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ジャパンタイムズとの提携を開始したオンライン英会話のベストティーチャーが、ユーザーを新CTOに迎えた理由

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(写真左から)ベストティーチャーCTOの今佑介氏と、代表取締役社長の宮地俊充氏

「自分が話したいことをトークスクリプト(≒英会話の台本)にする」をコンセプトに運営してきたオンライン英会話サービスの『ベストティーチャー』が、8月7日に新コースの提供を開始した。

英字新聞『The Japan Times on Sunday』を発刊するジャパンタイムズとのコラボ企画として立ち上げた「The Japan Timesコース」は、

【1】毎週日曜日に『The Japan Times on Sunday』が郵送される
【2】翌月曜、紙面の中から5記事がベストティーチャーに「教材」として転載
【3】ユーザーはその中から興味ある記事を選び、感想や意見を英語で投稿
【4】講師がオンラインでWritingの添削を行いつつ、Skype英会話で議論を深める

という流れになっている(The Japan Timesコースの紹介はこちら)。

The Japan Timesコース」Writingレッスンページのサンプル

もともと同サービスは、ユーザーが学びたいテーマに絞って行えるWritingレッスンと、そこで学んだ会話表現を実践するSkypeレッスンの2軸を売りにしてきた。この「The Japan Timesコース」でも、ユーザーは従来の「Writing&Skypeレッスン」の流れのまま、時事ネタを通じて英語の勉強を進めることができる。

月額1万6200円(税込)というコース料金は、他のフィリピン系英会話と比べるとやや高値だが、同社代表取締役社長の宮地俊充氏によると「新聞購読と合わせて英語学習ができる点が歯ごたえがあるため、公開初日から本気で英語を学習したいというユーザーから反響をいただいている」という。

この「The Japan Timesコース」の受講画面などを開発したのは、今年本格ジョインしたCTO今 佑介氏(@kon_yu)だ。実は今氏、ジョインする前はベストティーチャーの有料会員だったという。

なぜ、ユーザーがCTOに就任することになったのか。その経緯を宮地氏と今氏に聞いた。

有料会員だから持っていたビジョンへの共有と課題意識

転職関連サービスを一切介さずにつながった両氏の「出会いのきっかけ」は?

サービスのローンチからおよそ2年。宮地氏がサービスをドライブさせるために英語学習に詳しいエンジニアを探していた矢先、今氏と運命的な出会いをする。

「もともと僕らは面識がなく、最初に会ったのは語学学習サイト『Lang-8』のCEO喜洋洋さんが主催したスタートアップiOS勉強会でした。前の席に座っていた宮地がPCを開いたら、ベストティーチャーの画面が見えたので、僕から『ベストティーチャーのエンジニアの方ですか? 僕、会員です』と声をかけたんです」(今氏)

宮地氏は今後iPhoneアプリのリリースを控えていたため勉強会に参加しており、今氏は趣味で開発していたiOSアプリの勉強に来ていたそうだが、思わぬところで「代表とユーザー」が直接つながった。そして、日を改めて数回会い、ベストティーチャーの改善ポイントや日本の英語教育の問題点などをディスカッションしていくうちに、一緒にやろうという話になった。

今氏はとあるSIerでエンタープライズ向け開発に従事したのち、「楽しい物が作りたい」とスタートアップへ転職。直近まで在籍していたココナラでも、自社サービスの開発に従事していた。iOSアプリ開発&Railsでの開発を得意にしたいと思っていたタイミングでベストティーチャーに本格ジョインしないかというオファーをもらって、心が動いたという。

「ベストティーチャーはこれからiOSアプリを出そうとしており、サーバサイドもRailsで構築している。自分が英語学習に使っているサービスを運用することは、サービス開発で最も必要な『使っている顧客の要望をヒアリングする』ということがスムーズになる。転職に迷いはなかった」と今氏は言う。

では、宮地氏はなぜ今氏をCTOに迎えたのか。聞くと、エンジニアとしての経験値以外に、ある点が大きく影響したと話す。

「今はもともと有料会員だったので、ベストティーチャーのコンセプトに共感してくれている上、『ここを直した方がもっと便利になる』などの意見もたくさん持っていました。スタートアップは、事業のビジョンに共感してくれることはもちろん、自分自身が英語学習者で、自主的に企画・改善を進めてくれる方が欠かせないので、今はピッタリな存在だと感じたのです」(宮地氏)

“ユーザー採用”の注意点は、相乗効果を生みそうか確認し合うこと

当然、ただ馬が合うというだけで迎え入れたわけではない。宮地氏は今氏がCTOをやっていくだけの経験を持っているか、今氏はベストティーチャーのソースコードがどうなっているかを確認した上でタッグを組むことにしたという。

今氏の本格ジョイン前、平日夜と土日を利用して一緒に開発する一方、宮地氏は今氏の経歴を聞きSI時代に開発リーダーをやっていたことを知る。これまた偶然に、共通の知人がいることが後で分かり、その人の後押しもあって2人は手を組んだ。

「サービスを2年以上続けていると、ある程度の“型”ができ上がるので、ユーザー目線ではあまり意味のない機能やUIに気づかぬまま、サービス運営を続けていることがあります。今には、これらの部分を今までの経緯とは関係なく指摘してもらえるので、改善スピードが一気に上がったと感じています」(宮地氏)

「1ユーザーとして『なぜここで画面が3つも遷移するんだ』と思っていたような箇所を自分の手で直していけるので、やりがいがあります。ただ、今後は自分がベストティーチャーを育てていく立場になるので、サービスをグロースさせるための打ち手を客観的に考えながら実装していかねばと思っています」(今氏)

最後に、2人へ「ユーザーを社員に迎え入れる/1ユーザーから社員になる際の注意点」を聞いた。

宮地氏は「その人が入ることでサービスが伸びるだろうという感覚をお互いに持てるかどうか」と言い、今氏は「求職者である自分自身がエンジニアを雇うとしたら、どんなスキルを求めるか? と考え、自分がそれを満たしているのか、足りない場合は満たすよう努力しているのか、入社後に貢献できそうかを考えておくこと」と話す。

スタートアップは個人への依存度が高い世界だからこそ、相乗効果を生みそうかを互いに確認し合う作業が欠かせないようだ。

ともあれ、事業をドライブしていく上で最も大切な「ビジョン共有」という点で、“ユーザー採用”は悪くない手法と言えるかもしれない。

取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)