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SNSのノウハウを業務系に活用。現場目線で導入数を増やす日報共有サービス『gamba!』【連載:NEOジェネ!】

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世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回紹介するのは、企業向け日報共有サービス『gamba!』を開発する株式会社gamba。2012年12月のサービス開始から、わずか9カ月で、サービス導入企業は1100社を突破。現在も順調に導入企業数を増やしている背景とは?
(左)チーフエンジニア 水谷裕生氏
(中央)代表取締役社長 森田昌宏氏
(右)エンジニア 川崎 修氏

企業向け日報共有サービス『gamba!』は、その日の業務をフォームに入力するだけで、簡単に日報の作成・グループ内での共有ができるサービスだ。

直感的に操作できるUIや、SNSのように社員同士で気軽にコミュニケーションできる機能、GoogleカレンダーやPivotal Trackerなど外部サービスとの連携など、日報を書くモチベーションを高め定期的に共有し合うための充実したサービス設計が特徴である。

2012年12月のサービス開始から9カ月で、サービス導入企業は1100社を突破。現在も順調に導入企業数を増やしている、注目の業務系Webサービスだ。

アイデアの出発点:楽天で知った「日報」の重要性と、現状への不満

「楽天がフットワーク軽く事業を拡大し続けているのは、現場の動きをキャッチできる、日報のおかげでした」(森田氏)

そう語るのは『gamba!』を立ち上げた森田昌宏氏。元・楽天トラベル社員の森田氏は、社長室に勤務していた当時、部署から集まる日報を社長・三木谷浩史氏のもとへ届けることが日課だった。

「三木谷社長は、関連会社すべての膨大な量の日報に目を通し、気になるところがあればすぐに社員を呼び出していました。変化の早い現代の経営において、現場の進捗や問題を常に把握し、素早く対応していくことは、企業の成長を支える重要なポイントなのだと知ったのです」(森田氏)

「楽天の成長を支えていたのは、日報による仕事の進ちょく共有でした」(森田氏)

一方で、日報を作成する側として、現状の日報作成フローに対する不満もあった。

「日報の企業経営における重要性を理解したかたわら、しっかりとした日報を作成することの大変さも身に染みて経験することができました。何より日報を作るのはモチベーションが上がらない(笑)。楽天で見てきた業務効率改善のシステムを、もっと手軽に導入できるサービスとして、中小企業に提供できないかと思ったんです」(森田氏)

楽天へ入社する前は、モバイルゲームなどを開発するKLabで、新規サービスの立ち上げに携わっていた森田氏。過去にはエンジニアとして7年間、暗号技術の研究開発も経験してきた。

技術職から事業開発職を経て「よりユーザー目線でのサービスを開発したい」と興味が高まっていたころ、上記の楽天での経験を通し、『gamba!』の開発を思い立った。

開発のポイント:技術を知るトップがアジャイル開発をスムーズに

起業して最初に公開されたベータ版は、森田氏が1人で開発したものだった。

2012年12月に100社限定でベータ版のサービス提供を開始したところ、予想を上回る150社以上の導入希望が殺到。さらに2013年2月、導入社数が300社を突破したことを受け、サービス強化のために2名のエンジニアを迎い入れてクオリティアップを重ねる。

同年4月には、ベータ版からデザイン・機能を大幅にリニューアルした本サービスを公開。短期間でサービスの完成度を高めた結果、その2カ月後の6月には、導入社数を700社まで伸ばした。

わずか2カ月間で行われたフルリニューアル。なぜそれだけのスピード開発が可能だったのか、バックエンド担当の水谷裕生氏に聞いた。

「短期でのサービス開発を実現可能にしたのは、ユーザーの声に素早く応えられる、アジャイル開発でした。アジャイル開発は、検証と開発のスパンが短いため、エンジニア同士の連携が難しいと言われています。しかし『gamba!』の場合は、トップである森田がRuby on Railsを理解している上、元となるベータ版の作者でもあった。そのためコミュニケーションが非常にうまく進んだのです」(水谷氏)

「コミュニケーションが上手くいったことが、短期でのサービス開発につながりました」(水谷氏)

森田氏がエンジニアと同じ目線で開発に取り組んでいたため、無茶なオーダーもなく、最速でのサービス開発が実現したという水谷氏。また、フロントエンド担当の川崎修氏は、アジャイル開発を可能にした体制についてこう話す。

「インフラはAWS、フレームワークはRuby on Rails、フロントはHTML5やjQuery、twitter bootstrap。開発環境はシンプルな技術の組み合わせで構成しています。3人が知見を持ち合わせている技術なので、助け合いながら開発を進められました」(川崎氏)

さらに水谷氏は、開発における進行管理もスピードを重視していると言う。

「『gamba!』では、Privotal Trackerという欧米のアジャイル開発現場で注目を集めているツールを導入しています。ガントチャートのようにスタートからゴールが決まっているのではなく、複数のストーリーを立てながらプロジェクトを進められるので、ユーザーから急な要望をもらっても、計画が崩れる心配をせずに、素早く対応できるようになっています」(水谷氏)

『gamba!』のスピード開発は、元・エンジニアでもある森田氏を中心にしたスムーズなコミュニケーションと、アジャイル開発の先進を行く欧米に習ったストーリーベースの進行管理に秘密があった。

業務系Webサービスとしては異例、日報作成者目線の機能拡充

一般的に、企業向けサービスは、企業の情報システム部が導入を検討するケースが多い。しかし『gamba!』は、それとは反対に「現場社員のコミュニケーション活性化を主軸に機能開発をしている」(森田氏)という。

いかにしてこのような「逆転の発想」に至ったのか?

「企業が日報共有サービスに期待しているのは、いかに効率よく現場の声を集められるか。声を集め続けるためには、日報を書き続けるモチベーションを維持させる工夫が必要です。『gamba!』はSNS的な機能を実装することで、これまでの日報になかった社員間でのコミュニケーションを生み出し、現場社員が自発的に日報を書き続けるモチベーションへとつなげています」(森田氏)

gamba!』の画面イメージ。社員の写真アイコンや「いいね!」ボタンなどSNSのようなUI設計が特徴だ

森田氏が言うSNS的な機能とは、気軽にほかのメンバーの日報を評価できる「いいね!」ボタンや、ほかの社員の日報提出をお知らせして競争意識をかき立てるリマインド機能、日報の既読表示のこと。

従来の日報は、たとえ作成者が心血注いで日報を作ったとしても、それに対してフィードバックがあることはあまりなく、あったとしてもそれは「ここが分からない」、「ここがおかしいのではないか」といったネガティブなフィードバックだった。

『gamba!』の場合、上記のような機能を実装したことで、作成者にポジティブなフィードバックがなされるように環境を整備。結果、日報を三日坊主で終わらせなくさせているのだ。

「日報共有サービスを提供する企業は、ほかにもあります。でも、われわれのようにSNS的なコミュニケーション機能を取り入れ、ボトムアップを狙ったサービス開発をしている競合はいません。『gamba!』は現場を管理しやすくするツールではなく、企業とそこで働く人たちの仕事を応援するツールなんです」(森田氏)

日報情報のオープン化で、狙うはさらなるモチベーションの向上

2013年7月にはGoogleカレンダーとの連携、同年9月にはiPhoneアプリのリリースなど、個人の生活に密着したサービスとして、機能強化を続ける『gamba!』。今後さらなるサービス拡大に向けてどのような開発を展開するのか。

開発の方針について、水谷氏に聞いてみた。

「社外にもオープンな日報共有サービスとして、既存のSNSとの連携を深めたいです。例えば、これまで社外に出せなかった仕事の評価や報告をキャラクターなどのイメージに置き換えて、Facebookで気軽に日報を共有できるようにするなど……。日常生活の中で、日報を続けるモチベーションが生まれるような、好循環を生み出したいですね」(水谷氏)

社外を巻き込んだ日報の新しい習慣を作ることで、ボトムアップの強化を狙う。一方、森田氏は、経営ビジョンについてこう語る。

コンシューマー向けサービスの利点をB2Bに応用するのは、今、最も旬な事業展開といえる

「『gamba!』の数値目標は、1600社の契約と経営の黒字化です。今後サービスを拡大して、日報による業務効率改善を、あらゆる企業に浸透させていきたいです。また一方で、現場社員のための定量的な数値データを記録できるサービスも作りたいと考えています。『gamba!』で培ったボトムアップの知見を活かせば、これまでにないコミュニケーション重視の定量記録サービスを提供できるはずです」(森田氏)

業務系サービスの場合、大規模なシステムが一般的のため、参入のハードルが高く、Web系スタートアップがなかなか割って入りづらかった。そこを既存のサービスが見落としがちだった「現場側」に目を向け、SNS機能の充実によってボトムアップからの導入事例を増やしている『gamba!』。

コンシューマー向けサービスで培われたノウハウを、エンタープライズ向けに活用することで、新たな価値を生み出すこの発想は、今後のB2B 向けWebサービスに一石を投じるかもしれない。

取材・文/白方はるか 編集/桜井祐(ともに東京ピストル) 撮影/竹井俊晴

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