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「データ分析にワクワクを」高専出身ベンチャーFULLERが、『App Ape』でスマホのアプリ解析を変える

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「おじさん育成ゲームを楽しみながらスマートフォンの消費電池を改善する」という独自の切り口で人気のAndroid向けタスクキラーアプリ『ぼく、スマホ』を開発・提供するFULLERが、BtoB向けの新サービス『App Ape』(アップエイプ)を4月25日にリリースした。

『App Ape』とは、およそ10数万にのぼるFULLER株式会社提供の端末管理アプリ利用者の利用状況をレポーティング形式でまとめ、開発者に提供していくサービスだ。当面は月2回程度のレポーティングから始め、近々統計データのリアルタイム表示や、クロス分析などができるアナリティクスサービスも提供していく予定だ。

価格はレポーティングで1本約2万円~10万円。紙媒体の調査レポートやアンケートを元にしたレポートなどよりも安価な設定を考えており、追って展開するアナリティクスツールも月額10万円以下の料金で提供していく予定とのこと。

Androidアプリ開発者や端末メーカー、通信事業者など、業界内の法人や個人事業主を中心に需要を見込んでる。

インフォグラフィックを用いて、情報取得時の利用規約を再発明

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『App Ape』を開発したFULLERの面々

これまで、スマートフォンユーザーのアプリ利用情報は、自社製アプリのみか、調査機関が行うアンケートによるおおまかな情報からしか得られなかった。FULLERはこの現状を変えるべく、同社初のBtoB向けビジネスに乗り出した。

「スマホユーザーはどのくらいアプリをDLしていて、どんな種類のアプリを必要/不要と思っているのかは、多くのアプリ開発事業者、端末メーカーが知りたい情報だと思っています。そこで『App Ape』によって、いわば“リアルタイムに見れるモバイル白書”をWeb上で実現できればと考えました」(同社CEOの渋谷修太氏)

上記したような事業者にとって、通信キャリアや利用機種ごとのアプリ利用傾向を、調べたいタイミングで把握できるようになれば、スマートフォン分野におけるマーケティングは新たな段階に到達することになる。

しかし、『App Ape』のようにユーザーのアプリ利用状況を分析するサービスは、ニーズが見込めるからといって安易な方法でビジネス展開すると痛い目にあう。個人情報保護の観点から、データ取得のプロセスに問題があると批判を受け、事業停止に追い込まれた企業も過去にはあった。

こうしたリスクを未然に防ぐべく、FULLERは『App Ape』のサービス開始に合わせ、情報取得時の利用規約に「おそらく業界初」(渋谷氏)のユニークな施策を取り入れた。

「情報取得に関する許諾の取る際の利用規約画面って、文字だらけで内容が理解できないことが多いじゃないですか。そこで、弊社アプリの起動後に表示する利用規約画面にインフォグラフィックの要素を取り入れました」(渋谷氏)

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FULLERが新たに作成した利用規約の一部

取得するデータの種類や用途を明確に示し、最大限分かりやすい形でユーザーに伝えることで、匿名の統計情報として外部提供することへの理解と許諾を得るための工夫だ。

『App Ape』のデザイナーを務めた櫻井裕基氏の言葉を借りれば、「利用規約をデザインの力で“再発明”した」ことになる。

「一般に、アプリの利用規約は契約書のような文章がひたすら続くので、大部分のユーザーが読み飛ばしているのではないでしょうか。それではユーザーの理解を得ることはできませんし、そもそも読まれないことが分かっていながら放置するのも問題です。ですから『App Ape』 では、利用規約についてもユーザーが受け入れやすく、優しいビジュアルアイデンティティを採用しました」(櫻井氏)

今回の利用規約を作る際、開発チームは経産省と総務省に何度も足を運び、その内容と見せ方について「スマートフォン プライバシー イニシアティブ」担当者と議論している。結果的に完成した利用規約は、高い評価を得たという。

「取得するデータが変わったり機能をアップデートするたび、ユーザーの皆さんに利用規約への承認をお願いするため、途中離脱するユーザーが増える可能性もあります。だとしても、情報を分かりやすく届けることの方が重要なので、ある程度は仕方のないことと割り切りました。こうした取り組みを通じて、弊社サービス全体の信頼を確立できればOKと考えています」(渋谷氏)

「高度な技術を親しみやすさで包み、情報に命を宿す」

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(写真左から)『App Ape』デザイナーの櫻井裕基氏、CEO渋谷修太氏、データアナリストの大野康明氏

BtoC向けアプリ分野で順調にユーザー数を増やし、昨年はEvernoteへの投資でも知られる英国VCのm8 capitalから約1億円の資金調達を実現するなど、国際的な評価も高まっているFULLER。今年1月には『ぼく、スマホ』の海外版『AppQuarium』をリリースするなど、視線の先には常に海外市場がある。

今回の『App Ape』の手応えも、今年2月にスペイン・バルセロナ開催されたMobile World Congress(以下、MWC)への参加でより強いものになったようだ。

「MWCでは、日本のスマホアプリ利用動向のデータをデモ動画にして披露(下の動画参照)してきたのですが、とても関心を持っていただきました。『App Ape』はBtoCアプリ開発者である僕ら自身が見ても興味深いと思えるデータが得られるので、外にもニーズがあるのは分かっていましたが、海外での反応を見てその思いはいっそう強くなりましたね」(渋谷氏)

MWCでの経験は、新たなビジネスの勝機を感じさせるとと同時に、自分たちの強みを再確認する良い機会でもあったという。

「今回のサービスを準備している間に何度もチーム内で議論を重ね、FULLERが得意とするのは『技術的に高度な取り組みや有益なデータを分かりやすく、親しみやすく伝えられること』という結論に至ったんですね。つまり、情報に命を宿すことができるのが僕らの強み。『App Ape』は表向きはBtoBサービスですが、実際にサービスを利用してくださるのは担当者個人じゃないですか。そういう意味で、BtoCアプリ開発で培ったノウハウを十分活かせると感じました」(渋谷氏)

『App Ape』最大の肝となるデータ解析の仕組みを開発した大野康明氏も、渋谷氏と同意見だ。

「僕は大学でデータ解析を専攻していたのですが、学術的に学んだ知識を親しみやすい形で伝えるのがFULLERらしさだと自負しています。ですからデータアナリストも、ユーザーの皆さんが興味を惹くようなデータの切り出し方をしなければなりません。ここが、大学の研究室で行う解析とは大きく違う部分です」(大野氏)

世の中のあらゆるデータは「ヒト」を知るためにある

当然UI・UXを含めたコミュニケーションデザインにもかなり注力しており、ティザーサイトのTOPに記してある「スマホとアプリの、レポートでござーる」というキャッチコピーにも、この考えが反映されている。

「最初に付けたコピーは『データを制する者はスマホを制す』だったんです。でも、これだと僕ららしくないよな、と(笑)。分析ツールの類はユーザーに『使わねばならない』という印象を押しつけてしまいがちなので、それを解消すべくあえてキャッチもフランクさにこだわろうと話し合いました」(櫻井氏)

『App Ape』のシンボルにApe=類人猿(記事TOPの画像の中心にあるロゴ参照)を据えたのも、情報に命を宿してヒトに近づけるというミッションから、「ヒトに最も近い類人猿を起用して親しみやすさと優れた能力を併せ持つサービスだということを暗に示したかった」(櫻井氏)からだ。

「世の中にあるあらゆるデータって、『ヒト』のことを知るためにあるものだと思うんですね。だから、無機質にデータを取得するツールではなく、ワクワクしながらデータ分析ができるサービスを作ろうって皆で話していました。今回、『App Ape』でその第一歩が示せたんじゃないかと思っています」(渋谷氏)

茨城県守谷市を拠点に、技術を愛する若者が数多く集うFULLER。情報に命を宿したいという彼らの思いは、マーケットにインパクトを残せるか。『App Ape』で、その真価が試される。

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取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/竹井俊晴