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[連載:Data Scope] 震災による約8万もの雇用喪失、僕らにできる貢献は「スマート事業」の拡大かもしれない

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3.11から約1カ月が過ぎ、仮設住宅の設置などで徐々に進み出した被災地域の生活復旧。それでもまだ、未来を覆う黒い霧はまだまだ晴れない……。

問題の一つは、地震により引き起こされた、被災地域の雇用喪失問題だ。厚生労働省調べでは、4月14日時点で宮城、岩手、福島の3県にあるハローワークに仕事を失った被災者から約9万9000件もの相談が寄せられているという。

シンクタンクの野村総合研究所が4月8日に発表した『震災による雇用への影響と今後の雇用確保・創出の考え方』でも、被災地域で1年以内に転職を余儀なくされる従業者数は推計で約1万6000人。6年後の2017年までで推計すると、職を失って地域外への転出を強いられる従業者数は8万2000人までふくらむと見込まれている。

中でも、各種製造業に従事していた人たちは、工場が閉鎖したり電力不足で稼働できなかったりと、震災の影響をモロに受けている。

同調査によると、震災から6年後までに予測される「従業者数増減率」は、マイナス30.0%とトップクラスの減少率。被災地域における製造業の想定従業者数は約12万7000人いるとされているため、製造業だけでも約3万8000人もの人が職を失うことになる。

また、情報通信業でも、これまで8658人いたとされる想定従業者数のうち、震災1年後までに7.3%、6年後までに13.1%の人が職を失う可能性があると推計されている。これは、現状被災地域に5万人近くいたと見られる運輸業従事者の減少率と同じ割合であり、震災以降需要が高まりそうなイメージすらある情報通信業も、厳しい局面に立たされていることが分かる。

製造業は、震災前の「復元」だけでは雇用を生み出さない

野村総研では、合わせて「被災地域における雇用復興の考え方」についてもレポーティングしているが、とりわけ製造業は「震災前の産業・雇用の『復元』を目指しても本質的な課題は解消されない」と示唆している。

その理由はこうだ(以下、同レポートから抜粋)。

需要者側からの支援が期待できる大手メーカーの下請け工場等、一定の競争力(技術的優位性等)を持った企業を除くと、他地域の競合企業にとって替わられてしまう恐れがある。特に、需要が減少しつつある製品の場合は、他地域の競合企業も余剰生産力を抱えている場合が多いことから、被災地域の企業にとって一度失った商圏の回復は困難となる可能性が高い。このような状況下では、被災地域での雇用は減少する可能性が高いと考えられる。

つまり、単なる「復元」では雇用の回復も困難ということだ。被災地の製造業従事者にしてみれば、何とも受け入れがたい現実である。

ならば、被災地域の製造業従事者たちは、職種転換を選ぶ、もしくは他地域への移住によって職を得るしかないのか。短期的にはそうせざるを得ない人もいるだろうが、野村総研のレポートにはわずかな光明も記されている。

それは、新機軸としての”新産業の創出”による雇用増加だ。ここに、各種エンジニアにしかできない支援の道がある。

次世代クリーンエネルギー事業で新しい技術者採用を生む

1995年に起きた阪神・淡路大震災の後、神戸市では神戸医療産業都市構想懇親会なる組織が設置され、後に復興特定事業として国に認定されている。その結果、多くの関連施設の立地が推進されて、2010年までに医療関連産業の立地が201件、構想関連の雇用者数は約4100人に達しているという。

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From *都* 

風力発電のようなクリーンエネルギー事業の拡大・普及が、被災地域に雇用を創出する大きな支えになるかもしれない

これと同じことが東北地方をはじめとした被災地域でも行われれば、新たな産業が雇用を後押しする可能性が出てくる。そして、野村総研がその柱として推奨しているのが、「クリーンエネルギーの開発・生産拠点としての再生」である。

昨今の環境問題を考慮して、震災が起きる以前から関係各社が進めてきたクリーンエネルギー事業や、それをサポートする立ち位置にあるスマートグリッドなどは、各種製造業やIT関連企業の技術力が必要不可欠な分野だ。

世界トップクラスのシェアを誇る太陽光発電パネルを駆使して、世界のソーラー・カンパニーとして発電システムなどの開発に社を挙げて取り組みはじめたシャープ。日本発のスマートグリッドシステムを構築して海外展開を図るべく立ち上がったフューチャーデザインセンターには、SAPジャパンや日本ヒューレット・パッカードといったシステムベンダーが参画。全世界での取り組みとして、エネルギー管理最適化などを実現する『Smarter Planet』を推進している総合ITベンダーのIBMなどなど……。

有名どころを挙げるだけでも、次世代エネルギー事業やスマートグリッド事業を推進している企業は枚挙にいとまがない。

専門家たちの間では、もともと「技術は一級品、残る課題はそれらを集約してシステム化すること」と言われてきた日本のエネルギー関連テクノロジー。これらをいち早く事業化していく一助となることが、テクノロジー企業やエンジニアにしかできない、とても重要な復興支援の一つなのだ。

取材・文/伊藤健吾(編集部)