エンジニアtype - エンジニアのシゴト人生を考えるWebマガジン

ビジネス英語を意識するよりベーシックカンバセーションを愚直に磨く~マイクロソフトシンガポール岡田兵吾氏の学習法

公開

 

エンジニアが仕事で使える英語のtipsをご紹介する本連載。今回は、マイクロソフトシンガポールに勤務する岡田兵吾氏に話を聞いた。

「実は英語が苦手だった」と話す岡田氏。それでも、学生時代に英語の楽しさや面白さを知ったことを機に、グローバル企業に就職し、現在も海外で活躍するために英語を学び続ける姿勢とは――。

プロフィール

Microsoft Singapore, Senior Manager (Asia License Contract & Compliance)

岡田兵吾氏

同志社大学工学部を卒業後、アクセンチュア(日本、米国)、デロイト(シンガポール)、マイクロソフト(シンガポール)で18年間、業務・ITコンサルタントとしてアジア全域の事業開発、業務改善に従事。エグゼクティブMBA取得。シンガポール和僑会 理事。シンガポール ドラッカー学会 理事。「ソーシャルチェンジ」を人生目標に掲げ、人材育成支援、貧困層向けボランティア、NPO向け経営支援に従事。ダイヤモンド社で連載記事も執筆中。座右の銘は「Stay Gold!」

≪海外滞在歴≫
大学生の時にアメリカに10カ月(交換留学)。アクセンチュア時代に1年。シンガポールは11年目(永住権取得)。

≪入社前の英語レベル≫
社会人になる前は、海外旅行や留学で十分コミュニケーションが取れる英語レベル。

≪現在の英語レベル≫
社内はすべて英語。シンガポール在住のため日常会話も基本的には英語。社外にも多数外国人の友人がいるなど、英語で十分コミュニケーションが取れる。

≪勉強法≫
学生時代は、アメフト同好会とESSに所属。留学先で外国人とコミュニケーションを取ることを心掛けたほか、映画や著名人のスピーチなどを真似をしたり、NHK『ラジオ英会話』の一番基礎レベルをひたすら聞き、フレーズやセンテンスを何度も繰り返した。社会人になってからは、自身が「苦手」という文法を日本語で書かれている英文法のテキストを使って勉強することも多い。

学びはベーシックが一番、会話は伝える意思が大事

―― そもそも英語に触れるきっかけは何だったのでしょうか?

一人っ子でカギっ子だったこともあって、アメリカのインディーズ系の映画や『ベストヒットUSA』といった番組を観て癒やされていたんです。そういったアメリカカルチャーに触れるうちに、「かっこいいなぁ」と憧れを抱いたのが、僕の原点です。

英語には憧れていたけど、勉強があまり好きではなくて(笑)。結局、英語ができなかったから国立大学に進学できず、私立大学に進学したんです。

―― ということは、英語を本格的に勉強し始めたのは大学に入ってからなんですね。

はい。入学してすぐ、新歓コンパで帰国子女の女の子が英語で会話している姿が目に留まったんです。その姿が輝いて見えて(笑)。当時、立花隆や小田実、落合信彦といったジャーナリストになって世界の国々を見てみたいという夢があったので、「自分も英語が話せるようになりたい!」って思ったんです。

まずはESSに入ることにしました。当時実は僕はロン毛でサングラスをかけていたので、入部当初はとても不審がられましたけど、実際、本当に勉強していなかったので“This is a pen.”とか“My name is~.”程度の英語でさえまともに話せなかったんです。

学生時代の岡田氏

それでも、自分もかっこよく英語を話せるようになりたいって思って、少しずつ勉強していきました。

―― 初めて海外に出たのも大学生の時なんですよね?

バックパッカーで海外旅行した先輩の話を聞いたのをきっかけに、大学1年の夏に初めて中国へ船で一人旅しました。そして、まずは上海外国語大学を目指し、そこの学生に無理やり頼み込んで大学寮に2泊させてもらいました。

片言の英語しか話せなかったんですけど、すごく楽しかったんですよね。

その後、モンゴルまで旅をして帰りの香港行きフェリーで出会ったバックパッカーから「英語ができたらもっと世界が広がる、もっと勉強すべきだよ」という言葉を受けたり、40日余りの中国放浪で数多くの外国人と出会ったことで、急速に人生がグローバルに広がっていく期待で胸躍りました。

―― 帰国後はどうやって英語をブラッシュアップさせていったのですか?

ESSは日本人しかいないので、もっと外国人と話す機会を作ろうと考えたんです。で、最終的に辿り着いたのが観光地で人力車を引くこと。外国人ばかりに話しかけて、観光案内をしたりしました。外国人と話す機会を増やすようになったことで、大学1年の冬ごろには楽しくノリでコミュニケーションを取れるようになってきたんです。

大学1年の春休みには、アメリカに58日間滞在しましたし、大学3年生の時にはアメリカへ交換留学にも行きました。

―― 留学先でのエピソードを教えてください。

留学当初は、なかなか友だちができなかったんです。英語で一生懸命話しかけても、私の英語を理解してもらえないこともありました。

ある日、友人から“Hyogo, don’t say you cannot speak English.”と言われたことで気付かされました。当時、外国人に話しかける時に“My name is Hyogo. I cannot speak English.”と言っていましたが、英語が話せないことが理由で“He’s boring(つまらない人間だ)”と思われることが怖かったんです。

それからは「英語ができない」という前置きを言わないようにしました。日本だと、間違うことや人と違うことはダメなことととらえがちですが、アメリカは国籍や肌の色が違う人が多い国だし、それぞれの違いや個性、間違いを受け入れる文化があるんだということを肌で感じることができました。

また、ボランティアに参加していた時に、あまり英語が話せない障がい者の方からお礼を言われたことがあって、英語ができなくても感謝の思いが伝わることが分かりました。「たかが英語なんだ」と思い、これからは思ったことをどんどん伝えていこうという気持ちに変わったのも大きかったですね。

学生時代に交換留学を経験していた岡田氏は、社会人になってからMBAも取得している

―― ご自身の中で一番身に付いたと思う勉強法は何ですか?

一番良かったのは、NHKラジオ英会話の一番ベーシックなものです。ビジネス英会話だと一気に難しくなりますけど、ベーシックカンバセーションだと、耳に入りやすいですし、真似しやすいですね。

映画のカンバセーションや、キング牧師やケネディ大統領のスピーチを感情移入させて声に出してみるということも繰り返しやっていました。留学先では寮の部屋の鏡の前で口真似もしていましたね。

コミュニケーションはコンテンツよりも、ジェスチャーだったり、表情だったり、感情だったりの方が大事だと思います。

―― 逆に、これはダメだったという勉強法は何ですか。

単語帳を作ることですね。勉強した気になるんですけど、作っても読み返しもしませんでした。聞くだけで英語が身に付くという教材もありますけど、まだ単語を聞き取れない時期に聞いてしまうとBGMのようになってしまうというのも分かりました。

ラジオの会話とか映画とか、ある程度注意して聞けるものの方が効果的でしたね。

「理解」さえ間違わなければ仕事は十分できる

現在のオフィス、マイクロソフトシンガポールにて

―― 社会人になってからビジネス英語を身に付けるのは難しかったのではないでしょうか?

はっきり言って、ビジネス英語の方がラクだなと思いました。ビジネス英語で一番重要なのは読み書き。基本的には正確に読めて、伝えることを間違えずに伝えることができれば問題ありません。

そういう意味では、きちんと聞き取れなくても大丈夫で、自分の理解が間違っていなければ十分仕事はできるんです。それよりも、日常会話の方が内容も多岐にわたるので、教養や知識も必要になります。

ローカルの友だちを作っていくとか、その国の人とつながりを持とうと思うと難しいですね。

―― 社会人になってからも英語の勉強は続けていらっしゃるんですか?

大学卒業以来ずっと外資系企業で働いていて、海外にも長年住んでいるのですが、実は英語ができないことが常にコンプレックスなんです。

現在はシンガポールからさまざまな国の人とビジネスをしていますが、英語力がまだまだ不十分なので、クセの強い英語だと分からないことも多いんです。なので、苦手な文法のテキストはよく購入して勉強しますね。

最近は、苦手な「前置詞」のテキストを買って読みましたし、『大前研一の今日から使える英語』も読みました。「TED Talk」も聞いて、真似して話すということもよくやりますね。

―― プレゼンやミーティングの機会が多いと思いますが、どういう準備を心掛けていますか。

外国人とのミーティングやプレゼンになるとめちゃめちゃ燃えるんです(笑)。英語のプレゼンや日本語でやる時ほど、上手くできないと分かっているからこそ、相手に伝わるプレゼン資料をきっちりと作っていきます。

立ち上がって体全身でリーダーシップを取るようにしたり、思いが伝わるように大きな声を出すために発声練習をしたり、胸を張るため当日朝は必ず筋トレもします(笑)。英語のミーティングは一番先に入って、最初にどうでも良い質問などをして声のトーンをチェックしたりもします。

でも、これは自分が英語ができないと分かっているからこそやっているんです。初めは抵抗がある人も多いかもしれませんが、やっぱり“No Pain. No gain.”。コツコツやっていくしかないんです。

―― 多国籍な人材をチームとしてまとめるのは難しいと感じることもあるのではないでしょうか。

現在のチームメンバーと

アクセンチュア時代に20代後半で9カ国11人のチームマネジャーになったのですが、英語ネイティブじゃない人たちとコミュニケーションを取るのは難しかったですね。あと日本流の働き方を外国人に押し付けていたように思います。

マイクロソフトシンガポールでは約60カ国の国籍の人間が一緒に働きますが、国籍やそれぞれの個性が違っていても、思いやミッション、ゴールを共有していればチームとしてうまく機能していくということが少しずつ理解できるようになり、チームのまとめ方も変わってきたように思います。

―― 近年はTOEICを昇進の基準にしているIT企業が増えていますが、岡田さんもTOEICの勉強をされたりするんでしょうか。

TOEICを昇進の基準にしているのはいいことだと思いますね。ただ、その基準はもっと極端にした方がいいと感じます。

日本の昇進基準は600点とか700点に設定している企業もあるそうですが、サムスンだと900点だと聞きました。900点くらい取れれば、かなり聞き取れるし話せるという人が多いと思うんですけど、600~700点位だとテクニックや単語とかで何となく点数を取れてしまう。そういう人が海外に出てきたとしても、よっぽど気合いを入れて学ばないと、英語を話せるようになるのは難しいと思います。

もちろん、英語ができる人だけが海外に来いとは言わないですが、英語のある程度の基礎体力がないと通用しません。帰国子女でもないのであればそのくらい高いレベルを目指さないと難しいですね。

しかし、何より大切なのは、海外が大好きだったり、海外での挑戦を楽しめる、また強い思いを持って英語を勉強して海外でインパクトを出したいと考える志高く熱い日本人が、海外で暴れて、世界から敬愛される日本の代表として頑張っていただくこと。

日本は皆さんが思われる以上に海外から期待されています。熱い気持ちを持つ日本人と一緒に日本の素晴らしさ、日本で培った知見を持ち、アジア、世界のビジネスに貢献したいですね。Stay Gold!

取材・文/大井 あゆみ(『シンガポール経済新聞』運営Diversolutions.Ptd.Ltd代表取締役)