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飽和するアプリマーケットで、ニッチが勝つには? 200万DL達成のカップル専用アプリ『Between』の改善手法に学ぶ

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“アプリの海”問題もあって、各アプリストア内で注目を集めるのが日に日に難しくなっている昨今。仮に100万ダウンロードを一つの成功基準とするならば、基準を上回るアプリは、コミュニケーション関連やカメラ、ゲームなどとジャンルが限られるようになっている。

そんな中、「カップル専用」というニッチ領域にもかかわらず、今年12月14日に200万DLを達成したのが『Between』だ。

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カップル専用アプリ『Between

韓国生まれのチャットアプリである『Between』は、今では日本やアジア各国などでもユーザーを増やしており、アクティブユーザーは全体の6割前後(月間)もいるという。

日本ではLINE、韓国ではカカオトークのような無料チャットアプリが広く普及している状況で、なぜカップルに特化した『Between』が多くのユーザーに利用されるようになったのか。

そのための「仕掛け」について、本国で事業統括&マーケティングを担当しているエドワード氏と、CTOを務めるYoungmok氏に聞いた。

シンプルさの追求&ゲーム要素の追加で、“サインアップの壁”を壊す

韓国では「カップル必携アプリ」として紹介されることも多いという『Between』。真っ先に浮かぶ疑問は、「カカオトークやWhatsApp(日本でいえばLINE)があれば済む話ではないか?」というものだ。聞くと、韓国国内では「汎用的に使うチャットと大事な人との連絡手段は別にしている人が多い」という調査結果が出ているという。

「実際に、カカオトークは友だちや会社の同僚とのコミュニケーションツールとして、『Between』は恋人同士のホットラインとして使われるケースが多い」とエドワード氏も話す。

ただ、使い分けのニーズはあっても、ニッチアプリが数百万規模で支持されるまでスケールするのは難しい。200万DLを実現するために『Between』が注力してきたのは、アプリを使い始めてもらうための“入り口”と、サービスの肝となるチャットスピードの愚直な改善だ。

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昨日に200万ダウンロードを達成した際に作られた記念写真

まず、利用してもらうための入り口部分について、開発陣が行ってきたのはサインアップとペアリングのプロセス改善だという。

『Between』利用開始までの流れは

①カップルのどちらかが『Between』アプリのDLを薦める
②互いにDL後、どちらかが「ペアリング」を申請(相手の電話番号を打ち込んで申請する)
③申請された相手は、24時間以内に許可するかどうかを判断して利用開始

というもの。①に関しては、女性をターゲットにしたマーケティングで「彼に利用をおねだりする」流れを生み、②と③についてはサインアップページに改善を加えることで、マッチング率≒アプリ利用率を高めることに成功した。

「サインアップ時の複雑さはできる限り排除しつつ、逆にゲーミフィケーション要素を追加したのが奏功しました。例えば③のフェーズでドキドキ感を演出するため、画面上に『24時間の逆算時計』を表示していつまでに許可しなければならないかをビジュアル化したりしましたね」(エドワード氏)

また、②で電話番号を打ち込む際のミスタイプを減らすべく、日韓ほか13カ国分の電話番号を調べて冒頭3ケタ分は自動表示されるように改善。日本では「090」や「080」が使われている携帯電話の認識番号は、韓国では「010」だったりと、各国で異なるからだ。

「コアバリューにフォーカスしないUI/UX改善は意味がないと思う」

こうした配慮と工夫によってアプリ利用までの障壁を下げた後は、チャットの快適さがカギを握る。CTOのYoungmok氏によると、バックエンドのスケーラビリティはもちろん、エラーなく通信を継続させるあらゆる取り組みを行っているという。

「高速チャットを実現するために送信プロトコルをカスタマイズしているほか、スモールパケットでテキストや写真を届ける圧縮技術を裏側で採用したりと、通信品質が悪い地域やパケ放題のない国でも快適にチャットできるように腐心しました」(Youngmok氏)

また、カップルにとって最も恐れる事態であるプライバシー漏洩が起こらないように、テキスト&写真の暗号化も徹底。チャットサービスの生命線である「セキュアに途切れず」を常時体現するためのシステムを構築している。

「これらのシステム改善はユーザー体験を高めるための施策ですが、それをユーザーに体感していただくためのUI改善も同時に行いました(改善前と後のインターフェースは下を参照)」(エドワード氏)

Between-UI

左が改善前のUIで、右が改善後。見やすさだけでなく、「体感としてすぐメッセージが届く」ことを重視したという

LINEでいう「スタンプ」の導入は、非言語コミュニケーションで感情を伝えられるという効果だけでなく、コミュニケーションの即時性を高めるためにも有効ということだろう。

『Between』には、ほかにもカップル専用アプリらしい機能(「2人で作る恋のメモリアルフォトアルバム」、「ラブレター保存機能」、「記念日登録機能」など)があるが、「機能追加よりも、サービスで最も大事な部分を改善し続ける方が重要」と2人は強調する。

「提供するサービスのコアバリューを的確に押さえた施策を打たなければ、グローバルに利用してもらうアプリには育てられません。『Between』のコアバリューは、カップル同士が『一瞬を切り取る』のをサポートすること。この軸をぶらさず、いかに快適にできるかにフォーカスして改善を続けてきたからこそ、“Between バージョン1.0”は国内外でスケールできたんだと思います」(エドワード氏)

2013年以降は、いよいよ「バージョン2.0」として、スケジュール共有やおねだり機能(行きたいレストランをクリッピングするような機能)といった要望の多い機能の追加を検討しているという。

《刺さりそうなテーマにフォーカス→改善(価値の最大化)→機能拡張》というステップが、今でもアプリマーケットで頭角を表す王道であることを、『Between』は体現している。

最後に、気になっていた質問を2人にぶつけてみた。

―― 『Between』を利用していたカップルが別れることになった場合はどうなるの?

「どちらか一方が“別れる申請”をする機能を導入する予定となっています」(Youngmok氏)

「“別れる申請”をしたカップルには30日間の猶予が与えられ、その間に復縁しなければアカウントが消滅する仕組みです」(エドワード氏)

壊れた恋のリブートは1カ月以内に、ということか。

取材・文/伊藤健吾(編集部)