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ミクシィ、tab、日本交通、garbs、ビズリーチの開発責任者が語る「理想のチーム論」【Geek Shift:CTO座談会】

公開

 

1月18日に弊誌が開催したトークイベント『Geek Shift』。

第1部の「ネットが『みんなのもの』になって、開発はどう変わったのか会議」では、パネラーが異口同音に「開発者の守備範囲が広がっている」と話していた。当然、その影響は開発チームを束ねるCTO・開発部長たちの仕事にもおよぶ。

サービス企画から実装、運用、さらにはグロースハックまで、多岐にわたる方針を決め、実行することが求められるCTOたちは、今、どんな開発チームを作っていきたいと考えているのか。

Geek Shift第2部では、モデレーターにエンジニアのためのコラボサイト『codebreak;』を運営するビズリーチやタイムセールサイト『ルクサ』でCTOを務める竹内真氏を迎え、注目企業のCTOが求めるエンジニア像についてパネルディスカッションをしてもらった。

モデレーター

株式会社レイハウオリ 代表取締役 | 株式会社ビズリーチ・株式会社ルクサ CTO
竹内 真氏 (blog:singtacks) 

電気通信大学を卒業後、富士ソフトを経て、リクルートの共通化基盤やフレームワークの構築などを担当。並行してWeb開発会社レイハウオリを設立。その後、IT・Webスペシャリストのためのコラボサイト『codebreak;』などを運営するビズリーチ、国内最大級のタイムセールサイトを運営するルクサを創業、CTOに就任。The Seasar Foundationコミッターを務めるなどOSS活動も

登壇してくれたのは、エンジニアのためのポートフォリオサービス『Forkwell』や『Forkwell Jobs』を運営するgarbsの取締役おおかゆかさんと、位置情報ソーシャルサービス『おでかけスクラップ tab』を手掛けるtab(旧・頓智ドット)の開発部長・内原章氏、『全国タクシー配車』で知られる日交データサービスCTOの亀井松太郎氏、そして『mixi』、『モンスターストライク』ほか幅広いサービスを運営するミクシィCTOの松岡剛志氏。

組織の大小、ジャンルもさまざまな企業の開発トップが繰り広げたトークを、ダイジェストで紹介しよう。

最初はみんな、「CTOになる」なんて思っていなかった

(写真左から)garbsおおかゆかさん、tab内原章氏、日交データサービス亀井松太郎氏、ミクシィ松岡剛志氏

【トークテーマ1】
どういうキャリアの変遷で、CTOの仕事をやることになった?

竹内 まずは、皆さんがどのような経緯で今のお立場になったか教えていただけますか

松岡 わたしは新卒でヤフーに入り、6~7年いろいろなサービスを開発した後、ミクシィに転職して『mixiミュージック』のようなサービスを作ったり、セキュリティ基盤づくりに打ち込んでいました。そうしたら、いつの間にかCTOになっていたっていうのがおおざっぱな流れです。

竹内 「いつの間にか」とおっしゃいましたが、なぜマネジメント側へ?

松岡 一言で言えば、わたしより優秀な開発メンバーがいたからです。ミクシィに入って1~2年ぐらい経ったころでした。

竹内 ほかの皆さんはいかがですか?

4人がCTOになったきっかけを聞く竹内氏。その回答は…!?

おおか わたしは楽天を辞めた後、フリーランスになってソーシャルゲーム開発の仕事などをしていたんですが、開発から保守フェーズに入ったタイミングで、Asakusa.rb主宰で今はRuby・Railsのコミッターでもある松田明さんから、「こんな会社があるんだけど」って誘われたのがgarbsでした。

竹内 garbsさんには現場のエンジニアとして入られたんですね。

おおか はい、業務委託として。当時は『Social Job Posting』という、Facebookページに求人票が出せるアプリを作っていました。で、次のサービスを作ることになった時、社長から「エンジニア主体で新しいものを作ってほしい」と言われ、提案したのが今の『Forkwell』や『Forkwell Jobs』の原型になる企画でした。そうしたら、その3カ月後には役員兼プロダクトマネジャーをやることに。

竹内 巻き込まれながら、今のお立場になられたんですね。内原さんはどのような流れで開発部長に?

内原 わたしは前職がヤフーでして、頓智ドットに転職した2010年初めのころは、『セカイカメラ』のサーバサイドエンジニアをやっていました。その後CEOが谷口(昌仁氏)に変わり、彼が「(経験を積むという意味で)開発部長も月替わりでいいんじゃない?」と言い出したのがきっかけでした。

竹内 月替わりですか!

内原 ええ。それで僕が3代目の開発部長になりました。現実問題、1カ月で開発部長が交代するのは無理があったので(笑)、3カ月、半年と続けています。谷口からは「あと半年はやってね」と言われているので、その時期になったら次の人に交代するかもしれません。

竹内 面白いやり方ですね。ちなみに内原さんは、先日の『セカイカメラ』サービス終了にも立ち会われていますよね。当時の会社の雰囲気って……?

内原 セカイカメラは知名度のあるサービスでしたし、それとは別のサービスを新たに開発しなければならないということになった時は、果たしてうまくいくのか、それどころか何をやればいいのかすら分からず、正直、雰囲気はよくはなかったですよ。でも、どうにか『tab』というものが見えてきて、「これから『tab』で成功しない限り後がない」という話になって。今は「やれる限りやろう」という感じにまとまっています。

竹内 個人的な興味で質問してしまいましたが、ご回答ありがとうございます。亀井さんはいかがですか?

亀井 実は弊社に入る前、小さなソフトハウスを辞めて半年間ニートに近い状態でして。

竹内 何かやってみたいことが?

亀井 いえ特に(笑)。だだ、ちょっと疲れたなと。

日交データサービスに入社する前は、「ニートに近い状態」も経験していたという変わった経歴の亀井氏

竹内 笑

亀井 しかも、ちょうどその期間に結婚もしまして……。

会場 笑

亀井 さすがに「働かないとマズいぞ」ってことで、今の会社に入ったんです。

竹内 人に歴史ありですね。そこからCTOになるまで、どんな道のりだったのでしょう?

亀井 当時の日交データサービスは日本交通グループのシステム基盤づくりが本業で、入社して最初にアサインされたのは、お付き合いのある旅行会社の基幹システム開発でした。当時、技術的に優れた上司がおりまして、その人についていけばプロジェクトがちゃんと回るような状況だったんですね。わたしが現在の役割を担う上で転機になったのは、その上司がお辞めになった後でした。

もとはアプリケーションエンジニアだったので、インフラやネットワークの知識はほとんどなくてですね。折悪くデータセンター移転の話まで持ち上がってしまって、急いでサーバやストレージ、VPN、負荷分散など、関連するあらゆる技術を勉強して、何とか形にしました。

竹内 とはいえ、それは業務システムにかかわる開発と運用の話ですよね。日交さんが興味深いのは、日本交通グループの情報システム部門だったチームが、なぜ『全国タクシー配車』のようなスマホアプリの開発をされたのか?です。

亀井 代表の川鍋(一朗氏)が「アプリで何かやろう」と言い始めたのがすべてでした。最初は深く考えていなくて、当時日本交通のホームページで一番PVを稼いでいた「タクシーの料金検索」をアプリで出せばいいだろうと思っていたんです。

でも、川鍋から「やるなら売上につながるアプリを」というオーダーがあって、試行錯誤の末、配車が一番だろうと。最初は日本交通だけが呼べる『日本交通タクシー配車』。新規事業だったので、開発はスピード重視の内製に決めたんです。

サービス開発が技術と情熱だけでは難しい理由

各社の「開発体制」について質問する竹内氏

【トークテーマ2】   
手掛けるサービスの規模やフェーズで「欲しい人」は変わりますか?

竹内 内原さんや亀井さんのお話にもあったように、サービスづくりや開発体制は、経営判断や世の中のトレンドによって変わっていきますよね。皆さんの会社では、現在はどんな体制で開発されているんですか?

亀井 日交データサービスは今は15名体制で、エンジニアはそのうち10人です。

竹内 想像していたよりも少ないので驚きました。

亀井 その後1年を待たずに『全国タクシー配車』アプリをローンチした時は、営業を含め6名程で回していたんですよ。とはいえ、今も小さい組織には変わりありませんから、全員が企画者であり、設計者であり、開発者であり、運用担当者であり、広報担当という形で仕事を進めています。エンジニアごとに主担当となる業務の重み付けを変えながら回している感じです。

竹内 亀井さんが今のお立場になってみて、「こういうスキルがある人がいたらな」と思えるエンジニアってどんな方ですか?

亀井 もちろん、技術的に何か秀でたものを持っていてほしいというのはあります。でも、「俺は技術者だから開発以外のことはやらない」という方より、社内調整だったり(配車アプリがAzureの利用で協業している)マイクロソフトさんとの窓口だったり、「開発以外のこともやります」っていうスタンスの人の方がありがたいですよね。

竹内 何か一つの強みを持った上で、事業なりサービスなりに理解して積極的に動いてくれるエンジニアは貴重ですよね。garbsさんはいかがですか?

おおか 『Forkwell』も『Forkwell Jobs』も、技術的な部分で困っていることは特にありませんね。garbsのエンジニアリングチームは、松田をはじめ、わたしよりも技量が断然上な人が多いので。ただ、その分個性も強い人たちなので、チームとして一つのモノを作り上げるのはけっこう大変です。

竹内 具体的にはどのあたりが大変でしたか?