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「有名になる」ではなく「忘れられない」ために、セルフブランディングを継続していく意味【連載:えふしん】

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えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

ある時、ネット系の人間であればみんな知っているハズだと思っていたとある有名製品を、この業界に詳しい知人が知らないということに気が付きました。その人は、この業界に詳しいのですが、年齢が20代前半なのです。

その時にハッと気が付いたのですが、「ブランドって忘れられるんだ!」と。

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From Erik Pitti
近年のスマートフォンしかり、破壊的イノベーションが起こると「それまでの世界」の常識は忘れられていく

特にITの世界はプラットフォームの変遷が激しいので、プラットフォームやトレンドが変わると、すべてのことが流されてしまいます。

このことをエンジニア個人に当てはめた場合、自己の商品価値を高める方法にはいくつかのパターンがあると思います。

例えば、

・ 特定の言語コミュニティで活躍する
・ スマホが出てきたらスマホアプリで有名になるように、常に新しいプラットフォームで活躍する
・ 認知の高い企業の社員として偉くなる。起業して会社が有名になる
・ 多くのユーザーに使われるWebサービスを作る
・ 大学などでの研究者になる

などが考えられるでしょう。

人間は等しく年齢を重ねていきますが、それに合わせて毎年、「初心者」と呼ばれる人たちが出てきます。初心者の中の一部の人たちは、ネットの記事や本を読んだり、友だちから情報を得て、プロダクトを使ったり、サービスを利用することで、既存製品についての認知を得ます。

この流れの中で、まったく認知されることがないと、彼らに知ってもらうきっかけがなくなるわけです。

実績を積み上げた結果、あるラインを超えた人たちは、何もしてなくても、周りから勝手に名前が受け継がれる人になっていきますが、そこまで定着したブランドを持っていない人は、アウトプットを止めてしまうと、急速に「知らない人が増えていく」という現象を通じて「忘れられて」いくのです。

スタートアップに見る新陳代謝

スタートアップ企業が作るネットサービスにおいても、「それ○○でできるよ!」という車輪の再生産のような現象がたびたび起こります。

それは、特にプラットフォームが変わった時に起こるのですが、例えば今熱いのは、スマートECのサービスや、スマホのC2C取引による、フリーマーケット系のサービスが挙げられるでしょう。

イノベーションのジレンマという言葉があります。この言葉は、既存企業が発達した結果、ライバル企業による新興の事業が出てきた時に、いろんな社内の都合で対応できず、新興企業の台頭を許すというものです。

そこまで大げさなことを意識していなくても、なぜか「旬のもの」が移行していく現象があるようです。

新しいスタートアップは、当然、ユーザー数や既存のビジネスの蓄積はありませんので、差別化をするためには思い切ったことやっていかないといけません。そこで、「破壊的イノベーション」と言われるものを起こしたいわけですが、破壊的過ぎるのは相当難しいので、現実的には「ちょっとした工夫」を組み込みます。

そのちょっとした工夫が、既存の企業にはマネできないことが重要です。これが、結果的に新しいユーザーニーズや時代のタイミングなどに合致すると、「ちょっとイケてるよね」と支持されます。

そしてメディアなどを通じて増幅され、「初心者」への認知が行われていくことで、そのサービスは「イケてるサービス」になる。逆に、その機会を得られなければ、「忘れられていく」という状況になるわけです。

このような状況を避けるためには、マーケティング活動を継続的に行い、市場ニーズをしっかりつかみ、時代の状況に適応していかないといけません、という教科書的な話になるわけです。

機能差の○×を埋めていくような比較表マーケティングは昔からイケてないなぁと思っていましたが、そもそも比較表に載らないというのは、もっと深刻な状況を作ります。

 「知らない人が増えていく」という現象に、どう立ち向かう?

こういったことが個人においても必要なのは、正直言うと面倒くさいですよね。さらに、こういうことを書くと、「別に自分は有名になりたくてアウトプットしてるんじゃない」とか、「そういう考え方が卑しい」という指摘が出てくることも予想できます。

しかし重要なのは、無理に「あの人は今」と言われないようにすることではなく、キャリアを築いていく上で「知らない人が増えていく」という現象は、どこかで意識しておいた方がいい気がするのです。

最近、アウトプットに疲れてしまって、居心地の良い友だちだけのクローズド空間に閉じてしまう人も増えているような気がしています。居心地の良い世界にいくのは別に否定されることではありませんが、一時期の話題を独占していたような人が、そうなってしまうのは、オープンインターネット派としては単純に寂しいわけです。

これは毎年生まれる「初心者たち」が学びのチャンスを失っているということでもありますので、それこそ今の10代の人たちが、ネット業界に就職した時に見てもらえるような「継続的なアウトプット」を続けていく意識は大切だと思うのです。

もちろん、一口にネット業界と言っても、すでにソーシャルゲーム、スマホアプリ、企業のWebサイトを作るような受託系、広告系etc……と世界が分断されています。そして、それぞれの分野で、毎年、技術やサービスの蓄積が進んでいる。世代ごとに「何がイケているか」という感覚も違うので、総花的にすべてのジャンルに無理に迎合していくのは得策ではないです。

そこは自分なりのテーマやスタイルを持ちつつ、うまくやっていかないといけないと思います。

と、ここまで書いて、改めて見てみると、自分で「何ともオッサンくさい文章だなぁ」と思うし、こういうことを考えていくと、正直言って悲観的になっていく部分は大きいのですが。

ネット業界は「若さ」こそが正義です。僕は50歳になっても、20代の若者にツッコんでもらえる環境を維持することを目標にしているので、今後、加齢臭と戦うことと、老害にならずに会話をし続けられる鮮度を保ち続けるのは、必須の課題として生きていかないといけないなと思っています。

淡々とね。