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[世界的DBAアレックス・ゴルバチョフ氏に聞く 1/2] DBの仕事は、エクストリームスポーツのようにエキサイティングだ

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去る10月19日~21日、日本最大規模のデータベース技術シンポジウム『Insight Out 2011』が開催された。主催は、以前エンジニアtypeに登場した小幡一郎氏が率いるインサイトテクノロジーだ。

3日間でおよそ500名の参加者を集めた『Insight Out 2011』。オープニングセッションでも

3日間でおよそ500名の参加者を集めた『Insight Out 2011』。オープニングセッションでも“小幡節”は健在だった

「Inside Out – Database Technology(データベーステクノロジーのオモテもウラも語り尽くす)」をコンセプトに、Oracle、SQL Server、MySQL、PostgreSQLなどさまざまなデータベースのトップエンジニアが、最新のテクノロジーや現場で得たナレッジ、ノウハウを紹介したこのシンポジウム。

「今、データベースが鬼熱い」という小幡氏のオープニングで封切られ、OakTableメンバーを中心に海国内外のトップエンジニアが現場で使えるコアなデータベース技術だけを、日本のデータベース技術者向けに伝授。製品紹介一切なしのセッションが約40という、データベース技術者にとって非常に濃密な3日間となった。

今回、この『Insight Out 2011』に講師として登壇したPythian社CTOでOracle Ace Directorのアレックス・ゴルバチョフ氏が、日本のデータベース技術者が今後取り組むべきことについて語ってくれた。

DB技術者が世界中の仲間と切磋琢磨できる環境を作りたい

―― 最近、しばしば「データ爆発」という言葉が使われます。データベース技術の最前線に身を置くアレックスさんにとって、企業のデータ依存度が高まっているとの実感はありますか。

間違いなく、高まっています。人々が作り出すデータ量は爆発的に増えており、企業内のデータも毎年2倍、3倍といったスピードで増えています。企業はそれに対応しつつ、膨大なデータから価値を生み出そうとしています。1つのキーワードはビッグデータです。これは最近のトレンドであり、ビッグデータを分析する『データサイエンティスト』という職種が生まれています。一方、従来型のRDB (リレーショナルデータベース)の役割も依然として重要です。ビッグデータ系の知識を使って、RDBによる分析を高度化させようという動きもあります。

―― ビジネスにおけるデータの価値の高まりに伴って、データベース技術者の重要性も増しているということでしょうか。

取材班の質問に、一つ一つ丁寧に答えていくアレックス氏。物腰は非常に柔らかい

取材班の質問に、一つ一つ丁寧に答えていくアレックス氏。物腰は非常に柔らかい

データベース技術者は、データに依存する企業のビジネスの根幹を担っています。データベースを提供するベンダーは、これまでできるだけ人手を掛けずにシンプルな構築・運用ができるよう製品開発を進めてきました。また、そのためのツールなども多数提供されています。しかし、指数関数的なデータの増加には追いつきません。近年、データベース関連のエンジニアは常に不足している、というのがわたしの実感です。

―― アレックスさんはカナダのデータベースコンサルティング会社、Pythian社のCTOです。人材を採用する立場としては、どのようなことに気を付けていますか。

データベース技術を提供する企業の視点から見ると、優秀な技術者の採用は大きな課題です。いかに優秀な人材を採用するか、採用した人材にいかに成長の機会を与えるかということに気を配っています。とりわけ重要なのは、世界中の技術者や顧客と関係を構築できるグローバル人材の確保です。彼らが世界中の仲間たちと切磋琢磨できるような環境、あるいは師匠のような存在に巡り合うチャンスを作ることが大切だと考えています。

近年、わたしたちは継続してデータベース関連の人材採用に注力してきました。途中で世界金融危機のような出来事もありましたが、データベース技術者という職業は非常に安定しています。ただ、安定しているからといって、安穏と構えていてはいけません。自分自身を高める努力は常に必要です。

トラブルシューティングではアドレナリンが全開になる

―― データベース分野における次のイノベーションはどこで起きる、もしくは起こさなければならないとお考えでしょうか。

アカデミズムの研究などにも注目していますが、イノベーションは商業ベースで実現可能な分野で起きるべきだと思います。具体的な領域としては、ビッグデータ関連は非常に発展のスピードが速い分野です。また、先に触れた『データサイエンティスト』という職種が注目されています。エンジニアとビジネスアナリスト、統計学者をミックスしたような仕事で、プログラムやアルゴリズムを作る能力とビジネスのセンスを要求される高度な専門職です。こうした分野でも、イノベーションが期待されています。

―― アレックスさんの活動拠点はカナダですが、北米をはじめ海外におけるデータベース技術者の位置付けはどのようなものでしょうか。

先ほどデータベース技術者の重要性は高まっていると言いましたが、特に若い人たちの間ではそうした認識を持っている人は少ないように感じます。「カッコいい」とか、「ワクワクする仕事」とは思われていないようです。この点に関しては、日本と海外に相違はないのではないでしょうか。この仕事の醍醐味を感じられるようになるのは、ある程度経験を積んでからでしょう。データベースの面白さ、それがいかにビジネスにとって重要かということを、肌感覚で知るには時間が必要なのかもしれません。

―― アレックスさんがデータベースの仕事に就いてよかったと実感するのは、どのような時ですか。

難易度の高いプロジェクト、多くのメンバーが参加する大規模プロジェクトなどは、いつもワクワクします。そして、システムが本番稼働した時、みんなで喜びを分かち合うのはとてもうれしい体験です。トラブルシューティングを任された時は、まるでエクストリームスポーツを体験しているような緊張感とスリル、楽しさがあります。企業のデータベースシステムが止まった場合、1分で数万ドル、1時間で数百万ドルの損失につながることもあります。そんなトラブルに立ち向かっている時、「今、自分がこの会社を背負っている」と感じてアドレナリンが全開になります。

チャンスがあれば受けて立つという姿勢が大事

―― キャリアアップを目指す若いエンジニアは、どのような心構えを持つべきだとお考えですか。

3つのポイントがあります。第一に、自分の仕事の質にフォーカスすること。それが技術的な卓越性につながります。第二に、技術だけでなく、顧客との関係づくりにも目配りすることです。データベースをいかに円滑に立ち上げるか、効率的に運用するかといった業務は当然重要ですが、それに加えて、顧客へのサービスという姿勢を忘れてはなりません。データベース技術者は顧客に対してモノを提供しているのではなく、サービスを提供しているのです。

(2/2に続く)

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>> [世界的DBAアレックス・ゴルバチョフ氏に聞く 2/2] DBAになって技術を究めるため、ずっと”Yes”と言い続けてきた