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モノづくりへの強い想いを持つ、仕様書いらずのクリエイターたちが集まる国内No.1スマートフォンゲームプロバイダー『コロプラ』【億単位調達ベンチャー・開発の非常識】

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世の中に新しいWeb(アプリ)サービスを生み続けるWeb系スタートアップたち。本企画では、その中でも今後大きく成長する余地のある注目企業として、1億円以上の資金調達を行った企業の開発スタイルに迫る。自身のブログメディア『TheStartup』も人気を集める梅木雄平氏をインタビュアーに招き、Webサービスやアプリに”魂を込める”開発チームの特徴を明らかにしていく。

連載第4回目に登場するのは、『コロニーな生活』など、位置情報ゲームの開発・運営を手掛けるコロプラ。現在はスマートフォンアプリ事業に力を入れ、カジュアルゲームから本格派のモバイルネットワークゲームまで手掛け、国内No.1スマートフォンゲームアプリプロバイダーとしての礎を築きつつある。

今後も新作アプリを続々とリリースしていくようだ。2012年6月末日現在、社員数は126名。そんな同社を代表取締役、そして開発責任者として率いる馬場功淳氏に開発の裏側を尋ねた。

位置ゲームプラットフォーム『コロプラ

『コロニーな生活』など、位置情報ゲームの開発・運営を手掛けるコロプラ。2003年に馬場氏が『コロニーな生活』の運営を開始し、2008年10月に株式会社化。その後2011年6月にKDDIから約5億円を調達。2011年9月より、スマートフォンに特化したアプリ開発を開始。2012年7月には同社がリリースしたスマートフォン向けアプリが累計で1,000万ダウンロードを突破した。「Entertainment in Real Life」をモットーに、インターネットだからこそ人々が「おでかけ」したくなるサービスを今後も拡充していくようだ

 

創業時から変わらない「仕様書不要のスモールチーム」開発

 

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創業時から変わらないスピード重視の開発スタイルが、コロプラの成長を支えている

「サービス開発に関しては、基本的にはサービス立ち上げ時からやり方を変えていません」

馬場氏は、個人サイトとして『コロニーな生活』を開発した当時と今の開発体制についてそんな風に話す。

「業界常識でもありますが、チームメンバーが増えるほど意思疎通のコストが掛かりますよね。スピードを重視する社内文化があり、開発の効率化を図るためにも、極力少人数のチームでの開発を心掛けています」

同社は、現在は社員約130名のうち、エンジニアが約50名、デザイナーが約25名。プロジェクトごとに、最大10名、最小は1名か2名でチームを組成しているという。プロジェクトによって違いはあるものの、平均するとプロジェクトチームは4~5名で構成され、エンジニア2名、デザイナー2名、ディレクター1名のような体制が多くなっているそうだ。

そんな同社が、開発スピードを上げるために社内で徹底しているのが、「仕様書を書かない」と言うこと。その理由について馬場氏は、「仕様書作りをしている時間がもったいないし、仕様書通りに開発したからといって必ずしも良いものができるとは限らないから」と話す。

「他社さんでは、開発の際に仕様書がないことは驚かれるかもしれませんが、仕様書を基に業務を進めるか否かは社内文化で決められることだと思います。仕様書がない開発に慣れてもらえるよう、当社では入社前にエンジニアに、仕様書を使わないということを事前に伝えています。そのような社内文化を醸成していることもあり、仕様書がないことに対して不満を漏らすエンジニアはいません」

仕様書不要でもスムーズな開発を実現するためには、プロジェクトメンバー同士が密なコミュニケーションを取れるかどうかが重要だという。そこで、社内では職種や部署ではなく、プロジェクトチームごとに席を分けている。

「プロジェクト単位での業務を円滑に進めるために、プロジェクトチームごとで近くの席に座ることを徹底しています。そのため、席替えも頻繁にしていますね。また、社内には立ち会議スペースも複数あり、立ち会議によってスムーズな議論や意思決定が可能です。このように、プロジェクトチームが同じ空間で過ごしているので、仕様書がなくても問題が発生することはありませんよ」

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コロプラ名物の「立ち会議」で、業務効率化とプロジェクトチームの円滑なコミュニケーションをうながす

個人の成長には、今のレベル以上の目標設定が不可欠

馬場氏は、代表取締役でありながらも最前線でエンジニアとしてコードを書いている。代表自身が自ら開発をすることの最大のメリットは、「サービスの開発状況やメンバーの動きを正確に自分の目で判断できる」ことだと話す。

一方で、現場に介入しすぎると、ほかのエンジニアの成長を阻害してしまう恐れもあるため、その辺りのバランスを取ることは常に意識しているそうだ。

「トライ・アンド・エラーを繰り返すことや、意思決定をすることが成長につながります。この部分はすごく難しかったりするのですが、わたしが口を出し過ぎたり、意思決定してしまうことで、メンバーの成長機会をあまり奪わないように心掛けています」

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同社の採用HPを見ても分かるように、現在、事業拡大のため中途採用も強化していると話す

人材育成に関しては、その仕事を通した「成功」を実現するサポートができるよう努めている同社。馬場氏が考える「成長」の定義は、たやすく達成できることに取り組んで成果を残すことではなく、「今の自分のレベルでは少し頑張らないと達成できない仕事」を設定して達成することにこそある。よって、それぞれの人材に適した課題設定が非常に大切であり、最も気を配っているそうだ。

同社における「成功」は、定性的な指標と定量的な指標の2つの側面で見られる。

定性的な指標としては、そのサービスを通してユーザーが喜んでくれているかどうか。これは、サービス内のコメントや、ソーシャルメディアでのユーザーの反応を見て図ることができる。

定量的な指標は、アプリのダウンロード数の伸びや、収益への貢献が挙げられる。この辺りの定量指標が伸びるのは、ユーザーが満足した結果であるととらえられる。プロとしてモノを作る上では、ただの自己満足ではなく、このような指標を満たしていくことの重要性を、社内の共通認識として持っているそうだ。

「コード+α」のスキルセットが、コロプラ流クリエイター

「コードを書く」ということの優位性がなくなってきているため、一般的に「コードを書く存在」であるエンジニアという職種に価値を見出しにくいと、馬場氏は感じている。

「クラウドサービスの台頭など、誰しもが簡単にWebサービスやアプリを開発できる環境が整ってきているため、これからの時代、コードが書けるだけでは通用しない時代になっていくというのは、業界でもよく言われていますよね。だからこそ、コロプラでは『コードを書く』+αのスキルを持つ『クリエイター』を求めたいんです」

同社が求める「クリエイター」の条件は、「モノ作りへの強い想いを持った人」。作りたいモノがあり、開発はそれを実現するための手段としてとらえているような人。

馬場氏自身、中学生の頃にPCと出合って以来多くのモノを作ってきたが、そのモチベーションの源泉は「これを作りたい!」というモノづくりへの熱意だったという。

モノづくりを最優先とするクリエイター的なマインドを持っていれば、開発や企画、プロモーションなどの業務内容に制限を設けるのではなく、作りたいモノのために、自らの得意分野を最大限に活かそうと考えるようになる。「エンジニアであろうと、企画が得意であれば企画をやることもあるでしょう。それが自然だと思いますけどね」(馬場氏)。

例えば円滑にプロジェクトを推進できるコミュニケーション能力の高さや、面白いゲームを思いつける発想力や企画力など、コードを書く以外に何か一つでも得意なことがある人物が、同社のクリエイター像なのである。

モノづくりへの強い想いがあり、素直なクリエイター。コロプラではそんな人材が求められている。現在、グローバル展開を視野に入れ、スマホアプリの開発に本腰を入れている同社の動向に、今後も注目したい。

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社内一面が見渡せるフロアのいたるところで、社内コミュニケーションを活発にする工夫が見られた

 

インタビュアー

フリーランス マーケター
梅木雄平

フリーランスにてWebサービスの新規事業のコンサルティングやマーケティング 、ライティングを手掛ける。VC業界での経験を活かした事業分析や、投資家関連の記事を展開するブログメディア「TheStartup」を主宰。有料オンラインサロン「Umeki Salon」は会員100名突破間近

撮影/小禄卓也(編集部)