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「月50人にヒアリングすることも」Qiita海野弘成氏に聞く、プログラマーに支持されるサービス運営術【連載:エンジニアが幸せな職場】

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エンジニアにとって、本当に「働きやすい環境」ってどんなのだろう? という疑問を解消すべく、組織づくりや職場環境に秀でたTech企業にインタビューを敢行するこの企画。インタビュアーは、エンジニアのためのポートフォリオサイト『Forkwell』や、エンジニア目線の求人・転職サイト『Forkwell Jobs』を運営する株式会社grooves取締役おおかゆかさん。エンジニアが「幸せに働ける職場」のあり方を探る!

Interviewer
Forkwell_ooka

株式会社grooves 取締役 Forkwellプロダクトマネージャー
おおか ゆかさん [blog:表参道フォークウヱル別館]

関西学院大学経済学部を卒業後、独立系SIerを経てインフォシーク社に入社。楽天による買収後も含めて、インフォシークのログイン周辺機能や各種コミュニティサービスの開発を担当。その後フリーランスとして活動、業務委託で入ったgroovesで提案したエンジニアのスキルマッチングの企画が採用され、そのサービス『Forkwell』のプロダクトマネージャーとなり現在に至る。公式ブログ『表参道フォークウヱル別館』でエンジニア採用について辛辣に語る記事も評判

おおか エンジニア自身がCEOを務めているスタートアップってまだまだめずらしい存在だと思うんですが、海野さんはRubyコミュニティにも知り合いが多く、生粋のエンジニア社長ですよね。

CEOが若いエンジニアで、友人3名で創業されているなど、IncrementsさんにはY Combinatorなどから生まれるアメリカのスタートアップっぽい印象を勝手に持っているのですが(笑)、そもそも起業のきっかけって何だったんですか?

海野 大学時代に行った「はてな」でのインターンが大きかったですね。その時は1カ月の研修で、前半の2週間でWebサービスの基本を学んで、後半2週間で実践的な開発を手掛けるといった内容でした。

その後も2年くらい、アルバイトとして開発に取り組んでいたので、結果的にはてなには長くいましたね。はてなでの経験で、数十万人、数百万人というユーザーへ向けて直接サービスを提供していくことの面白さを知ってしまったので、起業に迷いはなかったです。それに、プログラミングのスキルがあれば、たとえ失敗しても何とかなるかなと思っていました(笑)。

おおか なるほど。今ではIncrementsさんの代名詞になっている技術情報共有サービスの『Qiita』は、いつごろ開発されたんですか?

プログラマーの技術情報共有サービス『Qiita

海野 大学を卒業するころには、今の『Qiita』の原型となるサービスを作り始めていて。それもあって、すぐ起業することにしました。ただ、その後すぐにピボットすることになりましたけど。

おおか じゃあ、今の『Qiita』は創業時とは違うコンセプトなんですね。

海野 ええ。今の『Qiita』に形になったのは、ローンチして2カ月ほど経ってからです。最初は「日本版Stack Overflow」のようなイメージで、Q&Aサイトっぽい方向で作りましたが、なかなかアンサーが返ってこない状態が続いたので、現在の「ノウハウ提供サイト」にピボットしたんです。

おおか 2カ月でピボットとは、意思決定の迅速さが尋常じゃないですね。なぜそんなすぐにピボットを?

海野 ありがたいことに、『Qiita』は初期ユーザーとしてスキルのある人たちが集まってくれて、投稿の質の高さから、ノウハウ共有の方がずっと成長スピードを出せると考えたためです。それに加えて、当時のユーザー動向を見ながら、「日本人は自分の名前を出して回答するのが恥ずかしいのかもしれないなぁ」と感じたので。

おおか 現在の『Qiita』の規模はどれくらいですか?

海野 おかげさまで月間80万UUまで成長しています。

おおか 順調ですね。Incrementsさんは『Qiita』の後、プログラマーのための技術情報記録アプリ『Kobito』や情報共有ツールの『Qiita:Team』もリリースしていますが、以前の連載回で伊藤直也さんからお聞きした話によると『Qiita:Team』ははてなさんが社内で使っていたツールを発展させたものだとか?

海野 そうなんです。はてなが使っている情報共有ツールは「社内ブログ+Wiki」みたいなモノだったんですが、メールでのやりとりが必要ないっていう点が気に入っていました。

「メールを送る」って、思っている以上に強いモチベーションがいる行為だと思うんですよ。そうじゃなくて、「読んでくれたらいいな」くらいの気軽さでコミュニケーションできるツールの方が使いやすいんじゃないかと。

それに、プログラマーとしては非同期コミュニケーションがやりやすいこともけっこう大事だなと思っていたので、じゃあステージングサーバを使って社内のコミュニケーションをやってみようと試してみたら、「けっこう心地いいね」という声が多かった。

実際、僕らは業務連絡ではメールを1通も書かなかったので。

おおか 1通も? そこまで徹底しているのはさすがですね。

自分たちで『Qiita:Team』を使いながらチームビルディング

Forkwellでも『Qiita:Team』を使っているとのことで、情報共有の仕方について議論する場面も

おおか 今のお話が好例ですが、Incrementsさんは徹底してエンジニア視点でサービスを作っていますよね。『Qiita』のサイトも、すごくSEOに力を入れているように見えつつ、SEO業者がやるような施策ではなく……。

海野 はい。あくまでもエンジニア目線で施策を打つようにしています。

おおか 『Qiita:Team』についても、弊社の開発メンバーが強く希望してチームで使い始めまして。最初のうちは、その人くらいしか使っていなかったんですが、最近は私も新機能のアイデア共有などに使わせてもらってます。

海野 ありがとうございます。

おおか 今日取材でお伺いすると社内で話したら、チームメンバーから『Qiita:Team』の機能について改善要求が出てきたので、今リクエストしてもいいですか?(笑)

海野 ぜひぜひ聞かせてください。

おおか 『Qiita:Team』のような情報共有ツールって、皆で使い続けていくうちに、日報とか議事録が入り混じったままフィードが蓄積されていくじゃないですか。それだと、本当に読むべき重要なフィードを見逃してしまうことがあるので、Gmailのように本文の最初の部分が一覧で表示されていたり、日報や議事録だけを外して一覧できる機能があると便利だなぁと。

海野 なるほど。貴重なご要望です、ありがとうございます。ただ、『Qiita:Team』はユーザーさんからの機能追加リクエストが非常に多いサービスなので、どれを優先してやっていくか、社内で検討させていただきますね。

おおか 私自身がリクエストしたばかりでこの質問をするのも何ですが(笑)、たくさん来る要望の中から、どれを選んで実装するかという議論は、どうやって進めているんですか? ユーザーに言われたことをひたすら実装していく改善スタイルだと、往々にして使いづらくなるじゃないですか。

社内のサービス改善フローについて語る海野氏

海野 そうですね。今、ウチには僕以外にエンジニアが2人、デザイナーが2人いるんですが、ユーザーからの要望にどう応えていくかについて、それこそ『Qiita:Team』で日々ディスカッションしている最中です。

特に最近多いのは、50人以上の大規模チームで『Qiita:Team』を使う際の要望です。もともと、このサービスは最大で20~30人の開発チームを想定して作っているので、今後、大人数でも使い勝手の良い機能やUIを考えねばと話しているところです。

その議論の中で、最優先で取り組む課題が決まったら、誰が何をいつまでにやるかっていうところまで『Qiita:Team』内で詰めていきますね。メールだと、こういう部分の決定プロセスがチームメンバーに共有されないので。

おおか つまり、Incrementsさんは『Qiita:Team』を使って『Qiita:Team』の改善に取り組んでいらっしゃると。

海野 ですね。『Qiita:Team』のようなコミュニケーションツールをうまく使えば、社員の働き方もリモートが可能になるなど、よりエンジニアが自由になりますし。