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パーティ&ハッカソン『AR三兄弟☆うまナイト』参加者が一夜で産んだWebサービスは、何を”省略”する?【6/15開催レポ】

公開

 

「どうして寝るんですか」

昔、漫画家の手塚治虫が存命のころ、そんなことを言ったとか言わないとか。「寝ていても漫画は描ける」と豪語する同氏ならではの言い回しだが、夜中、普通の人が寝静まった中で、寝ずに黙々と”何か”を作るということは、とても刺激に満ち溢れている。

去る6月15日、AR三兄弟の長男・川田十夢(@cmrr_xxx)氏を迎えて開催されたパーティー&ハッカソン『うまナイト』第二弾の『AR三兄弟☆うまナイト』でも、そんな刺激とワクワクが会場のトーキョーよるヒルズに漂っていた。

今回の参加者は、抽選で選ばれたエンジニア7名、デザイナー7名の計14名。みんなで酒とカレーを嗜みつつ、オープニングを飾った川田氏のプレゼンテーションに真剣に耳を傾けていた。

プレゼン終了後、川田氏が提案した当日の開発テーマは、「省略」。同氏自身がAR(拡張現実)技術を用いて世の中に新しい体験を生み出す時に心掛けているというこのテーマに、20代クリエイターたちが頭を悩ませながらも、アイデアの断片を少しずつ形にしていく……。

それでは、早速ハッカソン当日に生まれた5つのサービス(下記のリンク参照)を紹介していこう。今回は、特別に各サービスに対して川田氏からコメントが寄せられているので、そちらと併せてご覧いただきたい。

徹夜の開発で産まれた5つのサービスが”省略”するものとは?

スマホアプリ『CROSS Line』 - チームホーチミン

合コンアプリ。これを使えば、はじめて出会った男女でも、意外な接点を見つけ出してくれて、お互いの距離を縮めてくれること間違いなし。Facebookからデータを抽出し、お互いが共通する(行ったことのある)場所を解析、その場所の写真と顔を合成して、あたかも一緒に行ったかのように想起させてくれる

【川田十夢氏コメント】 人に斬新な印象を与えたいならば何かしらの省略があった方が良いみたいなこと、冒頭に話したと思うのですが。それで言うなら、このサービスは時間偶然遡れるという、現実には不可能な逆行のプロセスの省略が行われていて、それが素晴らしいと思いました。実戦として使うならば、 あれ?○○さん、以前どこかで会ったことあるよね?
 え?ないですよー。
 え?だって、ほら!
 えー、なにこれ。すごーい。
男+女 (悪い気しない)(というか、もっと話したい)

みたいな使い方がいいでしょうね。即戦力アプリだと思います。

 

『おせっかいおばさん』 - チームB

Twitterのタイムライン上に突然降臨するおせっかいを焼くおばさん。「パンツ」「死ぬ」(仮)など、炎上しそうなワードを独自のアルゴリズムで抽出し、そのつぶやきを察知。つぶやいているアカウントを呼び出して、説教チックなことをすることで炎上を防ぎ、かつ和やかな雰囲気にしてくれる

【川田十夢氏コメント】TwitterのBotって、あんまり人間的じゃないですよね。そこにプログラムでは実現しにくい「おせっかい」と、人間性の集大成とも言える「おばさん」を持ってきたのが、昭和っぽくて良かったです。最後のイメージに、誰か別の人と呼び出されている「おせっかいTime」がありましたが、あれも良いですね。誰かと一緒に怒られると、それは共有の体験であり共犯意識にもなりますから。おばさんって、実は空気読んでますからね。空気の読み方が、若者のそれとは違う。そのニュアンスを有機的に汲み取ったサービスになるならば、ちょっと他にないものになると思います。

 

スマホアプリ『人間電波塔』 - チームC

自分の今聴いている曲を、電波に乗せて自分の周辺エリアにいる友人・知人に聞かせることができる、パーソナルラジオDJアプリ。周波数をコントロールすることで、音楽を届ける距離を調節することも可能。気分はラジオDJか、はたまたゲリラ音楽フェスのオーガナイザーか。予期せぬ音楽との出会いを楽しめるアプリ

【川田十夢氏コメント】 ラジオの周波数ってそもそも不思議ですよね。その不思議なものを距離に置き換えて、よりパーソナルに発信するというコンセプトが正しいと思いました。ここでこんな曲を聴いている人って、どんな人だろう?みたいな感じで、曲への興味が人への興味になってゆくところまで拡張できると思う。あんまり仲良くない人と話す時に、周波数を合わせるのと同じ感覚。だから、コミュニケーションツールとしても捉えやすいと思う。良いアイデア。良いデザイン。良いプレゼンでした。

 

スマホアプリ『気分乗換案内』 - チーム chabudai

落ち込んでいる時、悲しい時。そんなネガティブな気持ちをポジティブに転換するために、「どのくらいの期間、何をすれば良いのか」を提案してくれるアプリ。使い方は簡単。今の自分の感情を選択し、いつまでにどんな感情になりたいかを設定するだけで、「何をどれだけどんな風に」すれば気分を乗り換えられるのかを提案してくれる

【川田十夢氏コメント】 これ、アイデアを聞いた時点で物凄く良いと思いました。アイデア自体に、くっきりとしたサービスの輪郭と遠心力が備わっているこういう強度のあるアイデアが中心にあるサービスというのは、必ず人づてに伝播します。モックアップも実際に使ってみましたが、良い。いまはリンク先が外側につながっていないですが、色々なものへのハイパーリンクが考えられます。あとは、僕のような大人が、どことどこをつなげて有機的に、かつユーザーの斬新を導くかのディレクションをすれば、世界で勝負できるサービスとなると思います。(なんか考えておきます!)

 

来夢来人(らいむらいと)』 - チームオトナ

水商売系専用のコミュニケーションアプリ。お客さんとキャバ嬢などの関係性の中で、一夜の出会いだけどももっと仲を深めたいという人たちに向けたアプリで、写真クイズをお互いに投稿しあうことで仲を深められるオトナ特化型アプリ

【川田十夢氏コメント】 もうこれはプロの仕事、というか仕業ですね(笑)。なんていうか、大人の切実と切望を具体化したニュアンスも、来夢来人のネーミングにうっかり現れている気がします。主題歌を選ぶならば、チャゲ&飛鳥の「ひとり咲き」が良いですかね。なんていうか、大人って実業のことばかり考えてしまいがちですけど、欲望剥き出しにすることで、見えてくるものってありますよね。その好例だと思いました。

 

アイデアの種を見事に拡張してみせた若手クリエイターたち

川田氏は最後に、今回のパーティ&ハッカソンについての感想も寄せてくれた。

「どれもレベルが高い印象です。もう少し時間さえれば、実動できるものばかり。だって、一晩ですからね。正直驚きました。あと、参加してくれた各々が、僕の言葉や思想をしっかり受けとめて、自分自身のアイデアとして昇華してくれていたのが、嬉しかったです。こういった機会を与えてくれたエンジニアtype、よるヒルズ、ボランティアで力を貸してくれた大人のみなさま、そして参加者のみなさま、本当にありがとう。また現実か拡張現実でお会いしましょう。公私ともに長男、川田十夢でした」

川田氏も「もう少し時間さえあれば」と話すように、オールナイトでモノづくりをすることには限界がある。しかし、限られた時間だったからこそ感覚が研ぎ澄まされ、イノベーティブなサービスが産まれたとも言えるだろう。

ここから先、正式なサービスとしてリリースするか、一夜のアバンチュールで終わらせるかは、参加者たちに委ねられた。とはいえ、せっかくの素晴らしいサービスたちがこのままお蔵入りになるのも少し残念な気もする。あのスペシャルな夜の熱狂を今一度取り戻し、ぜひとも正式リリースにまでこぎつけてほしいものだ。

ここで、再びの熱狂を生んだ第二弾・うまナイトは、一旦幕を閉じる。次回は、20代のイケてるクリエイターたちの憩いの場として、秋の夜長に団子でもつつきながら開催できることを願いたい。

取材・文・撮影/小禄卓也(編集部)