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AR三兄弟が『Google Glass』をかけたら、近未来のプロダクト開発がうっかり見えた(らしい)

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今、時計やメガネにAR(拡張現実)のような最新テクノロジーを掛け合わせる「ウェアラブル・コンピューティング」の世界が熱い。その筆頭として注目されているのが、『Google Glass』だ。

グーグル創始者のセルゲイ・ブリン氏が『Google Glass』をかけて「Foundation Fighting Blindness(視覚障害と戦う財団)」のディナーパーティに登場したり、プロモーションビデオが公開されたりと、商品化が現実味を帯びてきているのだ。

「早ければ今年の終わりに登場するか?」と噂される『Google Glass』だが、実際に普及したら、人々の生活にどのようなインパクトを与えるのだろうか。そもそも、『Google Glass』ってイケてるの?

この疑問に答えてもらうべく、日本のAR界の異端児であるAR三兄弟(「春眠暁を覚えず」ということで全員パジャマ姿だ)のもとを訪ねた。

AR三兄弟:(写真左から)
長男 川田十夢(かわだ とむ)氏 [作家、発明、プロダクト設計]
次男 高木伸二(たかぎ しんじ)氏 [映像製作]
三男 小笠原 雄(おがさわら ゆう)氏 [プログラム]

『Google Glass』をかけると、みんな「wikiがっちゃう」?

―― 先日、『Google Glass』のプロモーションビデオが公開されましたが、これを見た率直な感想はいかがですか?

長男 (プロモーションビデオを見ながら)UIがシンプルで良いな、という印象ですね。今までのARって、けっこうノイジーな感じのモノが多かったんですが、『Google Glass』は「網膜の動きを検知して、それを検索するのか写真を撮るのか」というように目的が明確に絞られている。だからこそ、非常にシンプルに仕上げられているんだと思います。三男はどう?

三男 インターフェースがボタンっぽいところが気になりますけど、スムーズに使えたらすごく便利だと思う。レスポンスとか、使用感の分かりやすさとか。一般ユーザーがサクサク使えるまでにどれくらい時間が掛かるか気になりますけど、(プロモーションビデオのように)ここまで使いこなせたらむちゃくちゃ便利ですよね。

プロモーションビデオのポスターを見てチケットを購入するシーンに注目し、「行為の省略」に熱弁を振るう次男

プロモーションビデオのポスターを見てチケットを購入するシーンに注目し、「行為の省略」に熱弁を振るう次男

次男 僕が思ったのは、いろんなものが省略されたな、と。プロモを見ると、壁に貼られてあるポスターを見て、言葉を発するだけでライブチケットが買えるシーンがありますよね。

今だと、ポスターを見て、検索して、販売サイトにアクセスしてチケットを買ってるけど、これはスゲー省略だなと。

長男 省略ということに関して補足すると。ARって、本質的には「省略」の技術なんですよ。一連の行為に対して省略の要素がある。省略の要素が多ければ多いほど、人は驚く。これは僕の予想ですが、その発想でいくと「検索」という行為もARで省略できちゃうから、グーグルはAR技術に危機感を抱いていて、「それなら自分たちで作っちゃえ」と思ったんじゃないかな。

テクノロジーって、ポジティブな面とネガティブな面の両面があるんです。ジャーナリズムは批判すれば良いけど、僕は肯定的に考えたい。だから、想像の中で『Google Glass』をかけてみました。で、実際にかけて生活している姿を想像すると、だいぶ便利になったんですよ。

例えば、街を歩いていて馴れ馴れしく声をかけてくる人や、「誰だっけ?」って思うんだけど実は偉い人なんかに出くわした時でも、『Google Glass』ですぐに検索できるし(笑)。相手にそれがバレて、「お前、今Wikiってんだろ」とか、「Wikiがってんじゃねぇよ」みたいな有機的なやりとりが、自然と生まれてきました。

―― なるほど。妄想でかけてみて便利かどうかを判断するのはおもしろいですね。

長男 技術の中でも、未来をイメージできる技術と、できない技術があります。『Google Glass』はライフスタイルがイメージできるという点で、おもしろいと思うんですよ。

僕は、『Google Glass』は検索窓の延長だと思うんです。例えば、ドラゴンボールのスカウターって、相手の戦闘能力を図ったり相手との距離を測ったりできますよね。あれも検索するツールで、その検索窓がメガネになったというだけ。だから、今までは言葉をマイニングする平面的なものだったけど、スカウターみたいに言葉以外の情報をどうやってインプット・アウトプットさせるかが大きな革命につながる。それがもしこれでできているのであれば、グーグルはすごい。

「グーグルはまじめ担当で、僕らはおもしろ担当」(長男)

―― 具体的な利用シーンとしては、どんなものが考えられますか?

三男 人工知能機能が追加されるっていう情報もあるので、多分自分の声とかも全部データベースに蓄積されていくんじゃないですかね。今は検索しないとネットとつながりませんが、そうなると自分の人格そのものがネット上に存在するようになるかもしれない。

―― いわゆるプロフィールなどのハード情報ではなく、感情や癖のようなソフト情報もデータベースに載っていくかもしれない、ということですね?

三男 グーグルは多分そこまでやっていくんじゃないかな。

長男 (AR三兄弟の中で)映像担当の次男としては、どう思う?

次男 実際にHMD(Head Mount Display、頭部装着ディスプレイ)をかけたことがないので分からない部分も多いけど、気になることは多いですね。利用シーンとは違いますが、メガネをかけているという意識があるからこそ、逆に周辺視野が広くなって、普段から注意して歩くようになるんじゃないかなと思います。

―― では、AR三兄弟が『Google Glass』を作るとして、追加したい機能はありますか?

おもむろにメガネのつるを舐め始める長男と、それを静観する次男

おもむろにメガネのつるを舐め始める長男と、それを静観する次男。ちなみに、パジャマは現在のユニフォームだとか

長男 僕は、女性がメガネを外してつるの先をくわえる仕草が好きだから、つるの先に味を付けてほしいです。日によって違う味が出てたら、みんな舐めるでしょう。それが『Google Glass』の完成形だと言っても過言ではない(笑)。

遊び心を形にするという点においてだけ言うと、グーグルってつまらないんですよね。だから、まずはグーグルが僕らに『Google Glass』をどうおもしろくすれば良いか相談しにきたらいいのに、と思っています。

僕は、『Google Glass』を通して見える世界が、デヴィッド・ボウイだったり宮大工職人だったりと、いろんな人の視点で情報がメガネに映し出されたらすごく楽しいと思うんです。宮大工さんの視点で見る世界では、いちいち継ぎ目に注目しちゃったりして(笑)。

AVでも、『主観AV』ってあるじゃないですか。主観って、物語の中に入った感覚が良いんですよね。誰かに特化した技術・技能を、何でもない人が見れるって、技術の省略の一つで。それを、iPodのプレイリスト感覚で変えられると、だいぶおもしろいのに。

―― こうしてお話を伺っていると、グーグルとAR三兄弟の視点の違いが浮かび上がってきます。グーグルはよりシンプルなライフスタイルを確立していこうとしているけど、AR三兄弟は”おもしろ要素”を大切にするというか……。

長男 僕は、つまらないものをおもしろく見せてくれるのが技術の役割だと思っています。さっき言ったように、プレイリストという概念って突然やってきたものでしょ。技術が発展して、いろんなメディアで誰でも簡単にプレイリストを作れるようになったことで、「あの人はどういうプレイリストをつくるんだろう」という楽しみができた。だから、『Google Glass』でも視覚のプレイリストを作るべきかな、と。

グーグルってまじめなので、そういうアイデアを僕らに聞けば良いのにって、ホント思います(笑)。

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