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気になる永和システムマネジメントの人材活用術を、角谷信太郎氏に聞いてみた【連載:エンジニアの幸せな職場】

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エンジニアにとって、本当に「働きやすい環境」ってどんなのだろう? という疑問を解消すべく、組織づくりや職場環境に秀でたTech企業にインタビューを敢行するこの企画。インタビュアーは、エンジニアのためのポートフォリオサイト『Forkwell』や、エンジニア目線の求人・転職サイト『Forkwell Jobs』を運営する株式会社garbs取締役おおかゆかさん。エンジニアが「幸せに働ける職場」のあり方を探る!

Interviewer
Forkwell_ooka

株式会社garbs 取締役 Forkwellプロダクトマネージャー
おおか ゆかさん [blog:表参道フォークウヱル別館]

関西学院大学経済学部を卒業後、独立系SIerを経てインフォシーク社に入社。楽天による買収後も含めて、インフォシークのログイン周辺機能や各種コミュニティサービスの開発を担当。その後フリーランスとして活動、業務委託で入ったgarbsで提案したエンジニアのスキルマッチングの企画が採用され、そのサービス『Forkwell』のプロダクトマネージャーとなり現在に至る。公式ブログ『表参道フォークウヱル別館』でエンジニア採用について辛辣に語る記事も評判

おおか エンジニアの幸せな職場」の2回目は、この連載でぜひお話を伺ってみたかった永和システムマネジメントの角谷信太郎さんに来ていただきました。本日はよろしくお願いいたします。

角谷 こちらこそ、よろしくお願いします。

おおか 永和さんといえば「国内屈指のアジャイル集団」というイメージが強いですが、角谷さんが入社されたころってどうだったんですか?

角谷 僕は2003年10月に入社したんですが、そのころはまだアジャイル開発はもちろん、ソフトウエア開発そのもののスタイルも定まってませんでした。

おおか 永和さんの本社は福井ですけど、角谷さんは東京採用なんですよね。

角谷 そうです。僕は生まれが大阪で、大学は京都。ずっと関西で過ごしていたので、就職で東京へ出たかったんですね。それで東京のSIerに入社してSEになったんですが、「もっとうまいプロジェクトの進め方ってないのかな」と感じて、いろいろ情報を集めていたんです。

そしたら、ケント・ベックが書いたXP(エクストリームプログラミング)の白い本があったでしょう、あれに出会ったんですよ。

おおか 『XP エクストリーム・プログラミング入門』ですね! わたしも当時あれに衝撃を受けたクチです。机にお菓子を常備したり、同僚をつかまえてきて強引にペアプログラミングしてもらったりとかしてました(笑)。

角谷 僕もXPを知って「これはスゴイな」と思うようになり、そこからアジャイルにも興味を持つようになりました。何よりコードを書くことを重視しているし、テスト駆動開発やペアプログラミングなど、コードの質を高める具体的な話がされていて、この方法ならもっと良い開発ができるよな、と。

ただ、当時はまだ一般的じゃなかったし、「こっちのやり方の方が良いものだからウォーターフォールをやめてXPでやりましょう」みたいな説明の仕方では誰にも納得してもらえない。

そんな折、永和が福井から東京に進出するにあたって人を募集しているのを見つけた。XPについての情報発信で平鍋(健児氏・取締役副社長)はすでに国内の第一人者でしたから、この会社でならケント・ベックの言うやり方を実践できるかもと思って転職しました。

人づてで優秀なエンジニアが集まるようになるも、今は危機感が

おおか なるほど、アジャイルやりたさが高じて転職に踏み切ったんですね。それで永和さんに移って、すぐにアジャイルで仕事ができるようになったんでしょうか?

角谷 いや、そのころは東京の事務所ができたばかりで、お客さまを開拓していくフェーズでしたから。僕自身、仕事でXPやアジャイルをやったことは一回もありませんでした。というか、開発の仕事自体がない。

会社として地道な営業を続けて、さまざまなお客さまとの取引が増えていって、ある時にやっと「XPでやってみよう」というオーダーが来た。それが最初のアジャイル開発プロジェクトです。

永和が「アジャイル開発のスペシャリスト」として認知されていくまでのプロセスを回顧する角谷氏

おおか その後、アジャイルでやれる案件は順調に増えました? というのも、さっき角谷さんもおっしゃっていたように、2000年代はまだまだアジャイルの導入に抵抗感がありましたよね。

角谷 ええ、プロジェクト全体をアジャイルに進めるのは難しいことも多かったです。なので、部分的な実践だったり、永和の開発チームの担当部分だけアジャイルっぽくしてみたり、という感じで地道に成果を積み重ねながら、次回以降の提案につなげていきました。

実は、というほどでもないですが、永和でRubyを使った開発に取り組むようになったのにも、アジャイルなスタイルで開発できる案件を増やしたかったという側面もあります。

2005年くらいに日本でもRailsが話題になってきたので、他社より早くRailsを使いこなせば、もっとエンドユーザーに近い立場から案件に取り組めるようになるんじゃないかと。そうなれば、お客さまへアジャイルな開発スタイルの提案もしやすくなるんじゃないかと思って。

もちろん、Rubyをやるようになったのは、純粋に前から好きだったプログラミング言語だからという理由もありましたけど。

おおか Rubyコミュニティで有名な角谷さんでも、仕事でRubyを使うようになったのはRailsからというのは初耳でした。話をアジャイルに戻して、日本で市民権を得たのっていつごろからだと思います?

角谷 お客さまからも「アジャイル」や「スクラム」という言葉が普通に聞かれるようになったのは、ここ5年以内だと思います。たぶん、ウォーターフォールでガチガチに固められた開発手法だと、周りの変化に追いつけなくなってきたのが、このくらいの時期だったんじゃないかと思います。

おおか 永和さんの取り組みに時代が追いついてきたという感じですよね。では、会社として土台が固まってきたのはいつごろからですか?

角谷 2006、2007年になると開発メンバーが増えてきて、「Rubyとアジャイルの永和」みたいなイメージが固まってきたのは2008年ごろでしょうか。

おおか 大々的に募集されたんですか?

角谷 求人もやってはいましたけど、そのころはもう、「アジャイルをやりたい」という人が自然に集まるようになってました。

おおか その理由は?

角谷 いろんな記事や開発者のコミュニティでの発表だったり人のつながりで、永和でのアジャイル開発への実際の取り組みが知られるようになったからでしょうか。当時は「ソフトウエアをちゃんと開発する」というメッセージを出している開発会社はそう多くなかったのかもしれません。だから、そこに関心の強いエンジニアが集まってきてくれたんだと思います。

おおか 今はどんな風に採用されていますか?

角谷 Forkwell Jobsさんにも求人を出させてもらっていますけど、基本は前と変わらず、人づてが多いです。僕が監訳した『アジャイルサムライ』を読んだという方からも応募がありますが、これもある意味では僕らの著作物を通じた人づてですね。

おおか 多くの会社がエンジニア採用に苦戦している中で、そうやってエンジニアが自然と集まってくるのは、うらやましい限りですね。

角谷 ホント、ありがたいことに。でも、だからと言ってボヤっとしていると、今後ヤバいなという危機感は常に持っていますよ。

おおか 「危機感」ですか?

角谷 最近は、さっき僕が言った「ソフトウエアをちゃんと開発する」というメッセージを出す会社も増えてきたからです。例えばクックパッドさんとか。Ruby界隈では強力な「タレント・マグネット(優秀な人材がまた別の優秀な人材を引き寄せる、という意)」になってますね。

エンジニアにとっては、働きたいと思うような職場の選択肢は過去よりも増えてますから、ボヤっとしていると優秀な人からどんどん辞めちゃう。

「コードを書く人」が大事だから、会社はコードを書きやすい環境を作る

おおか でも、永和さんはそうならないために、いろいろ工夫されてますよね。例えばForkwell Jobsの求人票にも、

《ひとりひとりの開発者がいちばん効率よく開発できる環境づくりを目指しています。たとえば、ディスプレイの増設や、オフィスチェアに Ergohuman PROの用意、Kinesisキーボードや SlimBladeトラックボールの購入支援などを行っています》

とあって。良いキーボードやマウスが使いたければ自腹、椅子も人間工学とか考えられてないノーブランドものという会社が多い中で、なかなか先進的な取り組みじゃないでしょうか。

Forkwell Jobsに掲載される永和の求人では、“エンジニア想い”な各種取り組みも説明されている

角谷 永和でも人材流動性は高まってるので、ボヤボヤはしていられなくて。社内には「環境整備班」があったりもしますよ。

おおか 良いですね!それ。

角谷 でもまぁ、本当は、環境が整っていること自体を会社の売りにしたいわけじゃないんですよ。
(次ページへ続く)