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IT系イベントで「99%の知らない人たち」とつながる方法【連載:えふしん】

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えふしんのWebサービスサバイバル術

藤川真一(えふしん)

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。2010年、想創社を設立し、2012年4月30日まで代表取締役社長を務める。その後、想創社(version2)を設立しiPhoneアプリ『ShopCard.me』を開発。2014年8月1日からBASE(ベイス)株式会社のCTOに就任

今年は、プログラミング言語系イベントに積極的に参加しようと思って、『YAPC::Asia Tokyo 2014』と『PyCon JP 2014』に行きました。次は『PHPカンファレンス2014』に参加します。

改めてエンジニアばかりのイベントに出てみて、気が付いたことがあります。それは、

99%の人は知らない人ばかり

ということでした。

僕は他の人に比べて年齢だけは高めなので、何となく知っているという程度でも顔見知りの人はたくさん見つかるのではないかと思っていました。しかし、改めて世界は広いと思わされました。

重要なポイントは、自分が知られているか? ということではなくて、自分が皆さんを知らないことに対する機会損失です。

今、BASEで人材採用をしていますが、もし動向を知っている人が多ければ多いほど、転職しそうな人を自ら見つけることが可能なハズです。

そうすれば、比較的に苦労せずに人材採用に結びつくかもしれません。そう思えばこそ、1人でも多くの人を知っている状態にはできないものかと思うわけです。

濃い「つながり」を形成するなら小規模勉強会やハッカソン

今、自分が通っている大学院での研究では、「人のつながり」、「人の出会い」ということを研究しています。その研究の中では「人のつながり」は、

「お互いがお互いのことを、多少なりとも知っていること」

を「つながりがある状態」と定義しようと思っています。

数百人規模のイベントの懇親会で、「人のつながり」を新規に作り出そうとすると、いくつかの場に対する制約があった方が望ましいです。現状、まったくお互いのことを知らない素の参加者が、イベント会場で他の人と知り合いになるには、大抵のケースでイベントの懇親会で話をするしか手がありません。

名刺交換したことは覚えているものの、顔は思い出せないなんてこともしばしば

From Geoffrey Franklin
名刺交換したことは覚えているものの、顔は思い出せないなんてこともしばしば

そこで世代や感覚が偶然合えば、盛り上がって仲良くなるかもしれませんが、人が多い場だと、名刺を交換することが目的になったり、流れ作業のような挨拶になり、コミュニケーションの質が低いこともあります。たくさん名刺を交換したのに、誰かがまったく覚えていないなんてこともあり、なかなか難しいです。

単純にお互いの印象を強く与え合うのであれば、IT系イベントの懇親会のような人数の多い場ではなく、10人以下でコミュニケーションする小規模勉強会やハッカソンでチームを組んだ方がよいと思います。

ただ、これだと多くの人数とはつながらないわけなので、99%の知らない人を解決することには寄与しにくいです。

強制力の働かない場で「つながり」を作る難しさ

少しシチュエーションを変えて考えてみましょう。

IT系イベントの懇親会という場が、

「つながりがある方が楽しいのは分かっているものの、そこまでつながりを増やすモチベーションが湧かない場」

だとすると、それに対して

「強制的なコミュニケーションが求められる場」

というのがあります。

1つの例を挙げると、学校のクラスであり、もう1つ例を挙げると街コンです。

学校のクラスや街コンのような場は、お互いのつながりにつながる関係性を作るのが比較的強制されます。学校のクラスでは、1年を楽しく暮らすためには、誰しもが友だちを増やしたいと思うため、特に新学期の最初のころは頑張って、周りの人と話をしたり、一緒に行動を共にしたりします。結果として、お互いの個性を認識し、友だちになっていくことが期待できます。

また、街コンに参加すると、システムとして話をすることが強制されるそうです。お互いの認知を得ることをイベント自体が強制してくれます。しばらく話をした後に、また会いたいと思えば、飲みに行けばいいし、そうでもなければ、別の人と話せばいいという安心な仕組みになっているそうです。

それに対して、IT系イベントの懇親会では、そのような人間の距離を近付けるお膳立ては存在しません。頑張って距離を近付けなくても、イベントの遂行が可能な状況下で、有意義なコミュニケーションを作るには少し工夫が必要です。

相手が話しかけやすい状況を作る

この状況を打開する1つの方法論は、自分がセッションのスピーカーとなって情報発信をすることです。つまり、

「自分は知らないが、相手は知っている」

という状況を作り出すことです。

懇親会を観察していて、そこで得られるメリットを高めたいと思うのならば、情報を発信する人が圧倒的に有利であることに気が付きました。

セッションで顔と名前、会話のネタを印象付けておくことが重要

From Cydcor
セッションで顔と名前、会話のネタを印象付けておくことが重要

そもそも業界の有名人であるというのはあるのかもしれませんが、セッションを通じて、今日、話をしやすい文脈を提供しているからというのは大きいと思います。

さらに、セッションの時に、話しかけてもらいたいネタを仕込んでおくのは理想でしょう。例えば、ハードウエアのデモや、みんなの前では話せない秘密の話などは懇親会で聞いてください、と振っておくことなどが考えられます。そこで提示した内容に対して、興味を持った人であれば、話し掛けてくれる可能性が高いです。

つまり、自分から話し掛けるのではなくて、話し掛けてもらいやすい状況を相手に提供するということです。

相手は自分のことを知っているので、話し掛ける理由さえあれば、話すことは容易にできます。知らない側から話し掛けるのは、相手に通用する話題や文脈という会話の糸口から探さないといけないので、少しハードルが高くなります。相互の会話のネゴシエーションのところから始めるのは、相応の労力がかかります。

自分が学生のころ、とあるパソコン通信の掲示板のオフ会の懇親会で、テーブルを1つ1つ回って挨拶したことがあります。それがきっかけで、相互に存在を認識してもらうことに成功し、掲示板にアクセスするのがすごく楽しくなりました。

それから時間が経ち、IT系イベントで同じような振る舞いができない自分に対して、年を取ってしまったんじゃないか? とか、ヘタレになってしまったんじゃないか、何かから逃げているんじゃないか? と自分を責めるようになり、IT系イベントに参加すること自体が億劫になってしまった自分がいました。

しかし、それは間違いで、パソコン通信は学校のクラスのようにコミュニケーションを強制される場だったので、自分も頑張れたのだと思います。 それに対してIT系イベントは、自分にとっては99%の人たちが知らない人たちで、ほとんどの人と会話の糸口がなく、アウェイな場である可能性も高く、話し掛けるのが難しいのは当たり前のことなのだと思います。

そういう場では、自分が話し掛けられやすい、相手も話し掛けやすい場の空気を作ることに成功すれば、より楽しい場になる可能性を秘めています。

来年は、言語系イベントで登壇できるようなネタを作らねばならないなぁと思っているところです。それが、スポンサーブースの効率的な運用を実現し、人材採用や自社サービスの認知向上につながるはずです。

直近では、PHPカンファレンスにBASEとしてスポンサーブースで参加します。今年は、今ある手持ちの材料で効果を出すことを考えていきたいと思っています。

当日会場でお見かけいただいたら、僕は「知らない99%の人たち」とつながりたいと思っていますので、是非お声がけいただけるとありがたいです!

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