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海外経験が少なかった私が、日本にいながら英語を習得できた理由~ネクスト インドネシア現地法人・加藤年紀氏の学習法

公開

 

エンジニアが仕事で使える英語のtipsをご紹介する本連載。

今回は、不動産情報サイト『HOME’S』を運営するネクストの子会社で、インドネシアで不動産情報サイト『RumahRumah(ルーマールーマー)』を提供するPT. Lifull Media IndonesiaのCOO加藤年紀氏に話を聞いた。

海外との接点は幼少期にはまったくなく、インドネシアに仕事で赴任するまでの海外経験は大学生のころのホームステイと1回きりの旅行だけだったという加藤氏。

日本にいながらにしていかに英語力を向上し、海外赴任の機会を勝ち取ったのか。その学習法とモチベーションの管理術を盗もう。

プロフィール

ネクスト子会社 PT. Lifull Media COO

加藤年紀氏

2007年に早稲田大学を卒業後、不動産情報サイト『HOME’S』を運営するネクストに入社。同サイトの営業部門に4年間、その後サイトプロモーション部門に1年間従事するも、役員に直談判し念願の海外赴任を実現。現在は同社子会社でインドネシア・ジャカルタに拠点を置くPT. Lifull MediaのCOOとして活躍中。現地の不動産物件情報を提供するWebサイト『RumahRumah』を運営している

≪日本にいた時の英語力レベル≫
大学時代はTOEIC 590点で、リスニングが特に苦手だった。ネクストに入社後、海外赴任の機会を得るために本格的に英語の学習を開始。赴任直前のころには、基本的な日常会話は英語で行えるようになっていた。

≪現在の英語レベル≫
インドネシア・ジャカルタでは管轄する社内外のコミュニケーションはすべて英語。Webサイトの開発・運用業務を委託する制作会社のディレクターやエンジニア(インドネシア人)と、チャットや会議で議論を交わしている。

≪勉強法≫
学生時代は中学・高校・大学での英語の授業のみ。ネクストに入社して海外赴任を目指すようになってから、オンライン英会話の利用を開始。途中、中断をはさみながらも2年間継続した。

「海外に行かせてもらえないなら辞めます」

PT. Lifull Media Indonesiaの加藤年紀COO

―― これまで本連載に登場された方は、海外との接点が豊富な方ばかりでした。

そうでしたか。私と海外との接点と言えば、大学1年生のころに行ったアメリカ・オレゴンへのホームステイと、大学3年生の時に行った1度きりの中国への旅行ぐらいです。

ホームステイした時はホスト家族もゆっくりと話してはくれたのですが、それでも相手のしゃべっていることがほとんど聞き取れなくて(笑)。こちらもボディーランゲージを交えながらしゃべるのですが、それでも伝わるか伝わらないかといった状況で。

そんなストレスフルな環境が3週間続いたおかげで、自分の英語のレベルの低さをまざまざと思い知らされました。

―― そんな加藤さんが海外で働きたいと思ったのはなぜでしょうか。

ネクストに入社し、不動産情報サイト『HOME’S』の営業部門に4年おり、4年目に約15人のメンバーを抱えるマネジャー職となるのですが、あるころから今の仕事に対する達成感と同時に焦燥感を感じるようになってきました。このまま今の部門でいるよりも、より成長できる環境があるのではないか……と。

そんな時、社内に海外事業を立ち上げるための海外事業準備室が新設されました。それがきっかけで、いつかは自分で海外事業を立ち上げからやりたいと思うようになりました。

苦労する環境に身を置くことが、当時の自分には必要だと思ったからです。

―― そして本格的な英語学習が始まったわけですね。

はい。必要最低限でも英語が話せないと、海外事業を任せてもらえませんから。

しかしその時に、受験英語とはいえ学校で英語を学んでいてよかったと思いました。学校で習っていた単語がある程度自分の頭の中に残っていたので、学習を始めたばかりのころでも読み書きの部分はある程度できたのです。

リスニングが課題だったので取り組んだのは「オンライン英会話」のみでした。海外赴任が決まるまででしたので、2年間は続けていました。

―― 2年間もですか。よく続きましたね。

といいつつ、実は仕事が忙しくて途中で半年間ほど中断した時期もありました(笑)。

海外事業準備室にいた担当役員と、たまに食事をするたび、「ちゃんと英語の勉強は続けているのか」と聞かれていたんですよ。その時は勉強を中断しているのに、「はい、続けています」と言い張って、それが嘘にならないように再開したなんてこともありました。

学習を始めてから1年半ほど経ったころ、一度違う部署に配属されたのですが、その時役員の1人に「海外に行かせてもらえないなら辞めます」と直談判し、インドネシアに赴任することが決まりました。

まずは2週間、続ければ英語が聞こえるようになってくる

―― 加藤さんの英語学習のコツは?

とにもかくにも、英語に触れる「量」を増やすことだと思います。

英語力はその量に比例します。量を増やすために心掛けていたことは、英語学習の「重要性」を忘れないようにすることと、英語学習を楽しくするための「エンターテインメント性」を高めることでした。

後者については、オンライン英会話の『Pinas Academy』を利用していたのですが、いろんな講師がいる中で一緒に話していて面白い人を毎回の授業やプロフィールなどから選ぶようにして、多頻度で英会話をしたくなるような状況を作っていました。

加藤氏が学習に活用していたオンライン英会話の『Pinas Academy

―― 自分の中で上達を感じた瞬間は?

案外早い時期に感じることができました。オンライン英会話を始めてから2週間ほどが経ったころ、相手の話していることを理解できるようになってきたのです。

たとえ相手の言葉の一部を聞き逃したとしても、聞き取れた単語とその時の状況を掛け合わせて考えると、相手が伝えようとしていることを正しく推測できるようになった。例えば、その日初めて会話する講師が ”Work” という言葉を発したなら、それは自分の職業について聞いていると推測できます。そのように、文脈でリスニング力を補えるようになってきたのです。

その後、さらに英語学習を継続することで、点として聞こえていた単語がだんだん増えてきて、線のようにつながってくる感覚を持てるようになりました。

英語の学習訓練は今も継続しています。特に今、英語学習で効果的だったと思うことはCNNを毎日見ていたことです。

また、今やっていることで日本にいた当時からやっていればよかったと思うことは、FacebookやGmailなど普段使いしているWebサービスの言語設定を英語にすること。

そして、ソーシャルメディアで自分の好きな英語圏の有名人をフォローすることです。

―― エンジニアと英語でやりとりすることはありますか?

もちろん。『RumahRumah』に加えて、お菓子のプロモーションサイトを運営しており、どちらも開発・運用は現地のWeb制作会社に委託しています。

インドネシアの不動産物件情報を提供する『RumahRumah

担当してくれているディレクターとエンジニアはインドネシア人で、毎日のチャットのやりとりと、月に1度の会議では、作業の進捗確認や今後の追加開発に関する議論を英語で行っています。

エンジニアの人は非常にロジカルな話し方をされますね。会話も、まず何をしたいのかという目的など結論から文章を始め、その後に背景や理由など肉付けをするような話し方をされます。

しかも決して複雑な言い回しや難しい単語ではなく、簡潔な言い方や簡単な単語を選んで話してくれる。ですからとても理解しやすいですし、こちらも簡潔に受け答えしようと努めます。

―― インドネシア人の方は英語に訛りはありますか?

ありますね。インドネシア語はアルファベットなのですが、少し読み方が違います。

“A B C D” を “アー、ベー、チェー、デー” と読むのですが、そういったインドネシア語の発音をそのまま英語に使ってしまう癖があるようですね。

特に違いが大きく困った発音は、例えば “V” の発音はインドネシア語では、“F” のように発音します。

それを英語でも同様に行っており、“I have a pen.” を “I haf(ハフ) a pen”、”Victory” を “Fictory(フィクトリー)” と発音します。私たち日本人が中国語を見て、そのまま漢字の読み方をしたくなるのと同じです。

異文化の外国人をどう動かす?

―― 海外で働いていると英語力も加速度的に向上するのでは?

はい。ただ、英語だけでは足りないとも感じるようになりました。

例えば、インドネシアでは仕事で遅延が発生するなんてことが日常茶飯事なんです。その日のうちに終わらせないといけないタスクが残っていても、従業員は定時で時間に帰ることも多いです。それに、急いで解決しないといけないトラブルが発生していても、お祈りの時間になると1時間席を外したりすることもありますから。

以前ならキツく言って指導するようにしていたのですが、それで解決されるものではないということが分かってきたんですね。むしろ相手がやる気をなくしてしまったりする。それは、こちらが発注者で相手が社外の外注先だったとしてもです。日本と比べて、発注者と外注先の関係が対等なのです。

ですから、こちらではスケジュールは遅れるものなのだと割り切って、計画にバッファを持たせるようにしています。つまり、英語だけでなく「文化への理解」が重要だということです。

加藤氏と同僚の皆さん

しかし、文化の違いを少しでも埋めるコツもあります。私が直接英語で説明するとややこしくなりそうな複雑なことは、英語のうまい従業員に最初に説明し、彼女を介してインドネシア語で説明してもらうようにしています。言葉のニュアンスも含めて、丁寧に伝えることで、仕事が円滑に進むこともあるのです。

―― 今後のキャリアについてはどのようにお考えですか?

今はインドネシアという1つの国を担当していますが、弊社としては今後、途上国・先進国を問わず他の国に進出を増やしていく計画がありますので、その複数国において経営に近いレベルで携わっていけたらと考えています。

また、日本で経営に携わった経験もまだないので、ネクストの子会社などで年商20億円以上の規模の企業の経営に参画してみたいとも。その時に、今培っている英語力をツールとして活かせたらいいですね。

―― 本日は貴重な体験をお聞かせいただきありがとうございました。

取材・文/岡 徳之(Noriyuki Oka Tokyo