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最近、ネットでワクワクしていますか?~モノづくりで熱狂するために必要な、たった一つのこと【連載:えふしん⑨】

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えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

昔、ある会社にいた時に転職しようと思ったきっかけは、「ネットってもっと面白いところだったよね?!」という会話からだったような気がします。インターネットって、まだまだこれからだと思うんです。それがWebをブラウザで見る形なのかアプリという形なのかは分からないけど、優れたテクノロジーは何かしらの形で変化していきます。

イノベーションというのは、既存技術の連続性の先にあるので、今、確かに世の中に存在はしているのだけど、必ずしも適所ではなかったサービスが、新しいプラットフォームに移って花開くというパターンが増えてくるでしょう。

今は電子書籍と3Dプリンタが熱い

ようやく日本で『Kindle』が出たことで、売れる電子書籍のマーケットができました。

Amazonから登場したタブレット端末『Kindle』。日本でも注目度は高く、現在入荷待ちの状態だ

電子書籍これまでの問題点は、ハードウエアの問題ではなく、毎日アクセスする書店の存在がなかったからだと思います。

もちろん個別で漫画や個人出版の電子書店はありました。しかし、今まで通常の本をAmazonで買っていた人にとっては、それまでと何も変わらないインターフェースで電子書籍が買えるようになったのはやはり大きな変化です。

Kindleストアは個人でも本の販売ができますから、クリエイティブな力があれば、誰の承認を得ることもなくオリジナルの本を出版することができます。「本」というパッケージがなくなる必要はありませんが、今まで本では成立し得なかったコンテンツが電子書籍というパッケージでヒットするのはまったく不思議な話ではありません。

そして、今、その『Kindle』で読みたい本が『MAKERS』です。3DプリンタというCAD図面から実際の造形物を削り出してくれるハードウエアが個人でも買えることになり、また、Arduinoというオープンソースの電子回路を使うことで、今まで大企業が設計、製造のノウハウで圧倒的優位性を保っていたハードウエアを誰でも作れる時代が来たというものです。

CAD図面や設計に関するテクノロジーが、企業のプロプライエタリな部分からオープンソースに移行することで、新しい社会の動きが出るだろうということが書いてあります。

ちょうど、今、日本にあるコンシューマー向けの製造業が岐路に立たされています。このタイミングで大企業から飛び出した優秀なエンジニアが、これらの技術を使って再起を図るというのは、非常に分かりやすいストーリーでつい期待してしまいます。

ただ、ソフトウエアと違って、品質管理の難しさや、製造物責任法で訴えられる問題など、モノづくりはソフトウエアよりはシンプルではありません。

何より製造業は戦後日本の成長の歴史の本丸ですから、ここの再定義は容易ではないでしょう。ただ単に今の会社が辛くなったから辞めたという人には難しいだろうし、Cerevoの岩佐(琢磨)さんのように、ちゃんと志を持って独立する人が、今後どれだけ出てくるかがカギだと思います。

今の家電メーカーがスマートフォンに対応しても今ひとつワクワクしないのは、ネットありきの家電ではなくて、既存の家電におまけでネット連携がついているからでしょう。『MAKERS』の流れは、ネットを中心に家電が再編される時代だと思います。

もしかしたら、mixiやFacebookが家電のハブになっているかもしれませんし、これから出てくる新しいネットサービスがそれを担うかもしれません。

アップルはMacやiPhone、iCloudなどの「装置」がデジタルハブになるという構想で進めてきましたが、未来はもっと人やSNSが中心にあると思います。デバイスはその架け橋ですが、必ずしもスマートフォンのような「売れ線」のデバイスに集中しない世界です。

書籍『MAKERS』ではロングテールになっていくと表現されていますが、もっと普遍的で多様性のある世界ということになるでしょう。

いずれにせよ「人のつながり」=「持ち運べるインターネット」を中心に作られる世界こそが、今後のワクワクの中心になっていくことでしょう。
(次ページに続く)