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LINEは、本当のスマホビジネスプラットフォームになれるか?【連載:えふしん⑪】

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えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

登録者数1億人を超えたLINEがすごい。何がすごいって、LINE POPやLINE Cameraのヒットにとどまらず、LINE ToolsやLINE cafe、LINE BANDなど、「ブランドの希薄化」を招きかねない取り組みをガンガンやっていることです。

「ブランドの希薄化」というのは、ブランドを拡張していくと、もともと確立されていたブランドのポジショニングが不明確になり、ブランドの価値が薄くなってしまう現象のことをいいます。

「LINE●●」が必ずしもヒットするとは限らない、と代表の森川亮氏も言っていたが、その一方で関連サービスは続々と登場している

皆さんはもしかすると、LINEが当たれば、LINEって名前を頭に付けてほかではできないことをどんどんできるんじゃないの!? なんて思うかもしれませんが、「LINEって、最近よく分からなくなっちゃってね」とユーザーに言われないように、「らしさ」を維持していくのはなかなか難しいものです。

逆に「らしさ」に捕らわれて、やるべきことができなくなるのもマイナスですし。

現在のLINEという言葉に付いているブランドの信頼は、何をさておきアプリのクオリティの高さではないでしょうか。僕も、「おそらくLINE POPみたいなゲームはたくさんあるんだろうなぁ」などと思いつつ、やっぱりLINEって名前がついてるからLINE POPをやったというのは否めません。クオリティに対する安心感はそれだけ絶大です。

怒涛の取り組みをしているLINEですが、LINEのビジネスはスタンプの販売以外に、企業が利用できる公式アカウントとLINE@という二つの仕組みが存在しており、それぞれ特徴的な違いがあるので、それについて触れてみたいと思います。

「銀座の一等地モデル」であるLINE公式アカウント

LINEの公式アカウントは、ローソンアカウントを皮切りに、あっという間に増えていき、大企業とタレントやエンタメのコンテンツなどの公式アカウントが、1月29日現在で94アカウントになっています。

内訳としては、

・企業ブランドで、28個
・テレビ番組、エンタメアカウントが15個
・アーティストが50人

そして、首相官邸がアカウントを開設しています。

安倍晋三首相もLINE公式アカウントで情報発信を開始している

公開情報で流れている情報だけでも、公式アカウントの利用料が月間150万円からということですから、ざっと1億円以上が毎月利用料の収入となっている計算になります。

それ以外に、オジリナルスタンプの収入が約1000万円とのことですから、相当なものです。電通、博報堂系列などのナショナルクライアントとパイプのある大手広告代理店がパートナーになって動くビジネスと考えられます。

さらに、「LINEと組みたい企業、99%はお断り」という記事にもある通り、たとえ大手広告代理店の提案企画であっても、審査に通らないという話もちらほら聞いたりします。

LINE公式アカウントは、要するに銀座の一等地に店を構えるようなビジネスです。すでにたくさんの人が訪れるし、特別な場所を提供する代わりに家賃が高い。だからこそ、そこにお店を出せる人は、多大な恩恵を受けられる。

注目をお金で買えるので、労せずメリットを得られる仕組みとも言えます(もちろん、そのアテンションをムダにしないために、さまざまな企画がセットになるわけです)。

このビジネスの難しいところは、スマートフォンというデバイスが持つ面積の制約に依存しているということだと思います。公式アカウントにたくさんのユーザーが集まる理由は、スマートフォンの“狭い画面”の中で、良い位置を確保しているからにほかなりません。

公式アカウントを増やして、アカウントが埋もれてしまうようでは、後発アカウントの費用対効果が下がってしまうため、結果として、今の単価を維持できなくなる可能性がある。

単価を下げると、アカウントの数は集まるけど公式アカウントの価値は落ちてしまうというジレンマを抱えています。

公式アカウントは、効果的に露出できる面積の制約がある以上、どこかで売上の上限がやってくるので、どちらかといえばブランド価値を高めるための施策なのではないでしょうか。

インフラとしての真価が問われる『LINE@』

それに対して、格安のLINE@のビジネスアカウントは、月額 5250円で、お客さんにメッセージを発信できます。

ただし、LINEの公式アカウントページのようなものはなく、お店に貼ってあるPOPなどでお店が独自に営業をして、ユーザーにQRコードを読み込んでもらって登録をうながします。

こちらはプラットフォーム側が手助けをするとものではなく、検索エンジンから検索されるWebサイトのように、ビジネスアカウントをやりた人が、LINEというプラットフォームを活用する権利を買うというものです。

規約上、ECサイトへの誘導や、アプリのダウンロード訴求などが禁止されているため、このアカウントを使って広告メディアを運営することはできません。想定されているユーザーは、

・ 旅館、小売、アパレル、美容、ホテルなどの接客業
・ 雑誌やテレビ番組
・ 地方自治体等の公共サービス

だそうです。

公式サイトにある利用事例に、「TwitterやFacebookは使ってないけど、LINEは使えるスタッフに使わせることができた」という話があるので、いわゆるTwitterアカウントと同じような用途に使うものだと思います。

このビジネスモデルが成功すると、LINE@は、実生活の中でビジネス・コミュニケーションが勝手にうながされるので、アプリの面積の制約から解放され、Google Adwordsに負けないぐらいのビジネス機会を生む可能性があります。

LINEアプリ自体は今まで通り、アカウントの登録や検索機能だけを提供すればよくなるわけで、これが成功した時に、真のビジネスインフラになったといえるのではないでしょうか。

いずれはLINE@のナビゲーションサイトのような広告用のアプリも出てくるでしょうが、今やるべきことは、そういうことではなく、実生活の中で、自律的にLINE@を活用してほしいというフェーズだと思います。

『LINE@』の成功が、スマホ×ITビジネスの真の成功例となる?

世の中のプラットフォームビジネスには、サードパーティーが「ゼロから1のモノ(サービス)を作れる」ものと、「既存の機能を活用し、1を10にする」ものの2種類が存在します。

From Andres Rueda
高速で発展を続けるLINEが真のスマホビジネスにおけるプラットフォーマーとして成功するのか、今が正念場かもしれない

「ゼロから1」を実現できるプラットフォームとは、自由度が非常に高いため、何が起きるか分からないけど、成功するとものすごいことになるというもの。

Windows上で動くアプリを作るサービスプロバイダーや、Twitterにとっての失敗例と言われていますが、かつてのTwitter APIを使うサードパーティーがそのようなプラットフォームだったと思います。

他方、「1を10」にするというのは、基本的なビジネスモデルや全体の枠組みはプラットフォームが規定しているので、パートナーは大きなイノベーションは期待されているものではありません。

つまり、成功する仕組みで大儲けできる仕組みをみんなで作っていくモデルで、レストランやファーストフードのライセンスビジネスであったり、ソーシャルゲームのSAPなどが該当すると思います。

LINEの公式アカウントは、スマホの制約の中で「1を10にする」タイプのビジネスで、LINE@は、「ゼロから1を作る」ことで、日常の社会を巻き込んで全体としてスケールする可能性を秘めた難しいビジネスだと思います。

実際、LINE@のアカウントをネットで調べても、直接お店の人に話を聞いてみても、現状はまだまだ難しいようです。今、NHN JapanがLINE@のアカウントマネジャーを募集しているようですが、ある意味、ECプラットフォームの成功例がない時代に楽天市場の営業マンをやるような仕事なのではないでしょうか。

とにかく成功事例を作って、「うまくいくO2O事例」のテンプレートを作りたいという現状でしょう。

最近、自分のSNSのタイムラインで、「スマートフォンは便利になったとは言われるけど、幸せになったという話はあまり聞かない」と書いている人がいて、確かに、そうだよなぁと思います。

個別で言えば、LINEで口説いて結婚しましたとか、SNSで転職しました、とかはあるでしょうが、これは、そういう意味ではなく、サービスの存在そのものが世界平和や人類の幸せに寄与するサービスってあったっけ!? ということが言いたいのだと思います。

結局、アプリストアでのランキング競争への最適化が優先され、それどころじゃないというのが現実ではないでしょうか。

LINEについては、「インターネットらしさ」という意味では、LINE@が成功することが、LINEがスマートフォン+インターネットの真の成功例になるのではないかと思っており、密かに注目しています。

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