創業

―― 前回の対談では、お2人がどんな風にWebサービスのアイデアを発想するのかを伺いました。2回目の今日は、生まれたアイデアをどうやって形に落とし込むのかまでお聞かせ願えればと思います。

家入 じゃあ、まずは鶴田くんの会社がリリース準備をしている新サービスの話から始めようよ。どんなサービスなの?

鶴田 9月にβ版をリリース予定なので詳しいことはまだお話できないのですが、今回も新しいライフスタイルになるようなものを目指しています。前回リリースしたiPhoneアプリの『すごい時間割』は国内の学生向けアプリでしたが、今回は全世代、そして最初から世界展開を考えているサービスです。

家入 なるほど、なら詳しい内容はリリースを楽しみに待つことにするよ。でも、鶴田くんのことだから、きっと「人と人のつながり」にこだわりがあるんでしょ。

今秋リリース予定の新サービスの概要を説明する鶴田氏。詳しい内容は9月中旬以降LabitのHPでチェックを

今秋リリース予定の新サービスの概要を説明する鶴田氏。詳しい内容は9月中旬以降LabitのHPでチェックを

鶴田 このサービスも人間関係を重要視しています。自分の友人や知り合いをベースに、情報が自然に行き交うようなものを設計しました。似たようなサービスはいくつかあるのですが、どれも使いにくくて。ユーザーの趣味や趣向性から、その人が今必要としている最適な情報をレコメンドすることができます。

家入 なるほどね。そのサービスの構想はいつ思いついたの?

鶴田 4月に会社(Labit Inc.)を立ち上げて、今まで3回くらいしか訪れたことのない恵比寿にオフィスを借りたときです。地域に関することを、グループ内でシェアするもっと効果的な方法はないかな、と思ったんです。「まずは会社の仲間たちだけで使えるプロダクトを作ろう」ってことになり、2日でプロトタイプを作りました。

―― 前回の対談でもお話のあった、「まずは自分が欲しいものを作ってみる」のパターンですね。

鶴田 はい。「アイデアの原型を思い付いたら、まず一人で熟成させる」と前回お話しましたが、この時も2週間くらい熟成期間をとってあれこれ妄想してから「じゃあ作っちゃおうよ」と。プロトタイプを作ってみると、一気に可能性が広がりました。人に話しながら、その反応を受けてまた一人で考え込んで、みたいなことを繰り返しながら煮詰めてきました。

家入 カレールーじゃないけど、「2段熟成」なんだね。

鶴田 (笑)。僕の場合、アイデアを形にしていくまで2段階あって、最初のアイデアを一人で熟成させてプロトタイプを作るまでが第1段階。ただ、そこでほとんど作り込んじゃうというわけでなく、ある程度まで熟したな、と思ったらあえていったん”寝かせる”んです。その間に、いろんな人に構想を話したりしながら、もう一回成熟させていく、みたいな。

家入 なるほどね。

アイデア熟成のための「篭る期間」をどう過ごすか?

鶴田氏が起業後の第一弾アプリとしてリリースした『すごい時間割』。学生ならではの発想で生まれた

鶴田氏が起業後の第一弾アプリとしてリリースした『すごい時間割』。学生ならではの発想で生まれた

鶴田 前にリリースした『すごい時間割』なんかもそうだったんですけど、人と話している中で形が定まっていくパターンが多いんですよ。アウトプットの最中にこそ、新しいアイデアが浮かんできます。サービスが完成してみると、全体の半分くらいの機能はそういう時期にでき上がっていたことが多いかもしれません。

家入 僕の場合は、アイデアを形にするときは集中して一気に作っちゃうなぁ。他人が面白そうなサービスの構想を話してくれた時も、決まって「で、それいつ作る?」ってなっちゃうタイプだし。

鶴田 そのフレーズ、確かによく言いますね、家入さん。

家入 それに僕は、作るのに集中している間は人に会わない。数日間は、もう完全に引きこもり状態になるんです。

―― 形にするまでのプロセスや「熟成」のさせ方は違いますが、お2方とも必ず独りになる期間を取るんですね。

鶴田 何だかんだ言っても、何かを作るときは一人で発想を膨らませたり、構想を固めていく時間って必要ですよね?

家入 アイデアを「良いサービス」として形にしていくまでは、一人の時間も、人と話しながらブラッシュアップしていく時間も、両方大切。そういうことだと思うよ。ただし、僕はさっきも言ったように一人になる時間は徹底して人と会わない。本当に誰にも会いたくないモードに入っちゃうんだよね。社会人としてはダメダメなの分かっているんだけど、そういう時期は約束していたミーティングなんかもキャンセルしちゃうの(苦笑)。

鶴田 僕はあまりそういう経験がないですけど、こういうのはありますよ。2回目の熟成期間に、積極的にいろんな世界の人に会おうとするんですが、そうやっているうちに「これも面白そう」、「あれも面白そう」となっていろんなことに顔を突っ込んじゃうんです。そのうち、「あれ、やりたかったことと違ってきてないか?」って、ふと気づいてしまう。

家入 そんなときはどうするの?

鶴田 そうなったらいったんすべての情報をシャットアウトして考え直します。全部リセットしちゃうというか。そして、改めて「僕がやりたいことって何だっけ?」と深く考えて、余計なことは何のためらいもなく断ち切っちゃいますね。

家入 そのリセットタイムが、僕の場合は布団の中なんだな(笑)。こういう期間は特にサービスのアイデアを考えるでもなく、ただただ退屈に過ごすんだよね。

オンとオフの”両極”を行き来しないと「良い形」に仕上がらない

―― 家入さんは、その「引きこもりモード」から、どうやって脱出するんですか?

家入 ウズウズしてくるんですよ、しばらくすると。それまで悶々としていたのに、急に「こんなの作りたい!」となって、また人に会いにいく。僕の場合は、人に会ったり思いついたアイデアを形にしていく時間と同じくらい、退屈な時間が必要なのかもしれない。

テスト受験中の「ヒマな空き時間」が、最もアタマが活性化する時間だったと振り返る鶴田氏

テスト受験中の「ヒマな空き時間」が、最もアタマが活性化する時間だったと振り返る鶴田氏

鶴田 退屈な時間が必要、っていうお話は僕もすごく共感するところがあって。僕は高校時代、期末試験を受けている時がまさにそんな感じでした。けっこう早く問題を解いてしまって、時間が余っちゃう時ってあったじゃないですか。そういう時の20分間とかが、僕にとって最高のアイデア熟成時間で。

家入 へぇ。

鶴田 今思い返すと、そんな時に決まっていろいろやりたいことが浮かび始めて、問題用紙の裏にひたすらサービスプランを書き込んだりしていましたね。

―― 前回の対談で家入さんがおっしゃっていた「制約や抑圧があるからこそ良いアイデアが浮かぶ」というお話に近いですね。

家入 そうそう。

鶴田 思うんですけど、やっぱり人間が一番創造性を発揮するのって、実は一人でぼんやりしてる時なのかもなぁ、って。

家入 うん、頭の中でオンとオフの”両極”を行ったり来たりする中で初めて、「思いつき」が「良い形」に仕上がっていく。だからこそ、「思いつき」は「思いつき」のままにしておかないで、とにかく作っちゃうことが大事になってくるわけだけど。
(次に続く)

 

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>>[対談:家入一真×鶴田浩之④] 愛されるWebサービスを創るには、「何をやるか」より「面白がってやる」ことの方がずっと大切

≪家入氏×鶴田氏 対談第1弾の記事はコチラ≫

[対談①] 面白いWebサービスづくりの基本は、「拝借」と「熟成」の掛け合わせにアリ