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言語系カンファレンス運営陣が語る、カンファレンスやイベントを開催する時に気をつけたい3つのポイント

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「カンファレンスカンファレンス 2013 大反省会」参加者

「カンファレンスカンファレンス 2013 大反省会」のパネルディスカッション登壇者(名前は下に記載)

言語系のカンファレンスやイベントの運営に携わる主催者同士の交流を目的とした「カンファレンスカンファレンス」が、今年5月17日に開催された。当日は「LLイベント」をはじめ、「Japan Perl Association」、「東京Node学園祭」などの主催側からそれぞれ代表が参加。運営側としての課題やその対処方法などについて、活発なディスカッションが繰り広げられた。

そしてさる11月25日、第2回となる「カンファレンスカンファレンス2013大反省会」が六本木ヒルズ森タワーで行われ、「PyCon APAC 2013」、「PHP Conference 2013」、「Scala Conference in Japan 2013」、「LLまつり」、「RubyKaigi」の5団体の主催者代表が集結。国内の言語系カンファレンスがひと段落したこの時期に、それぞれが今年直面した課題や、その解決のためのヒントなどを議論し合った。

【パネルディスカッション登壇者】
(※記事上写真、左から順に)
・モデレーター 今津りこさん
・PyCon APAC 2013 副座長 保坂翔馬氏
・PHP Conference 2013 実行委員長 田中康一氏
・Scala Conference in Japan 2013 事務局 水島宏太氏
・LLまつり 実行委員 法林浩之氏
・RubyKaigi 実行委員長 角谷信太郎氏

その中から、カンファレンスやイベントを開催する際に、あらかじめ考慮しておきたいポイントを以下の3つにフォーカスしてリポートする。

【1】スピーカーの「ドタキャン」が発生しても、無理に穴埋めしようとしない
【2】スポンサー対応や会場手配をスムーズにするなら法人化も一考
【3】Wi-Fi環境や電源の確保が容易な会場を探して手配しよう

【1】スピーカーの「ドタキャン」が発生しても、無理に穴埋めしようとしない

最初に問題提起されたのが、年々ふくらんでいくという参加者の人数とイベントの規模だ。多くの参加者を見込んでキャパシティの大きな会場を手配したり、複数のイベントを同時進行していくことの難しさ、中でもスピーカーやゲストのキャンセルに伴うプログラムの変更をどうアナウンスするかが課題として挙げられた。

特に今年は、外国人ゲストが直前にキャンセルしてくるケースが多かったそう。

「Webでの告知や、当日の会場でどう説明してアナウンスするか、難しいケースでした」と話したのは、PyCon APAC 2013の保坂氏だ。これに対して、同じくキャンセルがあってプログラムの変更を余儀なくされたというRubyKaigiの角谷氏はこう話した。

「ドタキャン」への対応方法をそれぞれの経験から話し合う登壇者たち

「ドタキャン」への対応方法をそれぞれの経験から話し合う登壇者たち

「特に理由を説明する必要はないと思います。ただ、キャンセルが判明した時点でWebで報告するのはもちろん、会場にプログラム変更を記したペーパーを貼っておくなどの配慮は必要でしょう」

この際、キャンセルになったセッションを無理に埋めようと、プログラムを組み替えるなどの変更を行うと、現場が混乱すると角谷氏は指摘。

「当日はイベントをスムーズに進行させるのが最優先ですから、無理にプログラムの穴を埋めようとしない方がいいと思います。休憩を入れるなり、ほかのセッションへ誘導するなどの対処でいいのではないでしょうか」

どの団体も、国内だけでなく海外からもゲストや参加者を募りたいと望むが、外国人を招く場合はその人物の国籍や居住地によって日本への入国の際にビザの取得が必要な場合もある。

その場合、主催者側が招待状を送ってから手続きをするなど、時間や手間がかかる。充分に余裕を持って連絡や確認しておくべきとの反省があった。

また、カンファレンスへの参加を利用して不法入国を疑われることもあったそうで、一般の参加者には参加者自身にビザの取得などを義務づけるべきといった注意点も挙げられた。

【2】スポンサー対応や会場手配をスムーズにするなら法人化も一考

次いで問題提起されたのが、スポンサーとの手続きや会場手配にあたって「任意団体」ではなく「社団法人」などの法人の方がスムーズかどうかという点。

今回集まったカンファレンスは、「LLまつり」以外の4団体はいずれも法人化している。そこで任意団体だった時の経験や課題が提示されたが、確かに企業などからスポンサードを得たり、会場費をはじめ各種経費を精算する時は、法人で会計担当者がいた方がスムーズとの声が多かった。

「任意団体のままだと、企業の予算獲得などでタイミングが合わなくて断念することがあったりと、難しい面もありました。その点では、年間を通して専任の担当者がいた方が、運用は楽になります」(保坂氏)

LLまつり実行委員 法林浩之氏

会場費を先払いするためにお金持ちの個人を運営側に引き入れておくべきだ、という冗談で笑いを誘う法林氏

LLまつりの会計担当は日本UNIXユーザ会(JUS)。30年前に設立された老舗団体のため、イベントやカンファレンスの開催では長年の経験を持つ。そのため、スポンサーとの手続きや会場手配なども、これまで問題になったことはないそうだ。

その上で、「法人であれば、会場費なども請求書を後日いただいて支払いできるのでキャッシュフローの面で楽ですよね。これが任意団体だと、基本的にすべて現金決済。イベントやカンファレンスを初めて開こうという場合は、まずこういった経費をどう手当てしておくか、資金を確保しておくことも必要ですね」(法林氏)

【3】Wi-Fi環境や電源の確保が容易な会場を探して手配しよう

続いて課題として挙げられたのが、会場の問題。ロケーションやキャパシティよりも、今や必須となりつつある「インフラ面=Wi-Fi環境の整備と電源の確保」に各団体が頭を悩ませているという指摘があった。

「参加人数が多いと、全員に快適なWi-Fi環境を提供するのは難しいですね。ここ数年はベンダーに機材を借りて、専門部隊が当日朝早くからスイッチを設けてアクセスポイントを整備します」(法林氏)

電源確保

by wallfort
どうしても電源確保が必要な場合は会場に電源を引く工事を行なう場合もあるのだという

「スピーカーや登壇者には電源を提供しますけど、参加者には基本的に電源は確保できない旨をアナウンスしています」(水島氏)

この状況を改善する一つの手として上がったのが、技術系の大学に交渉をするということ。例えばPyCon APACは、今年の会場を工学院大学の新宿キャンパスで、昨年、一昨年は産業技術大学院大学で開催している。

「技術系の大学の場合はWi-Fi環境も電源も比較的よく整備されています。後は参加人数をカバーできるかと、何かトラブルが起きないかをよく確認しておけばいいと思います」(保坂氏)

以前、PyConでは某企業にWi-Fi環境整備の支援をしてもらったが、なぜか自動販売機の周辺だけつながらないといったハプニングもあったそうだ。

カンファレンスやイベントの開催では、会場の手配と整備がもっとも費用や手間のかかるもの。PHP Conferenceの田中氏は、今年のカンファレンスで1会場だけ鍵の返却が遅れたため、事情説明と謝罪、反省文の提出まで求められたと笑う。

ほかにも、イベント期間中のWeb更新について、PHP ConferenceではデザイナーとUI担当者を置いたところ、意見が割れて逆に困ってしまったそう。一方、RubyKaigiでは運営側・参加側が自由に更新できるようにして成功したなどの報告があった。プログラマーの場合、基本的にWebの更新には興味がないといった本質(!?)論も上がっていた。

技術系カンファレンスやイベントが増えている中、運営は“うまくいって当たり前”と思われがちだ。これからイベント開催を検討している人たちは、今回、出席者たちが率直に語ってくれた教訓を踏まえて、少しでもスムーズなイベント運営に活かしていただきたい。

取材・文/浦野孝嗣 撮影/佐藤健太(編集部)