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話題の「動画広告」普及のカギは? 関連サービス『VeleT』&『Viibar』に聞く【連載:デジタルマーケの未来学】

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旬なデジタルマーケティングの裏側にある最新技術や、それを支えるエンジニアにスポットを当てる連載「デジタルマーケの未来学」。マーケティングとテクノロジーが掛け合わさった時、ビジネスはどう動き、そしてエンジニアは何をすればいいのか。その変化の胎動を解説していく。

【用語解説】動画広告とは?

『Google AdWords』が2012年4月からYouTubeへの動画広告の配信などをスタートさせたことをきっかけに、徐々に注目度を浴びつつあるマーケティング手法。

最近では、2014年3月にFacebookがNewsFeedでの動画広告表示の段階的な導入を発表したことや、ニコニコ動画が4月に動画前広告をスタートさせたことが話題を呼んだ。

その市場規模は、2月の記事で弊誌でも取り上げたように今後300億円規模にもなると言われており、関連サービスのリリースも増えてきている。

今回、そんな動画広告業界の最新事情を聞くために、2つの関連サービスの開発陣に取材を行った。動画広告配信ソリューションサービス『VeleT (ベレット)』と動画共創プラットフォーム『Viibar (ビーバー』だ。

『VeleT』は スマートフォン・インターネット広告事業を行うアドウェイズが、『Viibar』は2013年4月に設立されたスタートアップViibarが、それぞれ開発を行っている。

Web広告の可能性を広げるとして、期待されている動画広告の開発現場でエンジニアは何を求められているのか? この2つのサービス開発の裏側を探ると、動画広告業界がエンジニアにとっても有益なチャレンジの場であることが分かった。

今までのアドテクが通用しない動画広告の世界

動画広告配信ソリューションサービス『VeleT (ベレット)

「動画広告配信サービスの開発には既存のアドテクとは違う発想が必要なので、戸惑うエンジニアも多いです」

VeleT』の開発プロデューサー川野卓也氏はそう語る。動画広告と既存アドテクとの具体的な違いとは何なのだろうか?

「一番大きいのは、広告の露出回数基準となるインプレッション数の測定方法です。バナー広告は『表示されるか・しないか』だけが露出回数を計る判断基準でしたが、動画広告では広告主によって『再生スタート』、『特定の秒数まで』、または『最後まで見る』など、どこにインプレッションを置くかが異なります。そのため、設計や開発において、今までのようなバナーやテキスト中心のアドテクが通用しない部分が多いのです」(川野氏)

『VeleT』の開発プロデューサーの川野卓也氏

そのほかにも、新しいマーケティング用語や端末ごとに違う動画プレーヤーの仕様など、アドテク開発経験者でもイチから勉強している状況だという。

未開拓な部分が多い動画広告配信サービスだが、プロデューサーとしてエンジニアに期待する部分は大きい。

「例えば、先日はエンジニアから『バナー内にGIFアニメーションを組み込み、自動で再生される仕組みはどうか?』という提案をもらい、採用しました。今は、実装のためにテスト中です。そうした提案は手探り状態の開発現場ではとても貴重。これからもテクノロジードリブンなアイデアは積極的に取り入れていきたいです」(川野氏)

また、動画広告はエンジニアだけでなく、動画制作に携わるクリエイターにも新しい風を吹き込む可能性があるという。それは、Web広告とテレビCMの決定的な違いから生まれる。

「Web広告とテレビCMの一番の違いは、データを測定できるということ。極端な話、『VeleT』の効果測定機能を利用して、動画のA/Bテストとして使ってもらってもいいと考えています。データを分析して効果の高い動画を制作し、別の動画サービスやテレビCMへ配信する。そういう広告主が増えれば、動画制作のプロセスも変わるはずです」(川野氏)

従来の動画制作になかったスピード感をどう具現化するか?

動画共創プラットフォーム『Viibar (ビーバー)

では、現状の動画制作はどのような環境で行われているのか。動画共創プラットフォーム『Viibar』代表の上坂優太氏に聞いてみたところ、いまだに非効率的な方法で制作を行っている現場が多いという。

「オンライン動画広告は新しい分野ですが、動画制作自体は非常にレガシー。わたしもかつて映像制作会社にいましたが、作業が属人化していたり、素材をバイク便でやりとりするなど、非効率的なやり方が多かった。そうして全体の生産性が下がり、それをカバーするためにクリエイターが長時間労働を強いられる。こうした構造をWebやテクノロジーの力で変えようとしているのがViibarです」(上坂氏)

『Viibar』は2013年の7月にリリースされ、すでにヤフーやミクシィのプロモーション動画などの制作実績があるにもかかわらず、まだβ版を謳っている。それは、非効率的な動画制作の世界を変えるという目的が、本当の意味でまだ達成されていないからだという。

「現状Viibarがシステム化できているのは、動画制作における品質と納期の管理です。品質は与件にフィットするクリエイターのマッチング機能や修正指示ツール、納期はリマインド機能などで実現しています。しかし、ディレクター、カメラマン、エディター、サウンドメイカーなど、多くのスタッフ同士のコミュニケーションをテクノロジーで効率化し、真の意味での「共創」を実現するまでには至っていない。そこをクリアして、ようやくβ版の冠を外せるのではないでしょうか」(上坂氏)

システマチックな動画制作を目指し、日々のブラッシュアップを行っている最中の『Viibar』。制作現場の要望を少しでも早くサービスに実装するため、日々テストとリリースを繰り返す、スクラム体制を敷いているとViibarのエンジニア泉森達也氏は話す。

「問題解決に必要十分な最小限の機能を、メンバーと密に連携を取りながら細かくリリースする体制で開発しています。それを実現するために、自動化されたテストの継続的な検証や、GithubのPull Requestを用いたコードレビューを徹底して行っています。結果として、極めて生産性の高い開発を実現しています。エンジニアとして、サービスの成長に直にかかわっている実感がとても大きいです」(泉森氏)

1日に5回~10回ほど細かな機能変更のリリースを行うこともあるという。Viibarの開発現場では、動画制作の流れを変えるべく、スピード感あふれる開発が行われているようだ。

制作現場のインテグレーションの理解が肝に

Viibarのエンジニア泉森達也氏(写真左)と、代表の上坂優太氏(写真右)

こうして動画制作のイノベーションを目指す『Viibar』開発陣。しかし、レガシーな動画制作現場にテクノロジーを導入する際に、乗り越えなければならない壁がある。それが、発注主とクリエイターとのコミュニケーションだ。

「動画制作現場から一番のボトルネックとして挙げられるのが、発注主とクリエイターとのコミュニケーション。彼らは共通言語を持たないので、これまではそこに仲介役が必要だった。我々は発想を変え、発注主とクリエイター間でも共創という概念でコミュニケーションが可能ではないか?と考えました。現在、それを実現するために多くの新機能を開発中です。これらが完成すれば、より効率的な制作環境への大きな前進となるはずです」(泉森氏)

クリエイターが本当に必要な機能を開発するための努力も欠かさない。

「映像クリエイターの方に、動画制作の一連の流れで出てくるボトルネックを根堀り葉堀り聞いています。そのために事務所の一部をお貸して、物理的に同じ空間にいてもらうようにしています。エンジニアが率先して制作現場のインテグレーションを理解してくれているので、開発スピードや精度の向上にもつながっています」(上坂氏)

動画の効果測定と制作現場のオートメーション化が相互に作用した時、マーケティングのみならずクリエイティブにおいても新しい流れを持ち込むかもしれない。

そして、それを実現する2つのサービスの開発現場は、エンジニアのアイデアや努力によってプロダクトの価値を上げているホットな現場であることが分かった。

大きなイノベーションの可能性を感じさせる動画広告業界。エンジニアが活躍できる場は多いのではないだろうか?

取材・文・撮影/長瀬光弘(東京ピストル