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BASE株式会社のCTOに就任したお話~原則、「コードを書かない」という決断に至った理由【連載:えふしん】

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えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。2014年8月1日からBASE(ベイス)株式会社のCTOに就任

こんにちは、えふしんです。私事のお話で恐縮ですが、8月1日にBASE(ベイス)株式会社に移籍し、CTOに就任しました。7月まではBASEには技術顧問としてかかわっていました。

このタイミングで、当連載でご報告させていただくと同時に、これまで考えていたこと、新しい立場で今後考えていくことについて少し書かせていただきたいと思います。

同時に複数の企業に属してみた結果思ったこと

7月までは自分の会社でサービスを作りながら、ツイキャスを運営するモイにも所属しておりました。 また大学院で博士課程の学生もやりつつ、BASEの顧問もやっていたので、肩書としては4つあった状態になります。

えふしん氏が技術顧問から正式にCTOとして入社したBASE

えふしん氏が技術顧問から正式にCTOとして入社したBASE

数年前、週末起業のような言葉が流行りましたが、ネットでも家入さんやイケダハヤト氏などを中心に、副業や複数の仕事を持つ方が良いのではないか? という言説が多く見られていたように思えます。

特にノマドワーカーブームで、会社から自由になると言った文脈では、そのような考え方が多くありました。

決してそれに影響されたわけではありませんが、前職のモイでは、赤松社長からのオファーで、自社で開発していた『ShopCard.me』と並行しながらでも良いという大変ありがたい打診をいただき、ツイキャスの開発にもジョインしていました。

しかし、やってみた結果として、複数の会社の仕事を同時に行うのは、僕にはなかなか難しかったようです。

複数の仕事を行うということは、1案件あたりにかける時間が少なくなることです。が、それよりも、仕事が断片化することの方が問題でした。

Webサービスの開発というのは、継続的に成長することにかかわることであり、言われたタスクを期日までにこなせば終わりというものではありません。途切れのないサービス成長の中で、一番大切なのは、「そのサービスを想い続ける」ことではないかと思います。それこそ通勤帰りや休日に、ふと考えるサービスはどれなのか? ということが大切だと思っています。

そういうイメージを持っていたので、BASEのCTOの打診を受けた際、社長の鶴岡からは、僕の状況を理解してもらい、掛け持ちについては「引き続き可能だ」という前提条件でオファーをいただいたものの、やるのであれば、しっかりとコミットをしていかねばと思い、モイの赤松社長にはお暇をいただくお願いをしました。

赤松社長には、快く送り出していただいたことと、なおかつ冒頭で書いたような「移籍」という表現で、社内に告知いただいたことを感謝しております。

CTOとして考えていくこと

CTOという役職になるにあたって1つ決めたこととしては、BASEではコードは書かないつもりでいます。何かのプロトタイプや周辺のコードは書いても、サービスそのものの開発はしないつもりでいます。

すでに開発が回っている組織に、プログラマーのリーダーとしてかかわるのではなく、今いる開発者や今後入社する人が、如何に楽しく仕事ができ、BASEと一緒に成長していくか? という環境づくりにコミットしていこうと思っています。

まだBASEには、定常的に回す人事評価制度が存在していません。しかし、今後社員が増えていくとどこかで徐々に必要になってくるのは明白です。BASEの組織としての勝ちパターンというのは、今後構築していくべき部分なので、そこをしっかり見据えた上で、然るべき準備をしていこうと思っています。

BASEを選んだ勇者たちの働きに報いる社内環境の整備を

From merick.fightBoredo
BASEを選んだ勇者たちの働きに報いる社内環境の整備を

今のBASEにいる仲間たちは、誰もが勇者であると思っています。

大小たくさんのインターネット関連企業がある中で、BASEを選んでくれたことについては、全力で報いていくべきだと考えています。

特に最初はLivertyから始まった会社でもあり、学生が多かったのですが、一流大学に所属し、上場を間近に控えるベンチャーの内定を断って来てくれた人や、BASEにジョインする流れで、大学よりもBASEを優先してくれた人もいます。

そういった人たちのおかげで、多くのお客さまに支持され、多くのビジネスパートナーさんや株主さんに評価されるようになったわけなので、彼らを路頭に迷わせるわけにはいきません。

CTO打診の際に、社長の鶴岡からはそういう部分の責任について第一にお願いされたし、僕も非常に重要なことだと考えています。

会社自体の成功を目指すことはもちろんのこと、それ以上にエンジニア職であればこそ、万が一、他の会社に転職したいと思ったり、起業したいと思った時に、自信を持って送り出せるだけのスキルや経験、判断力などを培えるような環境づくりをしていきたいと思っています。

これはCTOの仕事に限った話ではありませんが、僕が仕事でかかわる人には、独立した社会人として一緒に仕事したことを決して後悔させないようにしたいというのが強い想いとしてあります。

技術トレンドのキャッチアップについて

技術面での具体的な部分で言うと、今はやっていないアジャイル的な取り組みやTDD(テスト駆動開発)などの取り組みは積極的に追いかけたいと思っています。

どうしても目の前の仕事が忙しいと、特にTDDの導入は、これまでの開発経験に対して、心的な負荷が大きくなっていくのは否めません。ここに関しては、僕が積極的にケーススタディを作っていき、導入から運用、定着までの橋渡しをしていくのが良いのかなと思って、目下勉強中です。

できれば、この辺を一緒に手伝ってくれる人が入社してほしいですね。一度、TDDをやり始めると離れられなくなるという言説を信じて進めていきたいと思います。

TDDやアジャイル開発は、SIer方面の堅い開発プロセスの変革から始まっていました。大規模開発の成功体験としてのウォーターフォールにおける問題点を改善し、変化に強くなることを目指していたものです。

今では、事業規模の大きくなったネットベンチャーにとっても、変化に対して安定的にサービスを改善していくという部分で、これらのプロセスがベストプラクティスとして融合されています。そのおかげで、今は、ネット企業らしいスピード感を維持したまま、開発をマネジメントしていくことに関する情報が非常に充実しています。

昨今、スタートアップの開発環境でも使いやすいプロジェクト管理をサポートするシステムが急激に進化してきています。結局のところ、会社が大きかろうと小さかろうと、現場では大体、同じような問題で悩むものです。それを解決するノウハウが公開されているなら、積極的に活用しない手はないわけです。

一歩一歩進めていきます

千里の道も一歩から

From Jiaren Lau
千里の道も一歩から

いろいろ書いてきましたが、現状、きれいに回っているワークフローもあり、すべてのことを一気に進めるのは難しいので、あまり気負いすぎず、一歩一歩進めていきたいと思っています。

立ち上げのころから顧問として成長を見守り続けた会社とは言え、自分がゼロから組織を構築した会社とは、また違う空気があるわけです。

「中途入社CTO」には、高速道路の加速車線を一気に加速して既存の車線の流れにうまく合流し、引っ張っていくためのノウハウが必要だよなぁと思っているところです。

昨今は、幸いにも伊藤直也さんや、nanapiの和田さん、グリーの藤本さんなどを代表する、ベンチャーにおける技術マネジメントの話をたくさん見かけるようになりました。そのような記事はエンジニアtypeにもたくさん存在するので、これらをバイブルのように読みながら頑張って行きたいと思います。

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