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LINEがビジネスをコネクトし出すと、どんなエコシステムが生まれるのか【連載:えふしん】

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えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にpaperboy&co.へ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社(現・マインドスコープ)を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後しばらくフリーランスエンジニアとして活躍し、2012年11月6日に想創社(version2)設立

昨日、LINEの新展開が発表されましたね。

【1】 クリエイターが作ったスタンプを販売できる、『LINEスタンプ』のオープン化
【2】 固定電話に接続できて料金も安い『LINE電話』
【3】 企業のシステムと連結し、メッセージとサービスがつながる『LINEビジネスコネクト』

などが発表され、LINEのビジネス展開に注目する人たちの間で大騒ぎになっています。

個人的には、LINEビジネスコネクトが熱くて、モバツイでツイートを介してやりたかったことだけに展開が楽しみです。

自然言語のツイートが飛び交う中で、システムが連携し合う、最近で言うとM2Mのプロトコルを流せるようにしたかったんですよね。といっても、実装はRESTのURLがUnixのソケットみたいなものになっていて、ユーザーがクリックした瞬間にTwitterクライアントとネット上のサービスが相互につながる世界を想像していました。

昔から、そういうアーキテクチャのサービス実現に興味があって、2006年にはこんな記事を書いたこともあります。

plaggerで夢見るソーシャルインフラの構築

Twitterは、ツイートの仕様をあまり拡張せず、140文字を守ることでサービスのエッジを立て、Facebookに負けることなく上場まで行ったので、あれはあれで最適だったのでしょうが、サードパーティのエコシステムとしては面白くはなくなってしまいました。

LINEさんなので、ビジネスコネクトも品質コントロールをしながらナショナルクライアントからの導入になると思うので、インターネット全体で革命的なことになるとは予想しにくいですが、製造業やサービス業などでファンがついているブランドは新たなO2Oソリューションとして活用するでしょうから、今後の展開に期待しています。

改めて。LINEはインターネットの日常を変えるのか!?

昨日のこの発表を受けて、この変化に興奮する記事が何個かネットに流れていましたが、実際に僕らの生活は何か変わるのでしょうか。

間違いなく言えるのは、LINEを使わないユーザーは、これまでと何も変わりません。でも、LINEビジネスコネクトは、LINEサイドからすると「友だちがいないのでLINEを使えない人」を取り込むことができるかもしれません。

LGに、LINEビジネスコネクトの動画がありますが、ここには今の日本製品ではできない世界があります。

LINEで家に帰ることを伝えると、冷蔵庫や洗濯機、ロボット型掃除機が自動的に動き出すという映像です。また、人とのメッセージングで送られてくる写真などをプリンタやテレビと簡単に連携できるという絵が描かれています。

個人的に、この中で興味を持ったのは、ロボット型掃除機だけでした。写真の印刷などは、Appleとの戦いだなと思いますし、ただの実用性だけなら家電のコントロールは専用アプリでもあれば十分です。

もう一レイヤー上に、コンシェルジュがいれば別なんですけどね。

僕の会社にルンバがあるのですが、スリップする床でロボットが自動で動くというのはすごく難しい話でして、やっぱりルンバも予想通りには動きません。だから、みんながルンバを見る視線は、まるで子どもやペットを見るようです。

このような「愛される家電」があれば、LINEとやりとりしたくなるのではないでしょうか。

例えば、リモートで掃除をしているロボット型掃除機が、このまま先に進むとスタックしてしまうような判断に困る状況になったとします。その際に、利用者にLINEでメッセージを送り、判断を仰ぐ機能があっても良いかもしれません。「ダメな子だからこそかわいい」という状況で、人間に協力させるのです。

ただの利便性だけで見ると、新しいメッセージングアーキテクチャが1つ増えるだけにしか見えませんが、LINEにメッセージを流す意味というのは、友だちのメッセージと並列に並ぶということです。だから、タイムラインに何が並ぶべきなのか!?  という視点は大切だと思うのです。

LINEは「ブランドロイヤリティで勝負する時代」を加速させる

僕は最近、LINEの企業アカウントからの新着通知を止めました。ロイヤリティが薄いブランドアカウントは、LINEの画面には向きません。クーポンが送られてきても、行きたいと思わない店には行かないし、興味も持たないわけです。

ブランドロイヤリティがあるからこそ、クーポンなどの実用性の高いメッセージが役に立つのではないでしょうか。

ゆえに、LINEビジネスコネクトなどに投資するということは、企業自身のブランドロイヤリティを問われることになります。その土壌に乗ったものだけが継続されるんじゃないかと思っています。

上の動画を見ても思うのですが、日本では、今、LINE経由で会話したい家電ってあるのでしょうか。僕個人にはそういうのはないので、実用性を超えて、そういうプロダクトが出てきてほしいですね。

昔のソニーさんはまさにそこを目指していたと思うんですが、今は韓国の方がホットですね。なぜ、先の動画がLGだったのか。別に日本にこだわる必要はありませんが、日本人としてはやっぱり寂しいですね。

SONYが目指したもの

今、日本で企画すると不安なのが、すぐアニメ・イラストで擬人化に走ってしまいそうです。ルンバや攻殻機動隊のタチコマのような機能美で僕らを楽しませてくれれば、オッサンにも受け入れられるのですが、そこだけが心配です。

『シーマン』やTwitterメンションに見る、流行を生むコミュニケーション

LINEビジネスコネクトの動画を見ていると、LINEらしく自然文でのオペレーションをしているようです。SiriやGoogle Glassで注目されている音声認識コマンドでも思うのが、人間は頭がよくないので、習慣化できてないコマンド体系を覚えられないと思うんです。

だから、自然文や音声でコントロールするというのは、とても難しい話です。入力された自然文や音声コマンドが一回でも無情なシステムエラーで拒絶されたら、もう終わりだと思うのです。

そうなると、適切な人間とのプロトコルは、電話のサポートセンターでの音声メニューや、コマンドがずらずら流れてくる、昔のパソコン通信のホストみたいになると思うので、UXとしてはネイティブアプリでビジュアルに訴えてくれた方が、問題解決にかかる時間が圧倒的に少ない。なので、Webやアプリに誘導すればいいという話になってしまいます。

大多数のサービスの解決法はそれが最適だと思うのですが、ほんの少しのサービスのいくつかが、つまり「LINE経由のつながり」を習慣化させることに成功させたところだけが、爆発的にアテンションを獲得することになるでしょう。

これはGoogle Glassでも言えることですが、新しいスタンダードの獲得戦争です。

昔、『シーマン』という音声でコマンドを送り人面魚を育てるゲームがありました。音声認識の技術者が技術を追求し、返り討ちに遭う中で、シーマンの開発チームは「音声コマンドが分からなかったらユーザーにもう一度しゃべらせる」という作戦で成功しました。愛らしくも無愛想なシーマンというペットだからこそ、「分からないものは分からない」と言うことが許されたわけです。

そういうコミュニケーションを通じて、適切なユーザー教育を施し、「楽しいゲーム」に仕立てたところに勝機が生まれた。

また、Twitterは、「@○○」で友だちに連絡ができるという奇跡的にシンプルなCUIを流行らせることができた稀有なサービスだと思っています。流行る時には、その機能が自然に受け入れられ、ユーザーは容易にメンタルモデルを構築でき、使い出せること大切ですね。

その起爆剤は、「便利」ではなく、「楽しい」だと思うので、そこを実現できた企業なりサービスが、新しい世界を見せてくれることでしょう。

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